第3話
マスターの家の裏口は薄暗くこことビルが繋がってるとは誰も想像できない立地でマスターが仕入れに使ってる車が停めてあった
玄関から比較的綺麗なスニーカーをケイトに履かせて車にむかい弟村は普通に運転席に座ろうとしたがケイトに怒られた
「貴方お酒のんでるでしょう?!何考えてるの!」
「あんなもん飲んだウチに入らねぇよ!」
「ウィスキーあんなにガブガブ飲んでどの口が言ってるの!私が運転するから、道案内お願い」
そういい運転席にケイトが座り助手席に弟村座り
…助手席に座るなんて久しぶりだな…
弟村は少し物思いに老けている時ケイトがセルを回しエンジンをかけ弟村に行き先を問うた
「どこに行けばいいの?」
「あぁ…ちょっと遠いけどとりあえず俺の家に行こう、案内する」
「わかったわ」
「野郎の一人暮らだ、汚れてるが勘弁してくれ」
「屋根があってドアに鍵がかかれば贅沢言わないわ」
そういいケイトは車を発進させた
2人の車は裏路地を曲がり大通りを走ったり路地に入ったりと裏道を進み信号に引っかからずにスムーズに進んでいたが交差点で信号が変わり急ブレーキに近い感じでケイトは丁度ドーナツ屋の前に止まった
車窓を見ていた弟村が
「お前、今のは止まるなよ、踏んで抜けちまえよ」
「あら?元警官の癖に交通違反を奨励する気?」
「ちげぇよ、ちょっと急ブレーキっぽかったろ?あれは後ろがいたら突っ込まれるぞ」
「私はルールを守っただけ、それで後ろが突っ込んできたら後ろが悪いわ」
ケイトは少し怒り気味に反論した
「…もういい、お前が正しさを守ってカマ掘られたら笑ってやるよ」
「?!あなたね!」
ケイトは反論しようとしたがドーナツ屋の看板を見つけてしたり顔
「あなた警官だったんでしょ?やっぱりドーナツは張り込みに必須なの?」
ハッとした弟村は即座に反論できなかった
「警官全員がドーナツ食うと思うな、俺はホットドッグだったよ」
「ふーん?じゃあ飲み物は?」
「それはもちろん「「コーラ」」
ケイトもホットドッグにはコーラらしい
「そうよね?!やっぱりジンジャエールって言ったら即降りてもらってたわ!」
笑いと主観を交えてケイトが答えた
「おいおい、お前は警護対象者…」
「お前って呼ばないで、私はケイトよ」
「済まなかった、ごめん、こういう風な感じになるのは久しぶりでね、気分を害して申し訳無かった。ケイト」
素直に音村が謝ると思ってなかったのかケイトは少々驚いた
「あなた、素直なのね」
「俺がか?」
弟村が返答すると信号が青に変わったので車が動いた
「憎まれ口でも叩かれると思ったわ、ねぇ?聞いていい?なんで警官を辞めたの?」
「つまらない話さ」
「あなたにとってはつまらないかもしれないけどそれを決めるのは私よ」
「ケイト?君は職場とかで嫌われるタイプだろう?」
ハンドルを握った手を強めながらケイトが
「悪いものは悪いと指摘しているだけよ?!嫌うなら勝手に私を嫌えばいいわ」
「でも結果誰にも理解されないとキツいだろう?」
「別に、誰かに疎まれようが私は私よ、生き方や考えを共有する必要もない、誰かに言われて腐るようならそれは自分じゃない、その時点で私の中の私が違う者になるわ。そんな生き方は嫌いよ、いつでも自分が正しいと思う行いをして生きていきたい」
そう答えたケイトの目はとても綺麗な目をしていた
「ごめんなさいね…自分の話をしてしまって…」
「いや、いいよ、丁度着いた。このアパートの3階の305だ。俺が先に降りてケイトを降ろす、だから少し動くな」
そういい懐に忍ばせていたG17を初弾を装填してケイトに渡した
「何よ?!これ?私銃なんか…」
「避妊具みてぇなもんだ、とりあえず持っとけ。怪しい奴がいたら撃っていい」
そういい助手席から降りてあたりをとアパート入口を警戒しケイトを運転席から降ろした
「急げ、人目につく」
2人は足早にアパートに入っていったが弟村が
「2階に登る時は物音を立てるなよ?大家がいる」
「こんな時間よ?起きてるとは…」
ケイトの腕時間の針は日が開けて2時を指していた
「さっき聞いたろ?俺は滞納者、奴は滞納者の足音に敏感なんだよ」
「…わかったわ」
2人はゆっくり階段をあがり2階から3階に登ろうとした時
ギシっ!
床が腐っていたのか音がなってしまった
それと同時に向かいのドアが開きパーマカラーを巻いて頭にネットを被った恰幅の良いマダムが出てきた
「フミト!こんな時間に女連れ込んで!家賃はどうしたんだい!」
弟村は後頭部を掻きむしりながら
「Mrsガネット、今度まとめて払うよ!今は急いでんだ、勘弁…」
「いーや!勘弁しないよ!あんた何ヶ月貯めてると思ってるんだい!」
ケイトが持ってたポーチから財布を抜いていくらかガネットに渡した
「ガネットさん、すみません、これしか今持ち合わせてなくて…」
「ケイト!余計な事するな!」
「どんな事情があれお金を滞納するのは良くないわ!」
ケイトが渡した金をガネットは鷲掴みにし
「とりあえず今日はこれでいいわ、フミト?ガールフレンドかい?良い子じゃないか、変な真似したら追い出すからね!…あんたこのロクデナシになんかされたすぐに大声出すんだよ、あたしが包丁でコイツのナニを切ってやるから」
ケイトは意味が分かってないようだ
「ガネットさん、この人は悪い人じゃないから大丈夫、ありがとうございます」
「そうかいそうかい、まぁ貰うもん貰えたから今日はこの辺で勘弁してるやよ、フミト。それじゃオヤスミ」
そういいガネットは扉を閉めた
「ほら?フミト?305でしょ?貴方の家は」
こうなるとなんとも場が悪い
2人で305に行き弟村が鍵を開けケイトを招き入れた
「汚れてるっていってたけどあれは本音だったのね…」
弟村の部屋はトレーニング機器に書類やら督促状、ゴミ出しを忘れたのゴミ袋が溜まっていた
「だから言ったろ?」
キッチンから雑巾を持ってきて軽くソファを拭き、ベッドルームへ
「…この辺に…あれ?…どこ…あった!」
弟村が手にしていたのはまだクリーニングの封がしてあるスエットの上下だった
「これは綺麗な衣服だ、これに着替えてベッドを使ってくれ、俺はソファで寝る」
「そんな、私がソファに」
「最近ちゃんと眠れてないだろう?ここはBARのマスターしか知らん、だから安全だ、少しゆっくり休め、バスルームは玄関の所のドア、寝室は…」
そういい弟村はケイトの背中を掴んでベッドルームに押し込んだ
「ありがとうフミト」
「少し不便だが夜が空けたら少し生活品を買ってくる、オヤスミ、ケイト」
そういい弟村は着ていた服を着替え少しキッチンまわりとバスルームを軽く掃除をした
警護対象者とはいえ女性なので気を使ったのだろう
…この部屋に女を入れる日がくるなんてな…
掃除を軽く済ませ時計を見たら4時を回っていた
俺も少し寝るか…
ソファに沈むように腰掛け目を瞑った
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おいおい!俺の車に何してんだ?」
「タレコミがあってなぁ、お前が押収した薬を盗んでるって」
「俺がそんな事する訳ないだろう?!どこからのタレコミだ!」
「フミトを抑えろ!タレコミがあった以上調べん訳はいかないよ、無論お前を信じているが…念の」
「ありました!トランクの中敷の中ありましたよ!」
「そんな…俺は何もしちゃいない!信じてくれよ!アンディ!お前からもなんか言って…」
「フミト…見損なったよ…お前が…SWATから左遷させられたからって…」
「アンディ!お前!」
「フミト!おい!誰か手錠かけてこいつを抑えろ!」
「俺はなんもしちゃいない!離せよ!信じてくれよ!同じ仲間じゃないか!アンディ!ジョー!マリー!おい!聞いてくれよ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
朝日が窓から差し込み眩しさで弟村は目を覚ました、時計をみたら朝の8時前だった
…今更こんな夢を見るなんてな…そうか…運転はいつもアンディだったな…だからか…
ソファから起き上がり顔を洗いにバスルームへ
シャワーを浴びて髭を剃り、スエットに着替え一通り身支度をしてベッドルームにいきケイトを確認
昨日の疲れか…
そっとドアを閉めて起きた時用にメモ書きをし生活雑貨を買いに店へ向かった
アパートを出ると通りは出勤ラッシュなのかスーツ姿の男達や小綺麗にしている女達、スクールバスを待つ子供の列と賑やかだった
ここから店までは少しあるな…が仕方ないか…
足早に通りを渡り店へ急ぐ途中携帯が鳴った
番号はバードと表示
「なんだよバード」
ーおい!元警官!お前何やらかした!ー
バードは賞金稼ぎでマルコ保釈金金融から仕事をもらっていたが弟村と仕事がバッティングする度に弟村が勝ち取るので勝手にライバル視する反面なぜか友達の距離感で接してくる
「なんだよ朝から、それにその呼び名はやめろ」
ーロッシーニの部下がお前と女を探してるぞ!ー
「なんもしてねぇよ、まぁ俺はアイツらに元々嫌われてるからな」
ーそんな感じじゃなかったぞ?!俺ん所にもきて「フミトはどこだ!」って朝からうるせぇー
「バード?俺の家喋ったのか?」
ー言う訳ねぇだろ、そもそもお前ちょこちょこ居場所変えるからマルコさんだってお前の居場所つかめねぇんだからなー
「ならいいよ、ありがとうな」
ー…お前なんか大丈夫か?ー
「万事問題ない、勝手に騒がしとけ、じゃあな」
電話を切った
…とりあえずここの場所は割れてない、引っ越して正解だった、生活雑貨だけ買って引きこもるか場所を変えよう…
弟村は歯ブラシや洗顔料、軽い着替えを揃えアパートに足早に戻って行った
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