第5話
「おい!車で逃げたぞ!追え追え!」
ロッシーニの部下達も車に乗り込み追いかけてきた
「フミト!どうするの?!教会に行く?!」
弟村はミラーを見ながら後ろを確認して答えた
「今教会に行くと奴らをそのまま連れて行ってしまう、だからある程度撒かないと意味がない!」
ギュルルルルルル
ギャギャギャギャギャ
車のスチール音が響いた
「フミトすごい!車ってこんな動きするんだね!」
「ケイト!喋ると舌を噛むぞ!」
後ろからロッシーニの部下達が追いかけてきた
パァン!パァン!
「正気か?!夜とは言え公道だぞ?!」
車が交差点にさしかかり進行方向が赤に変わっても弟村はアクセルを緩めなかった
「フミト!ぶつかる!」
「大丈夫!任せろ!」
左右の車列を縫うように交差点を抜けルームミラーを確認すると追ってきた部下達が事故を起こしていた
これで少し時間を稼げる
「一旦ハイウェイに上がって遠回りしよう、ハイウェイなら飛ばせる」
「あんまりスピード出すと警察に捕まらない?」
ケイトは恐る恐る尋ねた
「ケイト、俺は警察時代、SWATに入隊前は警ら、パトカーで犯人を追っかけてたんだ、その時逃がした車は1台もない、それに署員たちのおふざけでレースをした時も誰も俺の車を追い抜けなかったんだよ」
「え?ていう事は…」
「少なくとも警察の車で俺は捕まえられないって事だ」
そういい急ハンドルを切ってハイウェイに車を進めた
空港に通じるハイウェイ
この時間でもそこそこ交通量は多い
止まれないが少し気が抜ける
「フミト、さっきは…」
ケイトが口を開いた
「もういい、気にしてない、俺の方こそ悪かったよ、怒鳴ったりして本当にすまない」
「ううん…私こそ何も知らないで…そう言えばフミトと初めて会った時に追手はフミトの事を知ってた感じだったよね?」
「…あぁ…ロッシーニの連中はだいたい俺を知ってるよ、ケイト、タバコいいかい?」
「えぇ、吸って落ち着けるなら」
ケイトが応えるとポケットからタバコを取り出し1本咥えたが火がなかった、そんな時
「どうぞ、はい」
ケイトがライターで火をつけてくれた
「ありがとう」
「で…なんで知られてたの?あ!もし言いたくなかっ…」
「構わないよ、俺は一時期ロッシーニを追っかけてた、SWAT時代銀行強盗が多くてな、未遂も多かったがその襲われた銀行がロッシーニと敵対してるマフィアのマネーロンダリングに使われていた銀行だったんだ、だから俺は怪しいと睨み相棒達と探ってはいたんだよ」
「2人だけで?」
「いや、係は違うが同期の連中4人で独自で捜査していたんだ、散々脅されたりしたし賄賂を受け取らせようと凄かった…ん?」
運転席からミラーを除くと一機のヘリが飛んでいて一定距離を保っていて
「クソ!汚職警官どもめ!ケイト見えるか?あのヘリが?」
ケイトはサイドミラーを凝視した
「あのヘリコプターがどうしたの?!」
「アレは警察のヘリだ!この時間マスコミがヘリを飛ばすような事件は起きてない!それに一定距離を保ってる間違いない!」
アクセルを強く踏み込むと何台かが追いかけてきた
「警察がロッシーニ達に情報を?!」
「ケイトの居場所も警察の誰かがリークしたんだ!、踏ん張ってろ!」
弟村は車線を変えながら車と車の間を縫うように追い抜いていった
パァン!パァン!
「マヌケが!この距離で当たるかよ!ド素人どもめ」
分岐点にさしかかり直進すると見せかけたが急ハンドルを切ってハイウェイ出口に向かい追手の車は急な転換に追いつけず2台が横転していた
「フミトは車の運転上手なのね!」
「乗り物は好きだったんだ、バイクにジェットスキー、スノーモービルなんかも運転できるさ」
「凄いね!いつかフミトのバイクの後ろに乗りたいな!」
「ケイトはバイクが好きかい?」
「私は小さい頃から乗り物好きなの!遠くに行ける魔法の絨毯みたいで」
「俺はヘリコプターも操縦できる、機会が合ったら乗るかい?」
「うん!」
「じゃあまずはデータを渡して証言してロッシーニの野郎をぶち込まないとな!」
ハイウェイを降りて来た道を戻りたかったのだがハイウェイはまたヘリに見つかる、それに車も被弾して目立つので下道の裏通りを使って戻る事を決めた
「ケイト、もうすぐ今日が終わるあとた8時間だ!絶対にお前を無事に連邦裁判所に届ける」
「フミトかいるから大丈夫!何も心配してないよ!」
「いい返事だ!ありがとう!」
この会話をした後しばらくお互い口を開かなかった
ケイトはいきなりの事で混乱していたのだろう
しばらく車を走らせていると縄張り違いも関係しているのか幸い追手も手薄になりあれから追っ手の手が止んでいた
車内の沈黙を破ったのは弟村だった
「しかし…どうして俺の家がバレたんだ?」
「考えたくはないけどマスターさんしかフミトの家を知らなかったんでしょ?」
ケイトは下を向きながらため息混じりに応えた
「いや、あのマスターが俺の居場所を売るとは考えられない」
「何故?」
「あの人はそういう人じゃない、そもそもケイトを守れと言ったのはあの人だ」
「フミトはマスターを信じてたんだね」
「…かもな…今となってはそうだったんだ、となると、バードからの電話を探知されたか…」
「バード?」
「あぁ…仕事敵というか知り合いと言うか…朝買い物をした時電話があったし後屋上でタバコを吸った後にバードから電話がかかってきたんだ、その後のあの電話がなきゃどうなっていたか…恐らくバードからの電話を探知されたんだろう…迂闊だった…俺の判断ミスで申し訳ない」
ケイトは少し笑顔で
「気にしてないよ!フミトがこの車に連れてきてくれたから私は助かったの」
「この車も謎の男からの電話で分かったんだ」
「本当に誰なんだろうね…」
「電話口の男は日本語だった、俺が日本人って事を知ってた人間だ、…こうも言ってたな「お前は死んでも構いやしねぇがお嬢さんだけは無傷で教会に連れてこい」って、という事はロッシーニ以外にもケイトを守ろうとしてる連中がいるってこったな」
「?その人が敵じゃないってどうして思うの?」
ケイトは腑に落ちないといった様子だ
「いいかい?ケイト?電話の男は俺の家の下に車がある事を教えたんだそれも的確に、キー付きの車を、という事はその気になったら俺の家に侵入して俺たちを殺す事だってできたはず…それに生きてたら会おうとも言ってた」
「答えは教会に行けばわかるね」
「そうだな…大丈夫、オレが絶対ケイトを守るよ、俺は依頼された仕事をポシャった事は1度ないのが自慢だ」
「フミト、ありがとう…」
「疲れたろう…教会まで少しある、少し休め、ケイト」
「うん…」
そういいケイトは目を瞑った
しばらく追手もなく時間はかかったが思いのほか簡単に教会まで来られた
弟村が裏道や抜け道を使って目立たないようにした事も功を奏したのだろう
「ケイト、ケイト?着いたぞ」
「…私寝てた…?ごめん、運転してもらってるのに…」
「いいんだ、ずっと怯えてたんだ、気が緩んだって仕方ない、しかし…古い教会だな…こんな所に何があるんだ?」
「とりあえず入ってみようよ」
弟村は教会入口に車を停めた
「オレが先に行く、車を降りたら離れるなよ」
2人は同時に車を降りて教会の扉を弟村がノックしたが返事はなかった
ドアを押してみると開いたので先に弟村がG17ライトを着け構えながら入り後からケイトがリボルバーの拳銃をかまえながら続いた
「いやに静かで少し不気味だ…絶対離れるなよ」
ケイトは怖いのだろう両手で構えていた拳銃を片手で構え左手は弟村の服の裾を掴んでいた
そんな時
「誰だ、こんな時間に」
声がした方に弟村は銃を構えウェポンライト着きなので照らした相手を鮮明にした
「やめてくれ、眩しすぎる、とりあえず銃を降ろしてくれ」
弟村を一瞬見たのか相手は英語から日本語に変えた
「あんたここの牧師か?!」
「オレが牧師に見えるか?弟村 史、ケイト・ロバーツ」
「どうして私達を…?」
弟村はグロックを構えながら質問をした
「何故俺たちの名前を知ってる!まさか!」
「馬鹿なマネはするな、オレがお前らの敵ならお前達はもう2回死んでる、1回目は扉をノックした時、2回目は俺が声を掛けた時だ。2回とも警告無しにお前を殺せる状態だった事を忘れるなよ、弟村 史?とにかくそれを降ろせ、話もできん」
片足を引きずりながら歩く長身で短髪の男はこんな暗闇でもサングラスをしていた、パッとしか見えなかったが顔左に大きな火傷のような痕もあった
弟村は銃をホルスターにしまい男に尋ねた
「あんたは牧師じゃなければ何もんだ?電話の男と関係あるのか?」
「俺やあいつの正体なんぞどうでもいいだろう?俺たちはとある人間にロッシーニを捕まえる手助けをして欲しいと頼まれてたんだ」
「とある人間?」
「まぁそいつの事は気にしないでいい、そんな時依頼主からお前がここへ来たら助けてやってくれって頼まれたんだ、Ms.ケイト、よくここまで頑張った、あとは何も心配しないでいい」
「どうして私の名前も?」
「さぁ?どうしてだろうな?俺の左目は視力が無い代わりに人の名前が分かるんだ、裁判所があくまであと5時間だ、オレが見張ってるからゆっくり休むといい」
「お前をオレが信用する道理はねぇぞ?」
「なら勝手しろ、ただし、ケイト・ロバーツはここに置いていけ、お前じゃ役不足だ」
「なんだとぉ!」
弟村が詰め寄り男の胸ぐらを掴むと顎に拳銃が突きつけられていた
「オレの足が悪いと見て素手で勝てるとでも思ったか?青二才が、これで今日お前が死んだのは3回目だ」
男の胸ぐらを離し距離を取った
「それでいい、相手の力量を推し量るのもプロの最低条件だ、まぁお前もゆっくり休め」
そういい足を引きずりながら教会のドアの鍵を閉めに行った
「フミト、とりあえず安全みたいだから座ろう?」
2人は長椅子に腰をかけた
「ねぇさっきの話の続きを聞いていい?」
「ロッシーニを追っかけたって話か?」
「うん」
「今回みたく内部リークがあったんだ、俺の情報屋がロッシーニファミリーの一員でな、全部喋るから保護してくれってさ」
弟村はタバコに火をつけながら話を続けた
その時
「お前いい度胸してんな、ここをどこだと思ってる?」
長身の男が注意してきた
「うるせぇ、タバコくらい吸わせろ」
「…特別だぞ…今日だけだ」
1口目をふかし
「署内のパトカーでそいつを保護して取調室に連れて行った、話を聞こうとした時上司に呼ばれたんだよ、「お前が押収物を盗んでる」ってな」
「え?どうして?」
「当時ロッシーニは街でとんでもない権力を持っていた、前にロッシーニに捕まえようとした法務大臣経験者の当時の知事をも失脚させ役人達に金をばら撒き買収もしていた、だから俺に難癖つけてSWAT左遷させたんだよ、配置換えされて俺は押収物保管係になったばかりだったから疑われたんだ」
「他の人や相棒さんは?」
「相棒はなぜかSWAT内での移動だった他の2人も少し降格しただけでな、その時気づくべきだったんだ…」
「え?まさか…」
「そう、そのまさかさ…相棒、同僚、上司みんな賄賂を貰ってた、同僚の1人は俺の恋人だったよ…俺の車からヤクが出てな誰も俺を信じてなかった…情報屋も全くのでたらめ…俺に無理やり連れてこられたと証言し当時の刑事部長が辞めるか豚箱に入るかって詰めてきてな、それで警察を辞めたんだ」
「だから誰も信じないようになったの?」
「俺はさ、別にヒーローになりたい訳じゃなかった、ただ正しい事して手順をキチンとすれば逮捕できると信じてた…あれ以来俺は死んでたんだ」
「死んでたなんて…」
「もう、なにもかもが嫌になった…でも何故かロッシーニを諦めきれなくてな、この街残ったんだ、でも残って良かったと思ってる、まだ少ししかケイトを見てないけど君の生き方を間近で見てたら俺も人を信じようって思えた、ありがとう、ケイト」
「そんな、私は何もしてないよ、元々のフミトに戻っただけ、フミトは良い人だよ。初めて会った私を成り行きでも守ってくれたし、その気なれば私を突き出す事も逃げ出す事もできたんだから」
「そう言って…まぁいい少し休もう…」
2人は寄り添い目を瞑った
弟村が目を覚ました、少しだけでも眠れなたのか…夢現の時
バァン!パァン!
教会入口で大きい銃声がした
「フミト!やっと見つけたぞ!」
「スーツ代の弁償代をもらいにきたぞ!ゴルァ!」
「ケイト奥へ逃げろ!」
そういい拳銃を2人組に向けた
「場違いだ!さっさと失せろ!このマヌケ共!」
「うるせぇぞ!ロッシーニさんに逆らう蛆虫が!てめぇ今度こそ殺…」
バァンバァンバァン!
教会2階通路から長身の男がKSGを構えて無警告で2人を撃ち殺した
「こういうマヌケに警告なんていらない、お前はまだまだ甘いな」
「おい!こっちだ!人数よこせ!」
「おい弟村、まだまだ来るぞ、ちゃんとケイトを守れ!あと少しだ!少しだけ耐えろ!」
「このォ!ケイトに指一本触れさせねぇぞ!」
グロック17を乱射した、入口が狭くひとつしかないので迂闊に入って来れない
グロックのスライドがホールドオープンし長椅子に身を隠してマガジンを装填しているときに銃撃された
「相手は2人だ!殺せ殺せ!」
ロッシーニの部下達が教会内に入った瞬間2階から例の男がKSGを撃っていたがなかなか相手も怯まず人数差もあって徐々に追い詰められてきた
「今までバカにしていて虫のいい話だが今だけ信じる!俺はどうなってもいいからケイトだけ、ケイトだけは助けてくれよ!神様!頼むよ!あんたに頼るしかもうねぇんだ!俺は地獄にでもどこへでも行くからケイトだけは…」
その時
2階からから大きな声で長身の男が弟村に叫んだ
「弟村ぁ!ケイト!今すぐ頭下げて床に伏せろ!」
「ケイト!伏せろ!」
ガガガガガガガガガガガガガガ!
教会入口から銃弾の嵐だった
ロッシーニの部下達はほぼ全滅したようだ
入口から恰幅のいい男がRPKを腰だめで構えながら入ってきた
2階から
「遅ぇよ!どうせ女だろ!さっさと来い!」
「悪ぃ悪ぃ好みのコールガールいてよ、車で食ってたら遅くなったわ、おー!お前が弟村か!とりあえず俺に感謝するんだな」
「あんた電話の男か…?」
「そうだ、実を言うと俺と2階のアイツはケイト・ロバーツの内部告発前からとある奴に頼まれてやつをぶち込む証拠を調べてたんだ、ケイト・ロバーツが持っているのは金の流れ、俺たちが調べてたのは奴がばら蒔いた金の流れと薬の仕入れ先だ。最近やっと掴んでな、明日こっそり裁判所に持ってくつもりだったが…ケイト・ロバーツ!お前にこれをやるよ」
あれだけの轟音だ、少し耳が聞こえないのかケイトは大きな声で
「貰えません!こんな大切なもの!」
「お嬢さん、人の好意は受け取れ、それに俺達は公式ではアメリカに入国してない、よくよく考えたらそんな奴が裁判所なんていったら捕まっちまう。だからあんたに託すよ、なぁーー!いいだろう?」
「好きにしろーーー!」
「だそうだ、どうなるかわからんがこの教会の奥には裁判所入口マンホールに繋がる入口がある、そこを使うか…」
「私は堂々と正面から行きます!」
「いい心がけだ、おい、弟村!嬢ちゃんを抱き抱えてやれ!入口は死体だらけだ見るに堪えない」
弟村がケイトを抱き抱え
「目をつぶってくれ、あんなもん君が見る必要はない」
「分かったわ、お願い、フミト」
弟村はケイトを抱き抱えて入口の死体を避けながら歩き電話の男が乗ってきたであろう車までケイトを運んだ
「あんたが誰か知らないがありがとう、助かったよ…この礼は…」
「おいおい、なにドア閉めてんだ!俺達も裁判所まで行くぞ」
そういうと足を引きずりながら長身の男も入口から出てきた
「おせえょ!さっさとしろ、ノロマ!」
「うるせぇな、作りもんの足が合わねぇんだよ、弟村、お前も後ろに座れ、運転はこいつにやらせる」
そういい4人は車に乗った
裁判所前では大勢のマスコミが待ち構えていた
少し離れた所に車を停め
「ここからは2人で行け、弟村、お前は車に戻ってこい」
そういい恰幅のいい男はシルバーのZIPPOでタバコに火をつけた
「なんで?」
「いいから、つべこべ言うな」
弟村とケイトが車から降り
ケイトが弟村に抱きついた
「フミト、本当にありがとう」
ケイトは泣いていた
「なんで泣くんだ」
「嬉しいのと寂しいから…」
「寂しいって…」
「また会える?」
「わかんねぇよ…そんなの…でもみっともねぇ姿しか見せてねぇからな、次会う時はもっといい…」
言い終わる前にケイトが背伸びをして弟村の口を塞いだ
弟村はビックリしたがそのまましばらく口を塞いだまましてケイトを強く抱きしめた
ケイトが口を塞ぐのをやめて言った
「フミトは私のヒーローだよ!もっと、もっと私もいい女になるからそのときは…」
「俺ももっといい男になるからさ!ほら!みんな待ってるぞ!行ってこい!」
「うん!後ろの名無しさん達もありがとうございました!あ!フミト!」
「なんだ?」
「マスターさんにもお礼をお伝えしておいて!いつかまた紅茶とホットケーキ食べに行きますって!」
「あぁ!伝えておくよ!」
そう言いケイトは報道陣群がる連邦裁判所へむかって走って行った
弟村は車に戻り
「まだなんか用があんのか?」
長身の男が弟村に尋ねた
「お前、便利屋なんだってな?まだ続けるのか?ロッシーニの残党や汚職警官だらけの街で」
「わかんねぇよこれからの事なんか」
「これを見ろ」
男が1枚の名刺を渡した
「ん?ピースカンパニー?なんの会社だ?」
シルバーのZIPPOを持った男が会話に割って入った
「そこの会社が運転手兼護衛を探してるみたいで日本で面接してる、気が向いたら応募してみろ、社長が変な奴で有名だが、お前が欲しい「仲間」が見つかるかもしれんぞ?まぁ考えとけ、さっ俺たちゃ忙しいんだ、さっさと降りろ、ほらほら!」
そういい無理やり弟村を車から降ろされた
「じゃあなーーー!達者でな!」
そういい車は急発進した
ピースカンパニーか…どの道この街では窮屈だ、ダメで元々受けてみるか…久しぶりに日本にも行きたいしな
何やら吹っ切れた顔で弟村は歩きだした
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ジョン・F・ケネディ発 成原行き
256便搭乗を開始します、ご利用のお客様は道場口へ」
アナウンスの声が響いた
…さて久しぶりの日本だ、心残りはマスターに会えなかった事だな…バードやマルコさんは…別にいいか
ガネットには本当にマスターが家賃を払ってくれたみたいだ
ー滞納者が出ていってくれて嬉しいよー
お別れを言った最後の時まで金の話だっだが
ーあのテレビに出てる娘、あの時のだろ?アンタもやるじゃないか、見直したよー
と労ってくれた
弟村は読んでいた新聞をゴミ箱に捨て搭乗口に向かった
捨てた新聞の見出しには
「勇気ある女性ケイト・ロバーツ!グランツ・ロッシーニ逮捕に繋がる証言!」
紙面の1面に大きな写真が載りその写真には逞しく喋る女性が写し出されていてその女性の右手薬指には少しアンバランスな大きな指輪が目立っていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜日本のとある海の見える某寺〜
恰幅のいい男と片足の無い男は作務衣を、それと初老のスーツの白人男性がそれぞれ座禅を組んでいてその後ろで住職が3人を見張っていた
「喝!」
ビシっ!
「イテ!んだよ、動いてねぇじゃんか!」
まずは恰幅いい男から叩かれていた
「あんたは座禅にむかねぇよ、邪念だらけだからな」
「喝!」
「アダっ!」
続けて片足の男も叩かれていた
「お前もダメじゃねぇか」
「足と火傷が疼くんだよ」
「喝!」「喝!」
「痛い!」「イデ!」
「貴方達、こちらを見習いなさい、貴方達日本人より座禅を理解していますよ。それに貴方!大善寺の宗家の自覚を持ちなさい!」
「言われてやんの」
「喝!」「喝!」「喝!」
「3回もなんだよ!」
「貴方は分家の自覚もないし色々修行が足りませんよ!」
「あぁ!もう!やめだやめ!座禅がなきゃここは静かでいいんだけどなぁ」
「住職、この方と少し話をさせてください」
「分かりました…ごゆっくり…」
「貴方達にはなんとお礼を言ったら良いか」
スーツ姿の男性が言った
「いいっていいって、なぁ?元州知事、どうだい?憎きロッシーニをぶち込んだ感想は」
スーツ姿の白人は何やら浮かない顔だった
「気分は晴れると思ったのですが…なかなかどうも…」
「弟村にちゃんと別れを言えなかったけど良かったのか?」
「まぁ寂しいですが…またどこかで会えますよ、ロッシーニの件だけでなくフミトのことまで面倒みてもらい本当にお2人には感謝しきれないです」
「お気になさらず、貴方は元州知事だが法務省にも顔が効く、外交的に恩を売ったのは我々だ、そもそもこのような事案は貴方じゃなきゃ引き受けない」
初老の男性が立ち上がり
「さてそろそろ私もおいとましますよ、これはほんの手土産です、お口に合うかどうか…」
そういい男性は紅茶の茶葉と年代物のウィスキーを渡した
「おぉーこりゃーいい酒だ!今日早速…」
片足の男が義足で蹴った
「いてぇな!」
「あんたそろそろいい加減礼儀を弁えろ!失礼しました、日本に来られた際はまたいつでもここへいらして下さいね、今度は美味しい寿司でも食べましょう」
「いいですね、ではアメリカに来る事があったら狭い店でお恥ずかしいですがまたぜひウチの店で飲んで行ってください」
「あんたの所はいい酒だらけだ、また行くよ!じゃあな!」
「お元気で、また!」
白人男性は深々とお辞儀をして寺を去っていった
「なぁ、奴は面接受けたんかな?」
「さぁな、あとは知らねぇよ」
「さぁて次はどんな仕事かねぇ」
「アメリカと日本を行ったり来たりしたんだ、少しは休みてぇよ」
そういい2人は海をみながら茶を飲んだ
ーーーーーーー完ーーーーーーー
Incomplete World 乾杯野郎 @km0629
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