第5話 太陽のように輝き、月のように美しく、軍勢のように恐ろしい者、それは誰か。
私の名前は
この国の政教分離以降、神官という役職は廃止されているが、我々の組織では未だに神官と呼んでいる。
私が仕える橘派陰陽古神道は中心の立場である
総宮の一族は皆、戸籍がない。戸籍を排してまでも世間との関わりを排し、この国が存在する最初からこの国を守り、この国から世界を見据え、この国から世界を動かしている。
人知れず存在する我々橘派陰陽古神道では、千年に一度の大きな出来事を今か今かと待ちわびているところだ。
キリスト教の雅歌に「太陽のように輝き、月のように美しく、軍勢のように恐ろしい者、それは誰か。」という一節ある。それを聖母マリアと結びつける者は多い。
私の主は、あのお方を「太陽のように輝き、月のように美しく、軍勢のように恐ろしい人」と呼ぶ。
私の主は、もう三千年も前から、あのお方の訪れを待ちわびている。あのお方は、しっかりとした印をもって今のこの時代に生れて来ているはずなのだ。
千年前はそのお方は男性として生れて来られた。
そのもう千年前も男性だった。
そしてそのまた千年前は女性だったのである。
私の主はこう言う。「再びあのお方に会える時が近づいている。私は今度こそ、あのお方を守り通して見せる。」
しかし主よ。あのお方がもしまた男性でこの世に生まれていたならば、どうなさるおつもりか。私はその期待が大きいことがよくわかっているので心配で仕方がない。
しかし、主は言う。「女性だ。世界中の候補の中に、今回は男性がいない。」無表情で話されるが、その表情の中に嬉しさが少しにじみ出ている気がする。感情を表に出せない立場ゆえに、この主のために、何かして差し上げたい気持ちになるものだ。
この世界はそう遠くない未来に、再びとてつもなく大きな試練を迎えようとしている。世界を救うあのお方は今どこにいるのか。私も早く、主が待つその人に会ってみたいものだ。最大限の準備をし、その時を待とうと思う。
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