第8話◆2.5次元俳優、色々拾う2

 洞窟前の5人を倒したことで騒ぎを聞きつけた8人を【隠蔽】【光学迷彩】【サイレンス】を駆使して足早に移動しつつ半数を倒した。

 すると残りの4人の中に魔法職があるのか、当てずっぽうではあるが火の玉が次々に繰り出されていく。

 羅楠は木の陰に隠れつつ、【マップ】で野盗の位置を把握し、死角から強襲するように弓を打ち込んでいく。


(人を倒す……斃す事に関しての恐怖心が内の良い反面、慣れたらダメなんだろうな)


 出来れば人を害することなく、この世界を満喫したいとは思う。

 それを貫くための力は欲しているが、今回の様にどうしても……という場面は出てくるだろう。


(英霊騎士イシュラークも言ってたじゃないか。『人の死に慣れ過ぎ必要以上に命を奪えば英雄の霊になれず、生きていながら悪霊となる』って)


 英霊騎士イシュラークの生きざまに俺個人は憧れめいたものを感じている。

 高潔であるが必要以上に厳しくはなく、たまには冗談と鼻歌を交えて仲間と謳い酒を飲みかわす、そんな人物像だったから。

 あの物語はイシュラークが王国騎士から隊長に任命され戦で誉をとり、その死後英霊として祀られ、神々の末席に参列するまでを俺は舞台で演じた。

 刀祢とうやが演じた蔦薔薇姫ブラック・バカラは魔女として参戦し、イシュラークをかばい死んでしまう役で、ブラック・バカラの魂が王より賜った薔薇の紋章の剣に宿り、戦を興した諸悪の根源、魔王を討ち滅ぼす流れになる。


(『しかして、悪は滅せよ』。イシュラーク、俺はやるぜ)


 まずは神官・魔術師・ネームド・上役から殺せ、だ。

 見れば回復系はおらず、魔術を使う野盗も簡単な火の玉しか出せないらしい。

 であれば、と一気に【アローシャワー】で掃討できるなと確信し、弓を上方に向けて、エンド。


(残りは……出てくるか?)


【マップ】で確認すると1名が外の様子を入り口から見ていたようだ。

 暗がりに身を潜めているがそんなものは関係ない、俺はその方向に弓を引き絞った。


「ぐぁっ!」


 魔力を乗せた矢は吸い込まれるように野盗の眉間を貫いた。


(残りは……3人か)


 そういえばアレってできるのかな?

 敵味方識別というか、【MAP】との連携技である指定誘導攻撃。

 所謂【ロックオン】スキルというか、ロボットアニメでよくみるアレだ。

 するといつものぴょん!音が。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【ロックオン】スキルを得ました。

【マップ】との連携で誘導可能

 有効範囲

 LV:1 発動者から20mまで

 LV:2 発動者から60mまで

 LV:3 発動者から100mまで

 LV:4 発動者から150mまで

 LV:5 発動者から300mまで

 ※掛け合わせるスキルLVにより範囲が加算されます

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 たいむりー。

 なんだこのイージーモード。

 でも、生き死ににイージーモードはないんだよ。


 俺は早速【マップ】と【ロックオン】を連携、赤い点3つに指定ピンをさし、先ずは20mまで接近することにした。

 俺が矢を打った場所は餅から数メートルの茂み、そこから【マップ】を見つつ誰もいない事を確認して移動。

 この洞窟は奥まで50mはあるようなので、【隠蔽】【光学迷彩】【サイレンス】でそろそろと物陰に隠れながらっと……。


 ある程度まで近づいていくと、怒鳴り声が聞こえてくる。


「あいつらはどうした!なにがあった!」

「わかりません!偵察にいったやつら全員戻ってこないんです」

「こんな山奥にいったい誰が……」


 親分、と呼ばれた男を視認できる位置まで移動すると、なんかもう親分としか言いようがない風体の大きな男が……。

 山賊野盗の類ってこうだよなぁ、海賊はすらっとしたの多いけれど。

 今まで見てきたアニメや映画の山賊、野盗、海賊を思い浮かべると、またぴょん音が……。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

 スキル【ローグスナッチ】を手に入れた!

 相手の武器を盗む事が出来る。

 その場合、武器から気を逸らすor気が逸れている必要あり。

 有効範囲:20m限定

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 手元がおろそかになっていればOKってやつか。

 であれば、今20mまで近づいてきてるから……いけるか?


(【ローグスナッチ】)


 ぽそりとつぶやいてスキルを発動すると、手元に3本の剣が出現した。

 あいつらをみればまだ言い争っていてエモノが無いことに気付いてないらしい。

 あほだなー。……あれ?


(ん?)


 視線を感じたのでその方向を見てみると、身なりの良い少年がこちらを見ていた。

 少年を守るように前にいるメイドさんとちょっと年配の男の人は気づいてない。

 これって……。


(光学迷彩とか使ってるのに気づかれている?)


 俺はとりあえず、しー!と唇に指をあてて少年の出方をまった。

 すると少年は小さく頷いたので、するりと弓を構えた。

 少年は、二人の袖を引いて一歩後ろに下がった。

 それに気づいた二人はそれとなく2mほど後の壁際に移動してくれる。


(有難いな、その場所ならエモノが無くても飛びかかるのに距離がある)


 羅楠は一瞬、名乗りを上げようかと思ったがやめた。

 そもそも名乗れる身分ではないしな。

 某貧乏旗本の三男坊とか大納言の遺児でもなければちりめん問屋でもないしな。


 音もなく番えた矢が弦から放れると、未だに言い争っている3人にそれらは吸い込まれ、命を狩りとった。


【マップ】で見ても青い点は3つ、そのほかは全て灰色の点だ。


「ふう」


【隠蔽】【光学迷彩】【サイレンス】を解除して姿を現すと、突然死んだ野盗を見て驚いていたメイドさんと年配の男の人は「え?」と声を上げ、こちらを見た。


「どうも。通りすがりの冒険者カッコカリです」


 どこかのマゼンダっぽいせりふだが、まぁいいか。


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