第18話 捜し物
「おかえり」
病院入口にドンと立ち塞がる大男。口をツンとすぼめ、帰ってきたばかりの2人を睨みつける。
「邪魔だ退け。それともなんだ、蹴飛ばされたいのか?」
「……何か言うことくらいあるんじゃないか?」
言うこと? 特に思いつくことなんか……ああそうか!
「お前の分なんて買ってきてないぞ。私に餌をねだるな、愚か者め」
この2人が顔を合わせたらこうなるしかないのか? ローウェンは鼻筋と眉をひくつかせ、噴火寸前といった様子。対するカミラは、バカにしたような薄ら笑いを浮かべて余裕な態度。
更には病院に入る時、ローウェンが退かないもんだからゲシゲシ蹴飛ばす始末。その内本当に怒り狂いそうで怖いな。
その夜、「勝手に出歩くな」だの、「俺の目の届くところにいろ」だの、とにかく怒鳴り散らかしていたローウェン。しかし、ウィルがベットに入ったことを皮切りに、示し合わせたようにカミラも寝転んで、その場はおじゃんとなった。
翌日。只今の時刻は正午。
昨夜は早くに寝てしまったからか、今日は珍しく2人とも早起きだ。といっても、カミラは陽の光がダメだから、二度寝をかますものだと思っていたが、彼女はクローゼットを開け放ち、真っ黒で大きいローブを手に取った。
「あれ? どこか行くんですか?」
「ああ。カード探しに行こうと思ってな。今日まで、匂いが全くしないんだ」
そういえばそうだった。最近色々と立て込んでいて、捜し物の事などすっかり忘れていた。しかしそれはウィルだけで、カミラは今日までしっかりと探し続けていたらしい。
「僕は何をしたらいいですか? 結構キツい匂いがするなら探しやそうですけど」
「いや、寝ていていいんだぞ? 動くの辛いだろ?」
「大丈夫ですよ。飛んだり跳ねたりするんじゃなければ、捜し物くらい余裕です!」
カミラは「そうか」と、短く返事だけして黒で全身を覆う。
「ならあの付き纏い男と一緒に探してくれ」
ウィルはカミラのこの提案に、少し驚きの表情を表す。ただ、カミラもこの反応は予想していたのだろう、直ぐにわけが話された。
「私はほら、人には行けないルートで探すからな。地上の方は任せた」
カミラが形作るのは、への字にした手の上を走らせる二本指。大方、屋根の上でも行くらしい。
「そういうことなら、分かりました。地上は任せてください!」
「ああ。早速付き纏い男を叩き起しに行こうか」
廊下へ出るカミラの後に続くウィルの表情には、安堵の色。それと同時に、役立たずにならないよう、ぎゅっと気合を入れた。
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