第4話
「――で、結局その耳は殺人鬼によって破壊された政治家の物だったと」
「嗚呼、例の殺人鬼と考えられる」
「となると、愉快犯なんすかね」
「いいや、だとしたらおかしい」
「おかしい……自分にゃそれこそ、この行為を見せつけて反応を楽しんでいるようにしか見えませんけどね」
「だとしてもだ、愉快犯だとしてもこの犯人もとい“殺人鬼”が公になってないのに、どうして、急にこちらに目標を変えたのか――」
しかも間接的であり、その耳の持ち主とは全く関係の無い人物であり、本当に見当もつかない。
嫌がらせなのかとも思うけれども、警察と話して判明したのだが、今回のような事例は初めてとのことで、それまでの推理が崩されて一気に分からなくなる。
「今分かってる状況をまとめますと――」
猿山は立ち上がって、ホワイトボードに箇条書きで羅列してゆく。
・犯人は“殺人鬼”(可能性として大)
・殺人鬼は人格チップを破壊する愉快犯
・殺人鬼は政界の重鎮の素体を破壊――とそこで、星屑は止める。
「おい猿山君、人格チップの犯人と政治家襲撃犯はまだ同じ犯人だと分かってないぞ」
「ああ! そうでしたついつい熱くなってしまいましたので」
彼はそれを消すと、
○犯人は“殺人鬼”と呼称される
・実行犯A、実行犯B⇒いずれも仮名
・実行犯Aは人格チップを破壊する襲撃犯
・実行犯Bは政治家(特に名のある重役)の素体を破壊する襲撃犯
・実行犯A、Bは同一人物の可能性(まだ定かではない)
※以下はどちらか分からないので両名『殺人鬼』と仮称
・“殺人鬼”は生身の望月現世を殺害
「いや、まだ“可能性”の段階だ……まあ確率的には高いのだが……」
・望月現世は何者かにより生身が殺害
→しかし、素体がカプセルから出る条件として
「あれ先生……条件って何でしたっけ」
「ちょっとペンを貰おうか」
-管理者が直に実行プログラムを起動する必要がある
-必ず生体保存プロトコルの認可パスコードを5名以上の一級管理者から得なければいけない
-その一週間前に7つの認可申請を行わなければならない
⇒加えて、生身の素体がカプセルから出たとして、すぐ歩行したりはできない
→何ものかによって、望月現世が連れてこられた可能性アリ
「ってところだな……」
・彼女は自殺に見せかけた他殺→頸動脈が刺され死亡
→刃物の所持は規制がかけられている→義体には犯罪ができない→では第三者の素体による犯行→違法の賭博場であれば“可能性アリ”
「でもですよ? その違法の賭博場って噂でしかないんですよね」
「ああ、でも必ず存在する」
「それなりの証拠があるという事ですかい?」
「それを証拠に、刃物があっただろう、少なくとも……賭博場でなかろうとそれに類する場所は存在するというわけだ」
「うーむ、でも分からないですねえ、だとしたら賭博場も望んじゃいないっすよね?」
「そうだろうな……少なくとも違法行為をするのなら人目につかないようにしたいだろう、だとしたら、彼らもそう易々と姿を現さない……この推測が間違っていなければ……少なくともそう言った組織があるのなら、今頃大慌てだろう、あちらもあちらで彼を追っているかもしれない」
「だとしても、それじゃあ見つからないってのはおかしいっすよね、公にされてないにしろ、もう僕たちにゃ“噂程度”には入ってきているわけですし」
「そうだなあ、あの公安でも苦戦しているようだったし――」
ふと、中星からもらったバッチをポケットから取り出す。
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