第4話 小さなUFO

 私の家は田舎の高台にあった。坂を上がると、もう一段上に住宅街があり、大きな公園があった。


 私が小学校二年生になってすぐの、沈丁花の花が沢山咲いたある晴れた日に、私はその大きな公園に遊びに行った。軽い風が吹くたびに、とてもいい香りがしたことは今でも覚えている。


 公園では時々学校で会う同級生が4人いた。とても楽しそうにかごめかごめをして遊んでいたので、「私もいーれーてー。」と言うと、「いーいーよー。」という言葉が返され、皆と一緒にかごめかごめをして遊んだ。


 みんな楽しくて楽しくて、かごめかごめの後は、公園の椅子の周りに座り込んで、皆でたわいもない話をしていた。


 気が付くとあたりは暗くなっていて、


「あ!もう帰らないと!」と誰かが言うと、


「また遊ぼうね!」「ばいばーーい!」と声を掛け合ってみんな別々に帰っていった。


 私も坂に向かい歩いて行った。私と同じ方向に帰る子はいなかった。


 夜空に光っている星が奇麗で、暗くなった空の地平線にオレンジの夕焼け色が広がっている景色が奇麗で、空を見ながらゆっくりと帰っていた。


 その空の景色の中に、底のかなり深い灰皿のような物が浮かんでいるように見えた。私は特に怖さは感じなかったと覚えている。でも、静かに浮かんでいたが、それは確かに見えていた。


 私は「変わった灰皿だな。でもなぜ浮かんでいるんだろう。」と思ったけれど、夕焼けと夜空と星のきれいな景色の方に気を取られていて、気が付いたらその灰皿は見えなくなっていた。


 その頃の私には、UFOに対する知識も認識もあまり無かったように思う。


 これから数年後、雑誌のようなものに、二人の男の子がUFOに遭遇したという記事が載っていたのを見た。そのUFOは私が小さな時に見た、空に浮かぶ灰皿と見た目が同じものだった。


「ああ、私はUFOを見たのかもしれない。」と思ったが、証明するものは何も無い。私の記憶だけだ。


 もう何年も忘れていたことだったが、それが後々、信じられないような出来事の発端だったと思わされることになる。

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