第18話◆2.5次元俳優、街に行く5

【ポンメゾット】はよくある三階建ての地域の生活雑貨店さんだった。

 近隣の契約している職人さんが作った物を定期的に仕入れて、それを売る感じの店で、沢山注文がある時は届けてくれもするようだ。


「今は食器関係がセール中ですね」

「セールとかあるんだ」

「ええ、仕入れ時期というか商品交換時期になると突発でやりますよ」


 いうなれば在庫一掃セールか。

 でも食器類は有難い。

 見れば鍋や調理器具セットなんかもある。

 持ち運び便利なキャンプ用品だといいものではあるけれど心許ないからなぁ。


「1階は生活用品、雑貨。二階はテーブルとか家具ですね」


 てことは三階が住居兼執務室とかだろうな。

 日本でもよくある店舗建築だ。


「テーブルと椅子のセットもみたいからまずは上からでいい?」

「ええ。ではこちらです」


 店内の奥にある階段を上がると、途端に木の香りがした。


「職人と契約してますので品物は良いです」

「だろうなぁ」


 と、値札を見つつ俺は頷いた。


 側面と足の部分に彫刻が施された濃い茶色のテーブルと椅子のセット、お値段金貨50枚。

 いやでもこの出来なら50万て安い方じゃない??


「どのようなものをお探しでしょうか?って。あれ?メテオラ?」

「あら、サリス。今日は出勤日だったの?休日では?」


 テーブルセットコーナーをウロウロしていたら女性店員さんが声かけてきた。

 メテオラさんのお知り合いらしい。


「そうなの。他の子がどうしても替わってくれっていうから。初めまして、私はサリス。サリス・ミニジャー」

「ミニジャー家はこの店の創始者の一族なのです」

「そうなんだ。初めまして、俺はラナン・イシュラークです。この街には機能付いたばかりで、メテオラさんには案内してもらってるんですよ」

「そうなんですね。この店の在庫は全て頭にありますので、何なりとお申し付けください」

「助かります、ではまず……」


 俺は一部屋分の家具と6人分の食器類、調理器具一式を見せて欲しいとお願いした。


「ではこちらからご案内しますね」


 サリスさんは他にも安価だが品は良いテーブルセットをいくつか見せてくれた。

 彫刻や過度な素材加工をしなければ金貨1枚から5枚で色々選べたりする。

 椅子も4脚ついているし。


「お一人用でも食器類を6セットとなると食器棚がいりますね。こちらの細目のタイプでしたら丁度良いかと。下の2段は高さもありますので、鍋や大皿を入れるのに使えますよ」

「おおお。さっきのテーブルセットと同じ色合いなんだな」

「同じ職人さんなので、色合いや造りも似てるんですよ」

「へー。じゃぁこの職人さんのシリーズで他には?」

「ベッドとローテーブルもありますね。あとは本棚も」


 サリスさんが次々と案内してくれるので、俺はそのどれもに予約札を付けてもらった。

 ここにあるのは見本品なので受注販売なんだって。

 受注販売……いい文化です。滅びろランダム商品!


「次は1階ですね。陶器や木器は職人ごとに別れてますのでシリーズで揃える方が多いです。調理器具はセット販売もあります。あとは特価品は外のワゴンにありますのでそちらもどうぞ」

「わかりました」


 1階では布団一式を注文した。これも受注販売なんだって。

 食器は陶器と木器でなやんだけれど、野外で使うことがメインになりそうなので、木器を8人分にした。カトラリーはある程度したら交換を考えて20セット。

 鍋はティフ●ールかな?てかんじで少しづつサイズが違うフライパンや鍋が5つ一纏めにでき、蓋も3つ。取り外し可能な取手が2個ついて金貨2枚だった。

 なんでも召喚勇者様の叡智の一つらしい。

 やっぱティフ●ールじゃん。


「ありがとうござました。ご注文の品が出来次第、お宿かドライブ商会に言付けをいたしますね」

「こちらこそ、アドバイス有難うございました。助かりました」

「では、またのお越しをお待ちしておりますね」

「はい!」


 沢山かったのでほくほくしていたら、メテオラさんがちょっと遠慮しながら聞いてきた。


「その……ラナン様は御独り暮らしをするおつもりでしょうか?」

「あー。そうですね。一応冒険者と商業ギルドに登録して、シノ君たちと旅をしてある程度やってけることが解ったら独立はしたいかな、と」

「そう……ですか」

「どうかしました?」

「いえその……寂しいな、と」


 メテオラさんは俯きつつそう話した。

 たしかに、解れ津刻が来たら俺も寂しいとは思う。

 でも、自分の足で色々見て回りたいのも本心なんだよな。

あとあれやりたい。

小さな家を建てて好きな家具に囲まれて、いざとなったら全部【空間収納イベントリ】に収納して持ち運びたい。

たぶんできる、やればできる。


「またここに戻ってくるよ」

「……はい、はい!」


 メテオラさんにそういうと、少しだけ笑ってくれた。

 ちょっと安心したかな。


「あ。もう一軒、寄り道いい?」

「はい?」

「神殿でお祈りできればしたいな、と」

「解りました、こちらですね。この大陸は神龍様が作ってくださったので神龍様が創造神でもあるんですよ。でも妹様である神鳥様の神殿も神皇国ルーティウスにありますね」

「姉妹神なんだ?」

「はい。神龍様には他にも姉妹神様達が居てそれぞれに世界をお創りになっていると経典にあります。ですがこの世界に来たのは神鳥様だけですね。ご自分の世界を創る際の参考になされたとか」

「そこまでぶっちゃけていいのか、経典……」

「大聖女様が実際に神龍様の配下であるバルキリー様から聞いて書き記してますから、本当の事だと思います」


 召喚勇者だけでなく、いたのか大聖女……。



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