第6話 家族との別れ

「ありが、とう……私達の息子を、ウィリアムを……よろしく、お願いします」

 

 女の最期は、ゾンビになったとは思えないほど幸福そうに見えた。子供が助かって安心したからだろうが、少々気味悪く感じてしまう。

 カミラは気を失っている男児を抱えたまま、死に絶えた女に歩み寄り、崩れた頭からカードを抜き取る。

 

「漸く1枚目か」

 

 目的の物は回収出来たし、こんな場所、さっさと離れた方が懸命なのは分かっているが、ふと女の言葉が過った。

 

「私達の、息子……」

 

 辺りを見回しても、生者の反応は感じられない。

 

「おい、お前の父親はどうした?」

「…………」

 

 煙を吸い込みすぎたか、ウィリアムに意識は回復していない。だが、呼吸も鼓動も安定しているし、死ぬほどでは無いのだろう。

 カミラは1本の棒切れを拾うと、女の側に伝言を残した。

 

『ウィリアムは無事だ。もしこの子の父親が生きているのなら、南へ下った河原まで来い。明日、○○/△△の日没まで待つ』

 

「こんなものか。あとは……」

 

 カミラはチラと動き続けるゾンビに目をやる。その後、空に立ちのぼる煙を見て、廃墟となった村を後にした。

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