第3章:街での過ごし方

第14話◆2.5次元俳優、街に行く1

 それから翌日の昼にはエイラ・アスラーク王国第三王都シイラに着いた。

 俺は身分証明が出来るものが無かったため、通行料として銀貨3枚を徴収された。

 シノ君が昨夜言ってたように、俺の分の通行料を代わりに払ってくれて、そのままドライブ商会の支店まで荷馬車を進めた。

 ドライブ商会はシイラの街の中心街にあり、高級品もあれば庶民でも購入できる商品を扱っており、第一王都にある本店、第二~第五王都までに支店を構えている。

 その支店は三階建てになっており、一階が庶民・生活雑貨、二階が高級品、三階が商談用の応接室が二部屋と支店長のいる執務室になるそうだ。

 俺達が支店の裏手に入ると、予め待っていてくれた馬番の人や社員が出迎えてくれた。


「シノノメ様!よくぞ御無事で!」

「マヌル支店長!ご心配を掛けましたがこちらにいるラナン様に救出して頂きました」

「初めまして、ラナン・イシュラークです」

「ああ、駐車場の兵より承っております。よくシノノメ様を救ってくださいました!ささ、皆様はこちらへ」

「ありがとうございます」


 マヌル支店長に促された俺たちは荷馬車を馬番と社員に任せ、三階にある応接室まで案内された。

 流石商店というだけあって、余り調度品に造詣がない俺でもセンスのいいものであふれていた。


「すごいな」

「マヌル支店長は調度品関係に造詣が深く、貴族のお屋敷のトータルコーディネイトも頼まれるくらいセンスがいいんです」

「だろうなぁ。庶民の俺でも憧れの部屋って感じがするもん」

「ははは。お褒めにいただいて嬉しいですな。今お茶を用意させましたので少々お待ちください」

「ありがとうございます」


 それから程なく、お茶とお菓子を持った40代くらいの秘書の男性がやってきて、お茶を入れてくれた。

 うん、いい香りするな。多分この世界だといい茶葉なんだろう。


「シノノメ様。お父様であるアイル様は明日到着の予定です」

「解りました。いつもの宿は空いてますか?この4人で宿泊したいのです」

「抑えている部屋がありますので大丈夫です。2部屋で大丈夫ですか?」

「ええ、食事の用意もお願いしますね」

「ではそのように」


 マヌル支店長はメモにささっと書き記すと、秘書の人にそれを渡した。

 すると秘書の人は一礼して部屋から出ていき、すぐに戻って来た。


「手配いたしました」

「ありがとう、クレール」


 秘書の人、クレールさんはにっこりと笑って背を伸ばした。

 出来る男の人って感じでいいなぁ。

 こんな年の取り方したいなぁ。


「あ、一応これが荷の目録なのですが、もしかしたら山賊達がいくつか持ち去った可能性もあります。それの確認もお願いしますね」


 シノ君が立ち上がり、丸まっている書簡をマヌル支店長に手渡した。


「かしこまりました。こちらで調べておきますのでごゆっくりお休みください」

「では明日。父が到着したら知らせてくださいね」

「はい」


 ということで。

 俺たち4人は手配してくれていた宿に向かう。

 ドライブ商店からほぼ目と鼻の先にあり、見るからに高級そうなお宿である。


「本日泊るのがこの【銀の涙亭】という大浴場付きの宿になります。軽めの昼食と夕食、明日の朝食も用意されてますのでご安心を」


 フォゼスさんがそう言って先に入り、受付の人に来たことを知らせる。

 するとこの宿のオーナーがやってきて、一通りのあいさつの後、食事は部屋に運んであると言ってくれた。

 フォゼスさんは宿帳に全員の名を記帳し、鍵を預かって受付の奥にある階段から部屋までを案内してくれた。


【銀の涙亭】は地下一階地上3階の宿で街にありながらも横に広い。

 西館と東館に別れており、東館は貴族や要人、ちょっとお金持ってる人専用らしい。

 その東館の三階にある広めの部屋に案内された。


「僕とラナン様、フォゼスとメテオラという分け方でいい?」

「俺は構わないけれど、二人はそれでいいの?」

「はい、メテオラは私の姪ですし問題ありませんよ」

「シノ様、何かあればお呼びくださいね。そこのベルロープを隣の部屋に繋げてもらってますので」

「わかったよ。ご飯を食べたら夕食まで休みなさい」

「ありがとうございます」


 と、あれよあれよと決まってしまった。

 まぁシノ君には色々と相談したいから丁度いいか。

 あとあの二人、血縁だったんだな。ぱっと見似てないから解らなかった。

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