第四章 陰キャ男女は接近する。
第30話 まるで馴染んでいるようで、
その後数日は――色々あった。
溶けたり酸化したりで酷い有様の二宮金次郎像や、その他勝手に移動した無機物たちも、大人の手によって、元あった場所へと戻された。
霊がぶっ壊したものや、地面に突き刺さった包丁や割れた皿、ビーム発射でぶっ壊した窓ガラスなどは、すべて心霊現象のせいとして、心調部はお咎めなしで丸く収まった。
裏では幽崎先生の尽力があったらしい。
とはいえ、安全だと言って死地に送り込んだ代償はこんなんじゃすまないので、今度何か奢ってもらうことになっている。
騒動翌日の体育が地獄だったのは言うまでもなく、僕たち心調部は、筋肉痛のため丸一週間は何もできない肉まん状態だった。
普段動かない陰キャに、夜通しの鬼ごっこ――しかも階段昇り降りあり――は無理があったということだ。
ただ、たとえ肉まんであっても、僕は一日も学校を休むことができない。
普段の二倍くらいの時間をかけながら、僕はなんとか登校を続けた。
これだけ言うと、同情されそうだけど、実は、良いこともあった。
それはなにかというと、つまり――人生でも初めての体験だったのだけど――同級生たちに、めちゃくちゃ褒められたのだ……
「旧校舎のお化け退治したって?」
今日休み時間にやってきたのは、他クラスの生徒だった。
今まで誰も寄ることのなかった僕の周りは、今や人足が途絶えることがない。
「本当にいなくなったもんなぁ。影とか音とか一気に消えたし」
学年さえわからない男が、感心したように頷いている。
「ほんと怖かったから、助かったよぉ! 陰野くんすごい!」
見知らぬ女子が誉めてくれる。
「えへ、へ、へへ……」
僕は下手な笑いを浮かべた。
「どうやってやっつけたの?」
他の女子が聞いてくる。
これも、何度も受けた質問だ。
僕はひとつ咳払いすると、
「え、えっと、ビームで……」
「ビーム!?」
男子たちが爆笑する。
これはもはや鉄板ネタだった。
愛想笑いをする余裕さえある。
この状況、まったく、笑えるほど現実感がないよね。
あの僕が、普通の人たちと普通に会話して、笑っている……
まるで……まるで……学校に馴染んでいるみたいじゃないか……
🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸 🔸
このキャラ好き、笑えた、等々思っていただけましたら、
★レビューで応援いただけると嬉しいです……!
https://kakuyomu.jp/works/16817330657160113357#reviews
(↑上記URLからも飛べます。)
★の数は今時点の正直な評価で構いません!
あとから変更できますのでお気軽に!
もしよければTwitterのフォローもぜひ~
https://twitter.com/iyaso_rena
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます