第48話 魔王(ルイーサ)への頼み事

部屋に俺と魔王……いや、ルイーサが残された。

ついさっきまで敵だったけど、今は俺のスキルで従属をしている。

従属と言っても、奴隷ではないないので束縛まではしない。

その代わり、俺の頼み事は何でも聞いてくれるらしい。

なので、俺は世界の平和と人間の国にトイレの普及を頼む事にした。


「魔王……いや、ルイーサ、俺の言う事は何でも聞くそうだから

これから言う事を俺が元雄世界に帰ってからも守ってくれ」

「うん、博司の頼み事だからね」


ルイーサは快く承諾するが、スキルの効果なのかもしれない。

そうだとしても俺の頼みを聞いてくれるのだから構わない。


「まずはこの世界の平和を守る事。

せめてルイーサが生きている間は人間との戦争をしない事」


最初はルイーサが魔王でいる間にしようと思ったが、戦いに負けたので

魔王の座を降りるかもしれないので、生きている間にした。


「次は人間の国に俺が使えるような綺麗で清潔なトイレを整備、普及させる事。

もし、何らかの形で俺たちの世界から来た時、トイレが無かったら困るからな」


ただのトイレではなく俺が使える綺麗で清潔なトイレとしたのは

トイレだけならば簡単に作れるけど、特に日本からこの世界に来た場合

綺麗で清潔なトイレじゃなければトイレがあっても使えないと思う。

そして、俺が使えるって事はほぼ全ての人が使えるはず。


「わかったけど、他にはないのかな?」


ルイーサは他にないかと聞くが、俺がすぐに思いついたのはこれだけ。

ただ、他にもあるから考えてみたら……俺たちが無事に帰れる事かな。

魔王に勝ったとはいえ、まだ王国に帰還しなければならない。

戦闘は殆どなかったが、魔王領を出るまでは戦争継続派が襲ってくる可能性は十分にある。

つまり、俺たちが魔王領を無事に出るまでは安心はできない訳だ。


「そうだな、俺たち全員が無事に魔王領を出る事かな。

もし、俺たちに何かあったら戦争が終わらないかもしれないし

俺たち……つまり、俺と果歩、マチルダさんも無事に元の世界に戻りたいからね」

「わかった。無事に博司たちを王国に届けるよ。頼み事はそれだけかな?」


ルイーサはさらに聞いて来たが、今の所自分の願いだけだな。

ここまで下級魔族に助けられた訳だから、下級魔族を平等に扱って欲しいかも。

そして、平和だけじゃなくて人間との交流もして欲しいな。


「あとは……下級魔族を平等の扱ってほしいかな。そして、平和だけじゃなくて

お互いの理解を深めるために、人間との交流もして欲しいかな」

「うん。わかった」

「あとは……」


俺は他にないか考えてみるが、これだけあればひとまずいいか。

あ、でもこれがあったかな。


「そうだ、ルイーサ家族と仲良くする事。今も仲がいいから問題はないかもしれないけど」

「それに関しては大丈夫だよ」

「そうだな、それじゃ他に何かないかな……」


思いつかないといいながら、次々とでてくがこれも頼んでおくかな。


「グレイと仲良くなってくれ。素直じゃない所もあるが、いい奴だから」

「わかったけど、グレイちゃんが仲良くしてくれるかな」


さっき子供っぽい口喧嘩をしてたけど、逆に言えばあれだけ言えるなら仲良くできるはず。

むしろ、気が合うんじゃないかと思う。


「俺もグレイに頼んでおくよ。ルイーサとグレイは仲良くなれるさ」

「そうだね。でも、なんか一杯頼み事が多いね。別にいいんだけど」


確かにこのままだとどんどん増えていくだけから、そろそろ終わりにするかな

なので、最後の願いを考えるけど……これでいいか。


「最後の願いだけど、俺の事を忘れないでくれ」


なんかキザな感じがするけど、果歩やマチルダさんには悪いけど

ルイーサは俺の事を忘れないで欲しいと思った。


「ヒロシ……そんな事言わなくても忘れないよ。だって、わたしのおっぱいに

家族以外で初めてさわった男の人だし」


ルイーサはそう言うと、俺に抱きついてきたてそのルイーサのおっぱいが俺にあたる。


「ル、ルイーサ、胸があったてる」

「あててるのよ。それに、ヒロシ以外の皆の事はわすれないよ。

だって、わたしに勝ったんだから、忘れっこないって」

「そうか」

「でも、ヒロシとはここを出たら会えないからね。

わたしは魔王だから、責任は大臣たちに取らせるといっても

魔王であるわたしが何も責任を取らない訳でじゃないからね。

直接会ったのは今日だけだけど、ヒロシたちの事はずっと見てたからね」

「そ、そなんだ」


ルイーサは使い魔をいわば監視ドローンのように飛ばして、俺たちをみてたとか。

流石にプライバシーにかかわる所までは見てないけど。


「だから、ヒロシたちが氷でわたしを凍らすことは分かったけど

実際にやられると、氷って硬いんだね。

簡単に出られると思ったけど、無理だった。

あと、あんなに沢山水を出されると思わなかった」


ルイーサは俺が氷の作戦を使う事は知っていたそうだ。

ただ、ルイーサならばすぐに氷から出られると思ったけど、果歩が水を出し過ぎたて

予想外に水量があり溺れかけてしまって、対応ができなかったそうだ。

そして、氷も背丈ぐらいの厚さがあると、簡単に割れずに出るのに苦労しそうだ。

ただ、俺からしたら氷から抜け出す事が出来たこと自体が十分にすごい。


「負けちゃったのは仕方がないかな。魔王として敗戦の責任を取るね」

「それが上に立つものの責任だからな……」

「だから、お別れ前にこれをしてあげる」


ルイーザがそう言うと、ルイーザの唇が俺の頬に触れたのであった。


「えーと、これは」

「深い意味はないよ、お別れの挨拶」

「そうか、わかった」


魔族の挨拶にキスの文化があると思うないので、このキスは挨拶以外の意味が

あるだろうけど、それを言うのは野暮だから何も言わない。


「それじゃ、わたしたちも奥へいこうか。今日は疲れたからゆっくり休もうね」

「わかった」


ルイーサは俺から離れると、皆がいる奥の部屋へと向かったのであった。



********


ルイーサと戦った後は、美味しい食事を食べて風呂に入りゆっくり休んだ。

そして、俺とグレイはやはり同室であったが、もう何もいわない。

俺とグレイが一緒に居られる期間は限られているからだ。

ただ、王都に帰って聖剣を国王に返すまではカウントダウンは始まらないらしい。

とはいえ、魔王領に同行してきた人たちや軍が俺たちの帰還をまっているから

のんびりする訳も行かないが、それでももう1日休みを作って戻る事にした。


「だから博司様はわたしの物なのです!」

「ヒロシはわたしのご主人様なの!」

「ぽっとで戦いに負けた魔王が何を言っているです。

従者歴としたらわたしの方が長いのです」

「従者歴長いと言っても数か月だけでしょ」

「1日、2日のぽっとでのよわよわ魔王に言われたないです」

「わたしは弱くないの、ちょっと油断しただけだからね」

「それが弱いのです。現に負けたじゃないですか」

「だって、ヒロシのお願いだからしかたがないでしょ」

「負けた事には変わりないです」

「ぐぬぬ」


グレイとルイーサは相変わらず子供ぽい喧嘩をしてるけど、見てる分には楽しい。

喧嘩の原因が俺だけど、なんか主人公ぽいな。


「2人とも仲良くするんだ」

「うん、わかった」


ルイーサはスキルの効果で素直に返事をするがグレイの方は


「わたしはぽっと出の魔王とは仲良くしないのです」

「グレイ、ルイーサが俺と一緒に居られるのは今日ぐらいで、明日にはここを

立つんだから今日ぐらいいだろ

グレイは王都に戻っても、さらに1か月は一緒に居られるだろ」

「そうだしたね。ここは本従者の余裕と言うのを見せてあげないといけません」


本従者と言う言葉があるかは知らないが、多分今考えただろう。


「そうだよ、グレイちゃん。それにわたしはヒロシとキスしたんだかららね」


キスといっても、頬だけねど。


「それをいった、わたしの方が先にしましたよ」

「ヒロシ、本当なの!?」


確かに、グレイも俺の頬にキスをしてきたけど……意味合い的にグレイの方が

本気というか、結婚する意志のある相手にしかキスしない文化ははず……。


「確かにしたけど、頬にだけどな」

「なんだ、わたしと一緒じゃない」

「でも、わたしの方が先です」

「頬には変わりないでしょ」

「そうですが、口にしたら婚約しないといけませんし。

頬ならば、挨拶ですから問題がないのです」


グレイはこういけど、キスをしたら結婚すると言うのは半分本当で半分嘘だったってことか。

でも、俺とグレイは結婚できないし、グレイには悪いけどやはり俺はこの世界には残れない。

トイレを普及する所はみて見たけど、やはり俺は元の世界が好きだから。


「ねえ、ヒロシは元の世界に帰るの?」


ルイーサも聞いて来たけど、俺ははっきりと元の世界に帰ると言った。


「そうか、仕方がないよね……」


ルイーサは寂しそうに言うけど、仕方がない。

ただ、グレイも悲しい顔をしていたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る