第7話
朝になって、目が覚める――
「朝食は食べたのかい?」
「いや……何が食べたい?ご馳走になったからね……」
「じゃあ、君の故郷の料理という物が食べたいな」
「わかったよ――」
何やら、いい香りのするスープを作っている。作っている中、もう少しでここを後にすると男が言うと「寂しくなるね……」と微笑みながら返す――
「できたよ……味噌汁だ」
「随分と変わってるな……」
「美味しいから飲んでみな、ほっとするよ」
そう進められるがままに、彼の作った味噌汁という物を口にする――なんだか、優しい味だった。
「美味しいよ」
「でしょ?」
そう飲みながら、昨日と変わらず雑談を交わした――
「ねえ、君の写真を撮ってもいいかな?」
「写真……?珍しいものを持ってるな」
「今まで出会ってきた人達を撮っているんだ――今回で13人目」
「皆見たことない人ばかりだな……」
「仕方ないよ、滅多に会えるものじゃないからね――でもだからこそ特別感を感じるんだろうね……撮るよー」
「ちょ、ちょっと、私はどうすればッ」
『――笑って』
乾いた音が鳴り響く、そのシャッター音は、空間を切り取るかのような……まるで映画フィルムの一コマを切り取ったかのような――そんな不思議な感覚を覚えた。
突如としてレンズを向けられ、されるがままにそのぎこちない笑みが保存されてしまった。
「撮るなら……もう少し待ってはくれないかい」
そう微笑む顔には……困ったような怒ったような――親しい人へと向ける優しい眼差しがあった――
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