第6話 クミのケース

 第2条 婚姻の解消

 この法は、母親たる女性を守るためのものである。よって、婚姻の解消は、女性に意志によってなされる。また、同居せざる夫がいる場合、女性から訴えがあれば刑法罰を課す。


 クミとジュン、そして光輝(こうき)の3人には2才の女の子「みつき」がいる。可愛いさかりの女の子だ。みつきはジュンの子である。光輝は、以前からの友人で最初から3人で暮らしていた。みつきの誕生で、3人で夫婦関係を結ぶことができ、婚姻届けをだした。みつきは、DNA鑑定でジュンの子と判定されたが、光輝は自分の子のように慈しんでいた。なにせ、名付け親は自分で、自分の名を別な呼び方にしただけなのだ。クミはジュンと光輝を分け隔てなく愛した。セックスしたい時は、二人ともベッドに呼び、両方を受け入れた。

 ところが、最近ジュンの様子がおかしい。友人と飲んでくると言って、一人で外出し、外泊するようになった。ジュンと光輝は同じ会社だが、現場が違うのでふだんは顔をあわすことはない。光輝は夕食の7時にもどってくるが、ジュンは夕食をとらない日々が続いた。

「光輝くん、ジュンくん最近おかしくない?」

「仕事忙しいみたいだよ。現場の進行が遅いとか言っていた。時々、事務所の仮眠部屋で寝ているらしいよ」

「そうなの? 別な女のところに行っているんじゃないよね」

「ジュンが浮気? そんな甲斐性ないと思うよ」

「そうよね。もし、そうだったら刑罰を受けるんだから」

「今度、話を聞いてみるよ」

「お願いね」

 数日後、光輝は会社でジュンと出会った。その際、よそよそしい態度をとるので、どうして家に帰ってこないのかを問い詰めた。

「ジュン、なんで家に帰ってこないんだよ」

「・・・・・・」

ジュンは無言だった。

「なんで黙ってんだよ。前は3人で何でも話し合ったじゃないか」

「・・・仕事忙しくて、家に帰るのが遅くなるからだよ」

とぶっきらぼうに答えた。

「いつもじゃないだろ。昨日は雨だったから現場を早く切り上げたというじゃないか」

「そんなに聞くなら、言うけど・・・家に帰りたくないんだよ」

「なんでだよ?」

「おまえがみつきといるからだよ」

「俺のせいか! みつきの父親は二人だって、お互い納得したじゃないか」

「でも、なついているのはおまえの方じゃないか。俺と遊んでいても、すぐおまえの方に行きたがるんだよ」

「まいったな。2才の女の子だよ。いずれパパ嫌いって言い出すじゃないか」

「でも、今はかわいいよ」

「そうだよ。かわいいよな。それにクミは次の子をほしがってる。俺もそう思っている。でも、おまえといっしょでないとうまくいかないんだよ。二人だけでいると、おまえの顔がうかんで、うまくいかない。クミもそうみたいだ。いつもジュンは? と聞いてくる。な、帰ってこいよ。このままでいくと、クミは別居罪でおまえを訴えるかもしれないぞ。そうしたらおまえは、塀の中。そうはしたくないんだよ」

「クミが俺のことを心配しているのか?」

「そうだよ。妬けるくらいな」

「そうか、・・・・今日は帰るよ」

「そうこなくちゃ、3人で子育てと子作りがんばろうぜ」

やっとジュンの顔に笑みがもどっていた。

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