第49話 勇者たちの帰還

1日休息のために魔王城で過ごした後、王国へ戻る。

ルイーサは別れを惜しんでいたが俺たちが帰らないと戦争が終わった事にならない。


「では、俺たちは行きます」

「別れるのは辛いけど、仕方がないよね。ヒロシが帰らないと戦争が終わらないし」

「もっと居たいけど、仕方がないな」

「それに、わたしは魔王としての敗戦処理もしないとならいから

ヒロシに構っている暇もないからね」


ルイーサは魔王とのしての責務を晴らすと言うが、表情は寂しげだった。


「博司君、ちょっとしか会えなかったけど、博司君が来た時の日本ってどうなってるの?」


美奈穂さんが聞いて来たので、俺がこの世界に来る前の事を話すと


「あれ、博司君ってわたしと同級生だったんだ」

「え、そなんですか?」

「そうだよ、わたしの誕生日は……」


美奈穂さん誕生日は俺と同じ年で俺の誕生日より1か月後だった。


「それじゃ、博司君の方がちょっとお兄さんなんだ。

でも、今のわたしは217歳だかろあ、わたしの方がかなり年上だね」

「そうですね」


200歳年上となると、かなりというか人間では無い年の差ではあるけど。


「なんだ、もっと別の時代から来たと思ったけどそうでもなかったんだ」

「俺も別の時代かと思いました」

「だったら、少しは話があったかもだけど、そろそろ行かないとね」

「それでは、お気をつけてお帰りくださいね」

「ヒロシたちがちゃんと王国に守る約束は守るからね」

「お姉ちゃんに勝ったって言う割に、思ったより普通なんだ」

「こら、レイラそんな事言っちゃダメだよ」


ルイーサが注意するけど、これが先代魔王が産んだルイーサの妹か。

見た目は10歳ぐらいだけど、ルイーサは見た目は17,8歳ぐらいで

300歳だから実年齢は150歳とかかな。

見た目は可愛いんだけどね。


「別にいいって。実際にさえないし」

「そうだとしても、妹が失礼な事を言ったので謝ります」

「別にいいって……」


俺はがそう言っても、ルイーサはレイラちゃんに頭を下げさせた。


「では、俺たちは行くけど、ルイーサも元気でな」

「ヒロシもね」

「おやおや、仲かよろしいですな」


美奈穂さんが茶々を入れるが、ルイーサは俺のスキルでこうなっているだけだから。


「スキルのせいですよ。美奈穂さんもお元気で」

「そうだね。気を付けてね」

「無事に王国に帰れるように、全軍に命令をしておいたよ。

都の兵は私胃の直轄兵だから、命令に背く兵はいないけど

他の兵も襲ってくることはないと思うから安心してね。

あと、これはわたしの角で作ったモンスター除け。

これでモンスターも寄ってこないよ」


ルイーサは自分の角で作ったモンスター除けをくれた。

ただ、真っ赤だったけどなんでだろう?


「ありがとう。それじゃ、俺たちは行きます」

「ヒロシ、じゃあね」

「ルイーサ、さよなら……」


ルイーサと別れて高速車に乗って、王国へと戻る。

高速車だと2日もあれば王国に戻るれが、先ずは下級魔族の街に行き

ファイエットさんを送り届けて、残った同行者と合流する。

後、高速車をパスの街に返さないといけない。

都の中は沿道に兵士が並んでいたが、俺たちを守るためで無事に都を抜けた。

都を出てからも、往路もほとんど襲われなかったが復路も平穏であった。


日が暮れる頃にパスの街つくが、女将さんの宿の宿に行く魔王に勝ったことを報告した。


「そうかい、無事でよかったよ。高速車はジョルダンに返してくれればいいよ」

「ありがとうございます」

「あんたたちのお陰でまた平和なったし、また宿が繁盛して欲しいね」


女将さんは笑って俺の背中をたたくけど、かなり痛いが我慢する。


「今夜もうちに泊まっていくかい」

「はい、そのつもりでした」

「戦争が終わった記念としてお代はいらないから、ゆっくりしていきな」

「ありがとうございます」


何時もなら理由をつけてただで泊まれないと言うけど、今日は何も言わない。

食事は以前と同じであるけど、女将さんの料理はおいしいし

これが最後になるのでよく味わった。


「それじゃ、気をつけてな」

「女将さんもお元気で」


パスの街を出て峠を越えて、下級魔族の街に到着した。

町に着くとジュルダンの屋敷へと行き、ファイエットを送り届けた。


「無事に帰ってきました」

「おかえり、ファイエット」


ジュルダンさんはファイエットさんを抱きしめて無事を確認しています。


「戻って来たと言う事は、終わったのですね」

「はい、魔王に勝ちました」


俺はジュルダンにあった事を話した。


「そうですか。これから下級魔族への差別がなくなればよいのですが」

「そうなって欲しいですね」


ルイーサに平等にして欲しいと頼んだので、そうなるように望むよ。


「今からですと境の門に到着すると夜になるますが、どうしますか?」

「早く帰りたいですが、今夜はここに泊まります」

「わかりました。大したもてなしは出来ませんが、今夜はゆっくりしてください」


今夜はジュルダンさんの所に泊まったが、ファイエットさんの事や

下級魔族も平等になったら良いなと言う話をしたのであった。


**********


 翌朝、ジュルダンさんとファイエットさん、そして街の皆に見送られて街を立った。

門の手前までは高速車と馬車で移動するが、さらにルイーサのモンスター除けのお陰で

苦労させられたモンスターと戦わずに移動できたので境の門まではすぐであった。


「着きました」

「あるりがとうございます。ジュルダンさんに俺たちが無事に戻ったとお伝えください」

「はい、お伝えします」


御者にそう伝えると、荷物をまとめるのと同時に列を整える。

そして、境の門を出て……王国に帰還したのであった。


門を出ると、兵たちが整列して俺たちを迎えていた。


「勇者者様たちが無事に帰還した!」


軍の司令がそう言うと同意に、兵士たちからも歓声があがり森にこだました。

その声に驚いて、鳥たちも飛び立ったが、戦争が終わったので仕方がない。

兵士たちは道を作り、司令に先導されて、司令のテントに行くとが

他の同行者と騎士たちはここでお別れだ。


「俺たちはここでお別れだが、魔王を倒してくれてありがとうございます」

「博司様、果歩様、マチルダ様のお陰で王国……いえ、人類が救われました」


オーガストさんとメイさんほか、騎士たちが跪く。

ここまでしなくてもと思ったが、これが騎士の儀礼なので受け入れる。


「同行ありがとうございます。このために俺たちが召喚されましたので」

「これでわたしたちのお役目御免の」

「あまり……役に立たなかったですが……戦いが終わってよかったです」


俺たちは騎士たちに一言づつ言葉を贈って、テントに入ったが入ったのは俺たち3人だけ。


「勇者様、ありがとうございます。魔王を倒しただけなので

公式な降伏ではありませんが、既に降伏を書状が届いています。

ただ、後の事は我々と政務官が行いますので、勇者様たちの役目は終わりました。

あとは勇者様を王都まで無事に送り届けるだけでです」

「わかりました」

「お疲れでしょうから、本日はお休みください。出発は明日の朝になります」


俺たちが休んでいる間に、降伏する書状が届いていたので俺たちが勝った事は伝わっていた。

だから俺たちを整列して待っていたのだ。

テントを見ると、兵士たちは歌え踊れの大騒ぎ。

戦争が終わったので、皆喜んでいる。

ただ、俺たちはその騒ぎが聞けない離れたテントへ行って休んだのであった。


**********


 翌日、野営地から王都へと戻る。

俺たちはこちらでも高速車に乗り、出来るだけ早く王都へ戻る。


「勇者様が王都に戻れる。全員敬礼!」


整列した兵士たちに見送られて俺たちは野営地を出発。


通常ならば王都まで16日はかかるが、高速車ならば10日ぐらいで到着する事が出来る。

ただ、王都へ戻る道すがらお世話になった人たちに挨拶をしていく。


 まずはパピーの街の紙屋さん。

紙屋さんに戦いが終わった事を伝えると、喜んでくれた。

あと、使い心地のよいトイレットペーパーの開発はあまり時が経ってないので

あまり進んではいないが、それでも繊維を細かくできる方法をある程度分かって来たそうだ。

次に畳屋さんであるが、畳屋さんは残念ながら留守であった。

ただ、グレイに頼んで俺たちが来た事を書置きしておいたけど……文字って読めるかな?

そして、この日はパピーに宿泊した。


 次は焼きポトゥリの街。

最初に来た時は大型の窯が破壊されていたが、修理が終わっていた。

ただ、まだ窯に火を入れる事は出来ないそうだが、そろそろ試し焼きが出来るらしい。

窯はまだ使えないが、職人さんが便器を試作していたがこれならば焼けば使えそう。

あとは実際に焼いて、うまく焼けるかどうかを試すしかないがこれには立ち会えない。

ただ、魔王領では便器があったから、魔王領の職人と交流知れば完成させれるとはお思う。


 そして、宿場町に到着。

ここまで来ればもうすぐ王都に着くが、ここでも一休み。

試作トイレがどうなったか気になってたが、宿屋の外にトイレが出来ていた。


「やはり、トイレがあるのは良いですね」


宿のご主人もトイレが出来て、排せつ物の掃除が楽なったそうだ。

そして、部屋の中の臭いもなくなったそうだ。

また、川の上に作ったので、そのまま流れる仕組みだ。


「今まで当り前だったから気になってなかったですが、結構臭ってたのですね」


宿のご主人も排泄を部屋でする事が普通だったから臭いを気にしてなかったが

トイレでする様になったら、臭いがなくなって驚いたそうだ。


「それは良かったですね」

「あとウィルダ様もトイレ作りにのめりこんで、改良を考えてます」


ウィルダさんもトイレ作りに嵌ったらしく、改良を考えているそうで。

改良と言うのは詳しくはわからないけど、溜まったものをうまく処理する方法らしい。

魔王領では水洗やスライムのよる浄化をしてたけど、ウィルダさんはどうするんだろう。

肥料にする方法を紹介したけど、農学者であるウィルダさんだから肥料作りを

安全かつ効率的にする方法かな。

宿場町は王都の近くだから国王に謁見してから、会いに行こう。


 翌日、宿場を出て王都へ向かう。

朝に宿場を出れば昼前には王都について、そのまま謁見ができる。

そして、聖剣を返却すると……俺たちがこの世界に残れるカウントダウンが始まる。

最長で1か月であるが、実際には丸々1か月ではない。

ただ、残れるギリギリまでは残る事にする。


 この世界には残らないと決めているが……心の中ではまだ王都に行きたくない。

ただ、足止めするする理由もなく、早く戦いが終わった事を国王に伝えないけない。

俺たちが帰還した事は、早馬によって王都へ伝えられていて俺たちが宿場町まで来てる事も報告されている。

なので、王都では俺たちがいつ来るか、今か今かと待ち構えている。

だから、王都に向かわないとならないのだ。


 王都の入口である外壁の門が見えてきて、跳ね橋を渡ると……大勢の人たちが俺たちを出迎えた。

通りには黒山の人だかりで、建物からは紙吹雪が舞ている。

歓声の他に、太鼓や笛を鳴らしたり、歌を歌い踊っている人もいる。

正に戦勝に勝利した事を祝っている。


 俺たちを乗せた高速車はそのまま王城に向かっているが、王城の周りもすごい人だ。

本来ならば王城周辺は普段は許可がないと集会などが出来ないが、今日は特別に許されている。

兵士たちが道を塞がないように、一生懸命人を押さえているがそれぐらい皆興奮してる。

王城の濠を渡る跳ね橋を渡り、城内に入ると跳ね橋は上げれた。


 城に入ると、国王との謁見。

謁見に関しては最初の時と一緒であるが、今回はそこまで厳粛ではないようだ。

国王からの勝利祝いと労いの言葉、そして、聖剣の返却がなされたのであった。


「お疲れ様でした。外はすごい人なので、本日は従者の方々と共に城内でお休みください」


 外はあまりの人だかりで、逆に危険なので城内に用意された部屋で過ごしたが

騒ぎは1日で収まらず、戦勝記念として3日3晩の大騒ぎとなったが4日目なると

騒ぎ疲れたのか、逆に静かになったので俺たちは城から最初に用意されたそれぞれの屋敷へと戻ったのであった。


 屋敷に戻った後は、特にする事もないがギリギリまで残るのでトイレ作りをする。

ウィルダさんに会いにいくつもちで会ったが、何かあったら困るので

許可をもらって、宿場町から木材屋の親方とウィルダさんを呼んで屋敷にトイレを作る。

屋敷のトイレは俺が出発前に作った簡易的な物であったが、今度は本格的な物を作る。

穴を掘って、排せつ物を貯める槽を作るがこれはウィルダさんが考えた方式で作る。

ウィルダさんは親方さんと色々考えて、火の魔石を1つ埋めてその上に石を敷き詰める。

その石を火の魔石で熱するが、その熱で細菌が死ぬ温度の75度以上になるまで熱するそうだ。

 

 温度の単位は違うけど、翻訳機能でちゃんと伝わっている。

火の魔法1つあれば冬でも十分その温度を維持できるそうだ。

さらに熱の循環を利用して、自動的に攪拌できる装置も作ったそうだ。

ハムスターの滑車を横にして、熱でそれを回転せて金属のへらでかき混ぜるそうだ。

こんな物でかき回せるのかと思ったけど、意外とできるそうだ。

攪拌装置は万遍なくかき回すため、複数取り付けた。

音が多少するけど、藁と布を上部に敷いて少しは静かになるらしい。


「魔王領にはトイレがあったそうだけど、それはどんな仕組みだったんだ?」


ウィルダさんに聞かれたので、魔王領のトイレについて話した。


「なるほど、山にいるスライムはまた別の種類なのか」

「はい、そのようです。ただ、瘴気がないと生きられないので王国には連れて来られないそうです」

「そうか、それは残念。水で流す方法も、水が少ない王都では難しいね」

「そうなんですよね。なので、ウィルダさんも色々な方法を考えてください」

「そうするよ。この方法もまだ短期でしか試してないし、問題も多い。

回転部分は消耗するし、交換するにも色々問題もあるからね。

ただ、それでも臭いが消えて、短い期間で肥料にできたから考え方は悪くないみたいだよ」


 学者であるウィルダさんは研究が出来るのでとても嬉しそうだ。


「あと、姉さんが無事に帰って来て良かった。お礼を言うよ」

「こちらこそ、ドゥニーズさんの障壁のお陰で戦いが楽になりました」

「そうかありがとう。姉さんは帰ったら、早速僕が作ったワインを飲んだけど

今までお酒を我慢したせいか、一気に樽を開けて何日も酔い潰れて寝てるよ」

「そ、そうですか」


ドゥニーズさんはお酒好きであるが、魔王をお酒を我慢してたそうだ。

だから、その反動で一気に樽を開けてしまったそうだけど……すごいな。


「姉さんもヒロシと旅が出来て良かったと言ってるよ」

「あまり話してなかったのですが、そう言って頂きありがとうです」

「この世界を救うために無理やり来たのに、ちゃんと魔王を倒してくれたからぼくからもお礼を言うよ」


ウィルダさんはそう言って頭を下げる。

そして、親方たちとトイレを作るのであった。


 そんなこんなで、タイムリミットまであと3日となったがそろそろ元の世界に戻り事した。

丸々1か月まであと4日あるが、最後の1日までいるとこの世界に残る事に

なるそうなので3日後にこの世界から去る事になる。

グレイは王都に戻ってからはあまり顔を出さなかったが、グレイは王国に仕える

魔法使いなので、その仕事が忙しいらしい。

ただ、俺たちがこの世界を去ると言う事で、儀式が行われる日まで一緒に居る事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る