第12話◆2.5次元俳優、色々拾う6
真夜中、ログインボーナスを確認していると、ふと人の気配に気が付いた。
後を見ればシノ君が居て、俺が振り返ったからかびっくり顔で固まっていた。
「コーヒーは眠れなくなるから、ホットミルクでもどう?」
「あ、はい、頂きます」
俺はバーナーとミルクパンを取り出して牛乳をいれ、調味料セット内にあった蜂蜜を入れる。
そこに珈琲を入れるのもすきなんだけれど、今回はただのホットミルクをつくる。
出来上がりと共にクッキー缶をだしてシノ君の前に置いた。
「どうぞ。気になる事でも?」
「ありがとうございます。……そうですね、ちょっと気になって……」
「答えたいものであれば。俺も質問あるし」
「ありがとうございます。では先に、ラナン様からどうぞ」
シノ君は手に持ったホットミルクを一口飲んでからそう言った。
「……じゃぁ最初に。あの洞窟で俺に気付いたのはなんで?」
「ええと、それは僕の加護のおかげですね。精霊の加護があるので、ラナン様に精霊が群がっていたので誰かが【隠蔽】してそこに居るんだろうな、と」
「精霊……」
いるんだ、精霊。まぁこんな世界だから当たり前かな?
「僕はいわゆるクオーターエルフなんです。祖父が人間、祖母がハイエルフで父と母がハーフエルフ同士でして、そのおかげか精霊の加護を授かりまして……」
「それで俺がそこに居ると解ったと」
「はい。それに精霊は悪意に敏感なので、悪意がある人には近寄りませんし、そのおかげでラナン様が信用に値する方だと思いました」
「そっか……」
精霊すごいな。
「こちらからの質問、宜しいでしょうか?」
「うん、いいよ」
シノ君はでは、と一言前置きしてこう聞いてきた。
「ラナン様はもしかしてニホン国から来た召喚勇者様ですか?」
「……は?え??」
「え?違うのですか?」
「……合ってはいるが、ちがうとおもう。日本から来たけれど、召喚勇者ではないはず。っていうか、いるの??勇者」
「はい、この世界は8国を擁するの大きな大陸なのですが、有事の際各国持ち回りで勇者召喚が執り行われるのです……」
シノ君を説明はこうだった。
この世界に何かあればその時の担当国が勇者召喚を行い、お迎えするらしい。
それは必ずニホン国から召喚されるとも。
歴代の勇者様はほぼ黒髪黒目であったけれど、たまに髪や肌、目の色が違うザイニチガイコクジン、が居るようだった。
勇者は使命を果たしたら各国の保護の元、一生をこの世界で過ごしたと教えてくれた。
そうか、帰れない可能性が高いんだ。うーん。
「どこの国から召喚されたとか解らないしなぁ。多分セオリー通りなら真っ白い空間に呼ばれて『あなたは違う世界に行ってもらいます』的な
「そうなんですね……」
「うん」
「そうですよね。やっと先の戦争が終わって今代の勇者様がのんびり過ごせるようになったばかりなのに、新たな勇者様が来るのは考えづらいですもんね」
「え?」
「はい?」
「いるの?今、この時代で生きてるの?召喚勇者様」
「え、はい、いますよ?」
マジカー。
なら俺は別枠でこの世界に呼ばれただけなんだろうなぁ。
どういう意図で呼ばれたのかはしらんけど。
シノ君の話では、およそ9年前にその戦争が終わり、魔王……というか魔族国の王が代替わりと共に政権交代。
現在は戦後処理に忙しいらしい。
それに、魔族がそのまま悪いという訳でもないという。
魔王として生まれ出たりこの世界を創造した神龍様に対し、アンチソウル【邪龍】が形成されそれに憑りつかれたりなんなりで【世界悪】化しやすいのが魔族、という種族のようだ。
中には大人しい魔族もいるので一概に絶対悪とはいえないのだ。
「そうしたらさ、シノ君」
「はい、なんでしょう?」
「この世界について色々と教えてもらえるかな?実はこの世界に来てまだ2日目過ぎたばかりなんだよね」
「ええええええ?ふ、二日ですか!?」
「そうなんだよ。なのでスキルやら常識やらお金の価値とか知らないんだよ。一応少しは貰ったけれど、どれだけあれば1週間過ごせるとか解らなくてさ。お願いできるかな?」
俺は少々の嘘を混ぜてシノ君にお願いをした。すると……。
ぴょん!
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
【説得】スキルを得ました。
※LVによって正反対意見も説得することが可能です
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はいはい、ありがとうな。
タイムリー、とか思ってるとシノ君がわかりました、と頷いてくれた。
「ラナン様は命の恩人ですし、積み荷の恩もありますので、暫くは僕の専属護衛という形で同行してみませんか?もちろん、衣食住、武具のメンテナンス代、日当もある程度上乗せは可能です。ラナン様がもう充分だと思ったらその場で任を解除しても構いません」
「本当か?行く当てもなかったから暫く同行させてもらえないかと思ってたんだよ。ありがたい」
「それにラナン様……多分ですがまだいろいろと隠しごとありますでしょうし、その時にそれが何なのか知らなければ大事になりそうでもあるので……」
「ウン……」
「それよりも、そのスキルや魔法、腕前で武勲を上げたい、とかはないんですか?」
「ないなぁ。手持ちだけでも一生生きていけそうではあるので、のんびりとこの世界を楽しみたいかな」
「そうですか。僕はこれからも各地に行商人として旅をするつもりですので、お任せください!」
「ああ!」
シノ君も俺もにっこり。
そして俺は翌朝の朝食時、シノ君の誘いでシノ君専用護衛として暫く同行するとフォゼスさんとメテオラさんに告げると、二人もにっこりしてくれた。
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