一位のあの人は……2

「それにしてもこんな所で噂の耳に出会える

とはな」

「知ってるんですか?私のこと」

「知らない奴なんかいないよ、もう」

「ありゃー」

彼は左右から俺の耳を眺めた。こうやって見ると美形なアバターだなあ。羨ましい


「触ってもいいか?」

「ど、どうぞ!」

「だ……むぐっ!!」

何か言おうとした美子をがっしりと俺は押さえた。同時に一位のその人が瞳から溢れさせる好奇心に身震いした


「じゃ、遠慮なく」

「むぐっ……!むむうっ!!」

不安な俺も押さえつけられ暴れる美子も気にせず一位の人は耳を触りだした


「ひゃんっ……!」

俺が出したその声に思わず耳から手を離してしまったらしい

「どうした……女みたいな声出して」

「ご、ごめんなさい。てか根元から触ってません?もしかして」

「根元からじゃ悪いのか?ほら」

「や、やめて……んっ……」

反応が面白いのか更に根元を弄る一位の人、

俺は逃げたくなったが、逃げるのは不味いよなと思い、大人しく弄られた

しかし、あっさりと手を離す一位の人でもあった。

「ふむ……とりあえず付け耳じゃ無いみたいだな」

「そうですよ。小さい毛がびっしり生えてる

可愛らしい耳です」

「可愛らしい……?」

「あっ」

く、口が滑った!一位の人もほら、びっくりしてるじゃ無いか。どうしたものか

「も、もう一度確かめてもいいか?」

「どうぞ……」

また、一位の人は耳をそっと触……らずに

今度は思いっきり引っ張った。痛い、めちゃくちゃ痛い。やめて、ちぎれちゃうよぉ

【俺の怒りメーターが更に一つ溜まった】

「すげぇ、マジでくっついてるよ!ほんとに

生えてんだな!」

「いだいです!やめで!やめでくだざい!

ほんとにいだいんです!!」

「一位の人にそんな態度取っちゃう?」

「な、なんでもないです……」

胸元に付けられた黄金に輝くメダルの様な

証を見せびらかして、にやりと一位の奴は

笑った

「じゃあもう少し遊ぼっと。えい」

「ふぎゃあああああ……!!」


……


「ひぐっ……ぐすっ……」

「何も泣かなくたって良いじゃないか」

「だって……」


耳は散々引っ張られたりしたもので、じんじんと傷んでいた。演技じゃ無くてガチ泣きしてるってのに目の前で彼はにやにや笑っている


「ちょっと!いくら一位だからってやって

いい事とわるい事があるんじゃ無い?」

「お?逆らっちゃう?」

「当然です!!」

杖を構え、一位の男の前に立つ美子、

それをやれやれと言った表情で見ながら

腰の剣に手をやる一位の男であった


「よせ、美子!お前じゃ到底勝てる相手じゃ無い!!」

「うるさい!やるったらやる!」


だが、一位の男が手に持ったのは剣では無く

デバイスなのだった

そして、俺の方にデバイスを向ける男……


「え?戦わないの……?」

「無駄な戦いはしない主義でして〜」


杖を構えたまま、美子はぽかんと口を空けた


その姿にもデバイスを向ける男


「ふっ……」


「あはははははははははっ!!!」



一位の男は突然、腹を抱えて笑いだした


「何が可笑しいんですか!」

「いや、だってさ、女ならまだしも普通の顔した男がネコミミ痛くて泣いてんだもん!おっかしー!!」


【俺の怒りメーターが最大まで溜まった】


「ほら、もう一度その顔見せてよ。永久保存してやるからさ!」


男は尚もデバイスを俺に向ける


「美子……」

「いいの?やるなら思いっきりやるけど」

「やれ」


美子が天に杖を掲げた、その先端には紅の色した光が次々と集められていく。そして、俺もまた剣を構える。耳の痛みが更に俺の怒りを増幅させる、火山が噴火しそうだ


「じゃあやっちゃうからねー!!」

「おうよ!」


途端、一位の男に降る巨大な火弾、それが

直撃すると同時に俺は


斬った


「いい加減に……しやがれっ!!!」


「ふぎゃああああああ!!!」


フロアの何処までも響き渡る様な悲鳴、

それ以上に凄まじい爆発音、振り返ると


そこにランキング一位の姿は無かった


"You WIN perfect "


頭の中で声が聞こえた。と、同時に握っていた力が抜け、地面に剣を落とした


「やっち……まった」

「そ、そうだね……あはは」


その時、胸元のデバイスが振動した

開いて見ると、そこにはこうある


"【緊急】特殊イベント下克上が発生しました

よってランキング一位が現在所持していた経験値が千位以下のプレイヤーに分割して配布されます "


てことは俺がランキング2768位で美子が3985 位だから


「え!?二つレベルアップだって!凄くない?倒した甲斐があったね!」


美子はその場でぐるぐる回り出した

て事は俺はもっとか


"経験値が配布されました。特殊コスチューム

猫の尾が装備されます"


え!?ちょっと待てよ!レベルアップは?!


ん……てか尻に何か当たってる様な


俺は尻の辺りに手を伸ばした。そこには細くて毛の生えた何かの感触が


「し」


「しっぽだああああああ!!」


み、美子!?飛び付くなああああ!!!

なんで経験値が勝手にしっぽへ変換されるん

じゃあああああああ!!!



こうして、俺はネコミミとしっぽを生やした

完全猫装備になったのだった






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