第2章:異世界の森はいろんなものが落ちている

第7話◆2.5次元俳優、色々拾う1

 ※今回より羅楠視点となります。

 ◆◇◆◇◆


「おー。流石に森の中だと色々遭遇するなぁ」


 俺が森にはいってから10分で遠目に、木々の隙間からゴブリン3匹を視認した。

 ボロい剣を持っているのが2匹とちょっといい短剣を持っているのが1匹が固まって行動しているのを見ると、近隣の見回りなのかもしれないな。

【鑑定】をしてみると短剣もちは『レンジャー』らしかく、他の2匹はただのゴブリンと表示された。

 

(役職持ちならまずそちらから倒さないとな。よく言うだろう?まずは神官、次いで魔術師・ネームド・上役から殺せってさ)


 色々とゲットしたスキルの中から、俺は【隠蔽】【光学迷彩】スキルを発動して森の風景に溶けこみ、そろりと直線状にゴブリンたちが見える場所に移動する。

【隠蔽】【光学迷彩】スキルも以前やった近未来サイバー警察モノの刑事役をやった経験から得た物だろう。


「よっと」


 弓を構えてレンジャーに照準を当てると、三重の円状の枠が現れ中心に赤い点が点滅する。

 いわゆる照準ガイドラインだ。

 指先をちょっとずらすと赤い点は作動しない。

 という事は点滅していれば『HIT可能表示』という事なのだろう。

 落ち着いて弓を引いて息を吐く。

 く、と顎を引いて点滅した瞬間、指を弦から離した。

 ヒュイン、と音を立てて矢はレンジャーの眉間を貫き、絶命した。


「ギャッ!」

「ギュ?」


 突然一緒にいた仲間が倒されたことで残りの2匹は驚きで固まった。

 そのスキをついて弓で二射目、もう片方を倒してから三射目に移る。

 どうやら逃げようとするもパニックになっているらしいので、難なく背後から射貫き、三匹とも倒す事が出来た。


「ふう……」


 は、と息を吐く。

 一方的ではあるが初戦闘はクリアできたのでよかった。

 と、ぴょん!といういつもの音と共にポップアップが。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【任務:初戦闘】クリア

 報酬:恐怖耐性LV:5

   ゴブリンの右耳×99

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「3匹倒しただけだっての。ううむ、この任務とかスキル取得の条件一覧があればいいんだがなぁ」


 【恐怖耐性LV:1】は昨夜色々と思い出してて、小さい頃にふと犬に吠えられた同年代の男の子を守るために立ちふさがった時に生えてきたものだ。

 そのおかげでゴブリンが居ても落ち着いて対処できたのだが、恐怖耐性LV:5だとどの位怖くなくなるんだろうな、とは思う。

 それでも、足がすくんで逃げられない事だけは避けることができるのなら、良い事だと納得した。


「まぁ討伐部位ってことかな、これ」


 ざかざかと森を進み、倒したゴブリン達の右耳をざりっとはぎ取る。

 流石解体ナイフ、何の抵抗力もなく剥げたし血も出ない。

 さて、ゴブリンと言えど世界が違えば家畜や畑の肥料になる。

 なので『この世界』ではどうなのかとゴブリンの死体を【鑑定】した。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【ゴブリンの死体】

 ただの死体

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「……あ、はい」


 残念なことにゴブリンの死体はただの死体で、このままにしておくと他の魔物が寄ってくる恐れがある。

 なので俺は【イベントリ】に収納してゴミ箱にポイすることにした。


「収納!あーんどゴミ箱!」


 するとまたぴょん!音とポップアップが……。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【売却】

 ゴブリンの死体×2:銅貨1枚×2 

 ゴブリンレンジャーの死体×1:銅貨2枚×1

 合計:銅貨4枚

 YES/NO

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「売れるんだ……? YESっと」


 ちょりん!という音がして所持金に銅貨4枚が追加された。


(これ、冒険者ギルドいらずじゃないか???とりあえず登録はするつもりではあるけれどさ)


 でも狩りながら移動するには持ち運びできるし楽だな、とは思った。


「さて、このまま真っすぐ行くと街道だな……およそ20kmくらいか」


【マップ】を見ればこの森の奥を突っ切ると広めの街道に出、そこから北に50kmほど行くとエイラ・アスラークの第三王都街シイラに着くようだ。

【マップ】を拡大すると今はエイラ・アスラーク王国の南側の森にいるようで、王都を挟んで上下左右(東西南北)に第二~第五王都街がある。

 王城がある場所が第一王都エイラってわけだ。

 北に第二王都街カイラ、南に第三王都街シイラ、東に第四王都街テイラ、西に第五王都街ノイラ。

 へー、と思いつつさくさく進んでいく。

 途中途中で見かけたフォレストウルフやワイルドボア、オークなんかを木々の隙間からちょいちょい弓で倒していく。

 売却する前に素材や肉にできるものは一旦イベントリに移してからタップすると、『解体しますか?Y/N』と出てきたので、あとでまとめてやろうと思う。

 生ハム原木以外の肉は有難いのだ。

 目についた木の実やベリー、キノコ類もぽいぽい【イベントリ】へ。

 食用に適さないのは1タップで説明文も出てくるので考えなしに入れてってもよさげだね。


「ん?」


 と、森の深部あたりに差しかあったとき、山の壁面に洞窟が……。


「星屋羅楠が~どうくつにーはいる~。てか?」


 某探検隊の歌を歌いつつ、木の陰に隠れながら入り口に近づくと手前に身なりと人相の宜しくない男どもが5人ほどうろうろしていた。


「山賊?野盗?……周りを警戒してる……?」

 

 あの洞窟に何かあるのかな?

 と、意識を向けた瞬間、いつものぴょん!音が。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

 大商人の息子が街道を荒らす山賊に囚われているよ!

 助ける?

 Y/N

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「いやいやいや……これもクエスト扱いなのかよ」


 人命かかってんならYES一択だろうがよ!

 YESをタップした瞬間、上から見た図だろうサブ画面がでてきた。

 縦長の画面の下三分の一が明るくて一線引いたように上部が暗くなっている。

 が、赤い点が合計20ほど、ちょっとずつだけれど動いている。

 その再奥に青い点が3つ。灰色の点が1つ。


「灰色は……だよなぁ」


 本能的に感じた結果はあってるのだろう。

 平和ボケした日本で暮らしていても、人が人を害して命を奪うニュースなんかしょっちゅうだ。

 だけれど、改めてそれが身近な事だと思い知らされた。

 ここはそんな『世界』なのだ。


「助ける……うん。助けなきゃ……」


 すっと頭が冷え切った感覚。

 弓に矢を1本番え、それを外にいる5人ではなく、上に向ける。


「【アローシャワー!】」


 魔力を込めて力いっぱい溜め撃ちした矢は頭上で魔力によって30本に増え、その威力と共に5人に降り注いだ。

 この世界、割と自由な発想を具現化してくれるのか、魔力量とスキルとイメージによって技が使えるようだった。


「ぐふぉ!」

「ぎゃっ!」

「がっ!」


 そんな声をあげながら山賊?は5人とも絶命する。

 恐怖耐性、仕事してるなぁ。

 なんとなく、人を殺したんだな、って解るんだけれど葛藤とかそれによる恐怖感はない。

 そして外の5人が突然倒されたことで中にいた残りのうち半数が慌てて出てきた。


「なんだこれ!」

「敵襲か!」


 8人ほどが武器を構えて出てきたので、【隠蔽】【光学迷彩】【サイレンス】を纏って移動。


 さて、ゲーム感覚で悪いけれど、狩らせてもらうぜ?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る