遅すぎた再会

この人が私の母親?


展開が急過ぎて実感が湧かない。


だが頭の中は走馬灯のように


幼少期の様々な記憶が駆け巡る。


『賢也です。』


やっとのことで絞り出した。


万感の想いで母を見つめる。


しばらくの沈黙が続いた。


そして相変わらずの微笑を保ったまま


しかし私に焦点は合わせず


思いの外、はっきりとした口調で


「初めまして。」と呟いた。


最初に案内してくれた看護師に


母の件を尋ねてみた。


通常の生活では記憶障害の傾向はないと言う。


もしかしたら断片的な消失があるかもしれない。


先生に伝えると言ってくれた。


あの後、幼い頃に離れた


母を探していると会話を切り出した。


そうせざるを得なくて。


“ それは可哀想に。” と他人事のように


その老女は答えた。


余りにも悲し過ぎる親子の再会となった。


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