第3話 叔父さんの死を予想して母に叱られる

 私が小学校1年生の時のある夜、母の兄にあたる叔父が倒れたと電話があった。


 母は叔父とは仲が良かったみたいなので、電話で第一報を聞いた時にとても動揺していて、とてもオロオロとしていた。


 たまたま目が合った私に「りっちゃん、おじちゃん大丈夫かしらね。」と母が言った瞬間、私は特に何か考える時間をとるわけでもなく、何故か「おじちゃん、もうすぐ死んじゃうよ。」と答えた。


 そう答えると、母は大きく目を見開いて驚いた表情になり、「そんなこと、言うもんじゃありません!」と私を叱った。その時の事はよく覚えているが、何故それを言ったのか、理由は覚えていない。


 私たちは急いで病院に向った。


 救急外来の前に着いた時に、救急外来のドアが開いて、いつも優しくしてくれる叔父さんの息子のお兄ちゃんが涙を流しながら出てきた。


「ダメだった・・。」そう言ってその場に座り込んだお兄ちゃんを見て、言ったとおりになったことに私はとても驚いていた。私と手を繋いでいた母は私の顔を見るなり私の頬を叩いた。母は私に、「いい?あんなことを絶対に他の人に言ってはダメよ。分かった?」いきなり叩かれて、私は下を向いて泣くしかなかった。


 このような事はこの後の人生の中でも何度かあった。


 でも、私が心から「命に関わる事を口に出してはいけない。」と意識するようになるまでには時間がかかった。幼い頃は、何も考える間も無く言葉に出る時が多かったからだ。

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