好奇心は俺をも泣かす 2
「いやぁ……御無礼をおかけしました。
まさかあの"いつあネット"の取材だった
とはね」
「ご存知で何よりです」
俺に話しかけたその人は頭にスライムを
乗せていた。顔立ちは幼く、今にもモンスターに負けそうな華奢な体付きをしてる
「ほら、お前も謝らんかい」
「ごめんなさい……」
美子は深々と頭を下げた。いつあネットとは
主にダンジョンについての記事を配信してる
ネットメディアである
「じゃ、いくつか質問をしますね」
「はいはい」
「耳が生えてきたのはいつからですか」
「数時間前ぐらいですかね」
「生えてる違和感はありますか」
「無いですね」
「耳が生えてから変わった事は?」
「モンスターが凶暴化して、大量に寄ってきました。あと一緒について来た女も」
そっと伸びていた美子の手を俺は左手で
掴んだ
「あの……失礼ですがその女性とはどんな
関係で?」
「一緒にダンジョンをプレイしてるだけの
幼馴染です。今は敵の一人だけど!」
「ぐぬぬ……」
「なるほど、仲良しの幼馴染と」
「だだの幼馴染!!」
俺の叫びも虚しく、インタビュアーは目の前でささっと黒の手帳にメモを記した
「そう言えば下の階層が大変な事になって
ましたけど知ってますか?」
「大変な事?」
「ええ、猫耳のプレイヤーに遭遇すると確実にレベルアップするって噂が流れているらしく、邪魔な人間を倒しまくってますよ」
「ひぇえ……えらいこっちゃ」
じっーと俺の耳を見つめる美子、その大変な階層に行くべきだったのはコイツだったのではと俺は感じた
「しかし、こうしてお耳を眺めているとあれですね、触りたくなっちゃいますね」
恥ずかしげも無く、インタビュアーは
えへえへ笑った
「触ってみますか?ちょっとならいいですよ」
「本当ですか?!じゃ、失礼して……」
すくっと立ち上がって、インタビュアーは
気持ちのわりぃ表情を見せつつ俺に近づいた
「駄目」
「え?」
「駄目だって言ってんだろ!!!」
大地が震えるかの様な美子の叫びに俺とインタビュアーはびくっと恐怖した
「この耳は私だけのものです!!」
「す、すいません……」
どさくさに紛れ、美子は俺の身体と自分の身体を密着させた
「まあかわいいですもんね。その耳」
「かわいい?」
「え、もしかしてかわいいって事自覚して
無い感じですか……?」
インタビュアーは不思議そうな顔で俺を見た。かわいいっ……?この耳が?有り得ないな、女ならまだしも男に生えた耳がかわいい
筈が無い。触り心地はいいらしいが
「ねーかわいいですよね?名前の分からない
人」
「美子です」
「失礼しました、美子さん」
「確かにかわいいと私も思いますがね」
「ね?」
ぱっと俺から身体を離すと、美子はインタビュアーの前に出た
「かわいさ以上にポテンシャルが凄いんですよ」
「ポテンシャル?」
「そう、驚いたら左耳と右耳がぎゅってなるし」
「ほう」
「細かい毛が先っぽから根元までびっしり生えてて触ると気持ちいいし」
「なに?!」
「根元をそっと撫でるとびくってなるし」
「なんですと……!」
い、嫌な予感がして来た。てか根元を……
っていつの間に俺の耳でそんな事してたのか?!
「てわけで、かわいいだけじゃ無いんですよ!!分かりましたか?」
「よーく分かりましたぁ!」
お二人はまあ上機嫌な様で、今にも踊り出し
そうな雰囲気だった。俺の耳で意気投合しないで頂きたいのだが……
「でも話を聞いてたら……触りたくなっちゃいました」
「ひっ」
急にこっち(主に耳)を目を輝せ、見るインタビュアーに思わず俺は身震いした
「でも……駄目ですよね。あはは」
「そうですねぇ」
どうにか耳を弄られるのは回避出来たらしい。俺はほっと胸を撫で下ろした
「いいですよ」
「み、美子?!」
「え?!さっきは駄目って」
「気分が変わりました!さあ、私が押さえ込むので遠慮なく!」
いつの間にか俺は後ろから美子にがっしりと
固定されていた。目の前には口をあんぐり
空けたインタビュアーが
「その代わり、次はあなたが押えて私に触らせてね約束だよ」
「はな、離せ!!こらぁ!」
「わっかりましたぁ!それじゃ先っぽから」
「やめろおおおお………あああああ!!」
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「ひぐっ……ぐすっ……」
「泣いちゃいましたね」
「流石に遊びすぎちゃったか」
二人に……散々耳を弄られ……俺は……ないてしまって……
「でもまだまだ触りたり無いなぁ」
「ひぐっ?!」
「なーんて、冗談ですよ」
「やだ」
「もういやだーーっ!!!」
その場から逃走した
「あーあ、男の子泣かせた」
「え?!」
「記事が出来たらコメントしてやろ、この
記事に出てきたインタビュアーはセクハラして男の子を泣かせたって」
「え、ええ?!そもそもあなたがやれって」
「もう居ない!?ちょっとー!!!」
その後、記事が上がったかは不明である
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