母の消息
母の病院は意外にも近くだった。
実家のある田舎町ではなく
私の住んでいるこの街に。
あれから自治会長に頼み込んで
母の病院を教えてもらった。
会わない方がいいかもしれないと
何度も忠告されたが、私の中で
母の存在がどんどん大きくなる。
その気持ちを抑えることは出来なかった。
駅裏のやや寂れたその建物は
私と母の想いを代弁しているようだった。
受付で母の名前を告げ、息子だと伝える。
電話で何度かやり取りをして
3階に向かうように促された。
混んでいるエレベーターを待ちきれず
私は階段で先を急いだ。
3階詰所で母の名前を尋ねると
年輩の女性看護師が案内してくれた。
この階の入院患者は
比較的症状は落ち着いていると言う。
廊下の突き当たりに窓があり
西日というには力強い陽が射し込んでいる。
その手前にある部屋へ案内された。
個室の扉を開けて、
“ 息子さんがいらっしゃいましたよ。”
と声を掛け、私を促し彼女は去っていった。
その後、やや躊躇しながら部屋へ入る。
10畳ほどのスペースの
窓側に置いてあるセミダブルのベッドに
一人の老女が起き上がっていた。
微笑を浮かべながら
こちらに顔を向け軽く会釈をした。
胸に込み上げるものを感じながら
私はその女性をみつめた。
続
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