第4話 ★推しの想い★
これは陽子自身は知る由もないことだが、小学校、中学校と順調に進んで来ていた優等生・
確かに、彼自身が彼女に伝えたように、最初は彼女の"真面目さ"に興味を惹かれたのがきっかけだったが、明確に彼女へ恋心を自覚した瞬間と言うのはまた別だった。
それは偶然だった。池照は、その日、部活帰りに同じ部活の仲間たちと別れて一人になった時、たまたま公園で友達と話をしている彼女を見つけた。
ブランコに二人で腰かけて、時折ブランコを揺らしながら、とても楽しそうな笑顔で語り合っている。
通りかかっただけで、彼女たちが何を話しているのかまでは聞こえなかったけれど、それでも、輝くばかりの笑顔で無邪気に笑う彼女は、小学校の時も中学校に入ってからも、教室では決して見られなかった
それから、池照は何となく陽子のことが気になってしまって、ちらちら目で追ってしまうようになっていた。なんとなく相手からも視線を感じることもあって、もしかしたらこんな自分の気持ちを、相手も気が付いているかも?!なんて思ったりもしていた。
だから、告白するのは緊張もしたけれど、そう悪い返事ではないだろうと、恐らく付き合えるだろうなんて心のどこかでは思っていたのかも知れない。
けれど、彼女から返ってきた答えは、「推しだから付き合いたくはない」なんて理解に苦しむものだった。
推しってなんだ!?解釈違いってなんだ!!!!?
これまでの人生が、(彼なりに努力はし続けていたと言うのは前提とは言え…)それなりに順調に・スムーズに進んできていたからこそ、初めての挫折の理由が意味不明過ぎたことに大きなショックを受けてしまった。
ショックが大き過ぎて、彼女に対して落胆するとか冷めてしまうなんてこともなく、逆にその逆境に火がついてしまったようだった。
「絶対にOKって言わせてみせる」
なんて勢いに任せて堂々と言い放ってしまったことに、後になって恥ずかしくなって、帰宅後に自分のベッドの上で枕を抱えてゴロゴロと転げまわることになったりした。
これは陽子も同じことで、推しに告白された…どうしよう…どうしてこうなった…と悩みつつも、推しがこれまで見たことないような顔を次々自分に見せたことで供給過多になってしまい、幸せと混乱で爆発しそうになって、真っ赤な顔でクッションを抱えて両足をバタバタさせているのである。
そんなこんなで池照が陽子に告白した次の日。
二人は教室で目があった瞬間、お互いに明確に硬直してしまったので、クラスメイト達からはちょっと変な顔を向けられてしまった…!
「おはよう、佐久間さん」
「…え、あ、お、おはよ…池照くん」
普段ほとんど絡んでいない二人の、何となくぎこちないような…初々しいような雰囲気に、勘が良い一部のクラスメイトは少しだけざわつく。
それを察した陽子は、変な噂でもたったら大変だ…!と思ったのか、ちょっと慌てた様子で逃げるように自分の席へと向かって行ってしまう。
池照は、そんな陽子に逃げられてたまるか とも思ったのか、周囲の反応なんて素知らぬ顔で陽子の席まで追いかけていく。
「ねぇ」
「…ひえっ!?」
陽子はまさか席まで来るとは思わなかったようで、変な声をあげてしまった。
「今日一緒にお昼食べようよ。屋上で待ってるから、絶対来てよ?」
他の子達には聞こえないように、なのか内緒話をするみたいな小声でそう陽子に告げて、ビックリして目をぱちくりとさせる陽子にウインクをしてから自分の席に戻って行く池照。
戻って行く先では、他の生徒たちが「何話してたんだよ」とか「佐久間さんと池照って仲良かったっけ」みたいなざわざわとした会話が聞こえてくるが、陽子はもう完全に頭と情緒がパンクしてしまった為、机に突っ伏して赤い顔を隠すことしかできなくなっていた。
推しの攻勢に、恋愛経験0の壁になりたい女子は果たして対抗出来るのだろうか!?
二人の恋愛バトルはまだ始まったばかりだ…!!!!
推しが私を好きなのは解釈違いなんだってば!! 夜摘 @kokiti-desuyo
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