在る奇跡

腰から生えたしっぽをゆらゆらさせながら

歩いていると、残り時間は30分ぐらい

になった。それを美子に伝えようと思ったが、じゃあその前にしっぽも耳も遊び尽くそうとなるだろうし黙っている事にした


「た、たすけ……」


どこからか声が聞こえる。行ってみるか


声のした方には頭から血を流して、鎧を着た

男が倒れていた

「おい、大丈夫か?!」

「に、逃げろ……奴らは……つよ…」


"プレイヤー1486-883がGAME OVERに

なりました"


き、消えた!?死んだって事か


「何だか良く分からないが、逃げるぞ美子」

「う、うん……でもどこへ?」

「どこかだよ!」


だが、その時

「ミミ、ミツケタ。ツブソウ」

声と共に何かが振り下ろされる感覚があった

間一髪、避けた俺たちをそいつは舌打ちした


見上げると、俺たちの背を遥かに超えた緑色の半裸男がそこには居た。オークかくそ


「まままた、耳目当て!?」

「違う、奴には殺意がある。潰す気だ」


半裸男は口から白い煙を吐き出し、にやりと

笑う


「オレモテツダウ!!」

「な……」


美子の手を掴み、俺は走った。地面が震えている。あれは一体じゃない、またまだ居る


「マテェ!ミミ!」

「ブッツブース!!!」


音からして奴らも走っている、逃げ切れるか


「ちょっと、私に戦わせてよ!」

「それは無理だ。奴らは強い確実にな」

「でも!」


美子は俺の手を振りほどくと、杖を構えた


「レベルアップしたんだから大丈夫!!

そりゃああああああ!!!」

「た、頼んだぞ!」


だが、杖からは何も出なかった


「な、なんでぇ!?」

「MP切れかよぉ!!やっぱり逃げる!」

「そんなー!」


美子は泣いた、俺に手を引かれてしばらく

そんな事は奴ら気にせず、たまに顔を向けると、無茶苦茶に棍棒を振っていた


━━━━━━━━━━━━━━━


「はぁはぁ……何とか」

「ここなら大丈夫かな……」


大きな岩の後ろに隠れた俺たちは奴らの

動向を伺っていた。足は遅いらしいが、リーチが長すぎる、一振りしただけで俺らは軽く数十メートルは吹き飛ばされるだろう


「美子……」

「何」

「俺が奴らを惹き付ける隙に逃げろ。下のフロアに逃げれば何とか安心だ」

「あんた」


だが、美子は俺をぎゅっと抱き締めた


「させないよ、そんな事。パートナーじゃ

無い私たち」

「美子……」

「それに」


「このしっぽとお耳を私以外に触らせたく

無いからね」

「ひっ」


しっぽをゆっくり撫でて、美子はじゅるりと舌なめずりした


「ミミガイタゾ!ツブセ!!」


ま、まずい!見つかった!

逃げ


「オンナダゾ!シカモイイオンナダ」


え?女?


「美子まさかお前耳生えて無いよな?」

「生えてたらずっと触ってるわよ!」

「じゃあオンナって……」


俺はそっと岩陰から奴らの方を見た


「ギャアアア!!オタスケェ!!!」

「ユルシテェ!」


そこには奴らが泣きながら倒れていく

姿があった。近くには何か巫女の服を着ている様な少女らしき何かが立っている


「なんじゃいあれは……」


眩い輝きだった。手には細い剣を持ち、頭から狐の様な耳と尾を生やし、黄金色の長髪が

靡いている


「おや?懲りずに来たみたいだコン」


こ、コン……?!って口癖を気にしてる

間に目の前がオークでいっぱいに!ひぃ


「美子……絶対に動くなよここから」

「で、でも……なんか」


美子はハァハァと息を荒らげいる。あの耳と

しっぽに反応してるんだろうか


「とりあえず俺の耳で我慢しておけ」

「待ってました!そりゃ」


耳だと言ったのに真っ先に美子はしっぽを

甘噛みした。嫌、今はそんな事気にしてる

場合じゃ


「サテ……コノニンズウ二カテルカナ?」

「足りんわ。かかってコンじゃ」


くいっと、少女が中指で挑発するとオーク

達は一斉に棍棒を振り下ろした。だが


俺が思わず目を閉じて、開いた時には


血の付いた剣を地面に向け、立つ少女の

姿があった


一体として、動いているオークはおらず

口から血を吐いて、倒れているばかりである


「つ、強……てか」

「耳の中を舐めるなぁ!!」

「だって毛が生えてるんだもん!!」


俺たちがぎゃーぎゃー騒いでる内に少女は

消えてしまった。後に思う、あれは俺が

遭遇した奇跡だ。耳が生えた事なんかより

ずっと真っ直ぐな


《次回……完結?!》




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