第40話 魔王との戦い

 ブルーナさんに案内されて、城の中にある闘技場に着く。

闘技場といっても、小さい闘技場で説明しにくいが

テニスコート2面分ぐらいの広さかな。

とにかく、そんなに広くない闘技場での戦いになる。


「あの出口の先が闘技場となりますが、魔王様は既にお待ちになっております。

わたくしは案内だけですので、これで失礼いたします」


ブルーナさんは頭を下げて去って行き、俺たちだけか残された。

ついに魔王との戦いとなるが、緊張からなのか誰も言葉を発しない。

ここは俺が主人公ぽく何か言う場面かもしれないが……いざ何か言おうとしても

言葉が浮かばない。

良く映画でも漫画でもアニメでも、最後の戦いの前に何か言葉をかけるけど

創作でも良くこの場面で言葉思い浮かぶと思う。

あと、実際の話でも誰かの何気ない一言で鼓舞して、負けてていた

試合に勝ったなんてこともあるけど、そんななにげない言葉すら出てこない。


「これから魔王の戦いだけど、勝って無事に帰るわよ」

「そ、そうですね……この戦いに勝てば、わたしたちも……元の世界に帰れます」

「そうですね、博司様たちを無事に帰るのです!」

「そうですね!」


マチルダさんと果歩、グレイの言葉でみな気合がはいる。

俺も何か一言を思ったが、結局、何も浮かばない。


「さ、博司、どうやって魔王と戦うか考えなさい」


マチルダさんに背中を叩かれるが、作戦なんて考えてない。


「作戦なんかないですよ。ただ、戦う場所が狭いので

全員で一斉にと言う訳にもいかないです。それに、魔王がどう戦うかは

わかりませんが、多分、魔法かなにかで攻撃してくると思う」

「そ、そうですね。事前に先代勇者の戦いを読んだのですが……やはり魔王は

魔法と言いますか……魔力を使って攻撃するみたいです……」

「そうなると、ドゥニーズさんの障壁で攻撃を防ぎながら、接近するか

魔法を撃ちこむかですかね」

「でも、魔王にそんな簡単に魔法攻撃があるとは思わないのです」

「そういえば、魔王は聖剣以外ではダメージが与えられないようだから

魔法がそもそも効かないと思うし、あくまでも魔王をひるませるためかな」

「となると、結局は博司しか魔王を倒せない訳ね」

「そうなるか」


聖剣でしか魔王にダメージが与えれないとなると、聖剣を持っている

俺しか魔王を倒す事が出来ないって事なるけど……。

そういえば、聖剣って俺以外が使うとどうなるんだろう。


「聖剣を俺以外が使うとどうなるんだろうな」

「多分ですが、持つ事も出来ないと思います。試しに、聖剣を置いてください」

「わかった」


ルアナさんに言われて、聖剣を鞘に入れたまま置くとルアナさんが聖剣を

持ち上げようとするが、全く持ち上がらない。


「だめです、持ち上げる事すらできません」

「片手で剣を振れるルアナさんが持てないって事は、本当に俺にしか持てなのかな?

でも、王様から授かる時は普通に側近の人が持ってたけどな」

「聖剣は勇者が持つと、魔王を倒すまでは他の人が持てなくなると聞いた事があるのです」

「そうなんだ。となると、魔王を倒せるのは俺だけって事か……」

「そうなるのです。なので、博司様がんばってくださいのです」


考えてみたら、従属のスキルを取得した時点で、こうなると決まってたかな。

なんとか魔王を従属できるレベルになっているけど、スキルが魔王に

効果があるかもわからない。

ただ、先代の勇者は誘惑のスキルでギリギリのところで勝ったと言うから

きっと普通に戦って勝つのは厳しいのだろうな。


「それじゃ、魔王と戦いに行くか」

「最初はひとまず全員で行って、顔合わせでもしましょうか」

「そ、そうですね……」

「では、行くぞ」


俺たちは全員で闘技場へ出ていくと、魔王がスクール水着ぽい衣装にマントと言う

出で立ちで俺たちを待ち構えていた。


「やっと来たか、人間の勇者達。怖気ついて出てこないと思ったぞ」

「ここまで来ましたから、今更怖気つく事はないです」

「そうか、わかった。では、戦うとしよう。戦い方は自由だ。

何人でかかって来ても構わぬ。勝敗は我が負けたと認めるか

お主らが負けを認めたらかだ」

「わかりました」

「では始めるぞ」


ついに魔王との戦いが始まったが、まずは一斉に各種攻撃魔法を放ってみたが

飛んで行った炎、氷、石は魔王の数メートル手前で消えていったが

見えない魔法防御があり、やはり簡単には攻撃は当たらないようだ。


今度は魔王が攻撃態勢入ったが、魔力貯めているらしくすぐに攻撃をしてこない。

その間に、ドゥニーズさんに障壁を展開してもらう。

そして、魔王から魔法と言うか魔力による弾を数発撃ち込むが

障壁で全て防がれたが、ドゥニーズは


「数発魔力を撃ち込まれただけで、障壁の耐久力が半減してます。

また数発撃ち込まれたら、障壁が破壊されしまいますが

わたしの障壁を破壊されるのは初めての事です」


と言って、青ざめた。

つまり、魔王の力はそこまで凄いと言う事だ。


「破壊されてもまた展開する事は出来ますが、魔力には限界がありますので

出来るだけ早く決着は着けた方が良さそうです」


ハーフエルフのドゥニーズさんの魔力は、魔族と同等であるが

それでも、障壁を出すにはそれなりの魔力が必要になるので、限界はある。

ただ、障壁があるとこちらからの攻撃も出来ないため、魔王を攻撃するには

障壁を突破するか、消さないといけない。


「魔法での遠距離攻撃は無効となると、接近するしかないようだけど

簡単に近づけるかどうか……」


魔王との距離は20mぐらい離れている。

その間合いをどう縮めていくだけど、魔王は魔力の弾を撃ってくるので

やたらに突っ込んでいく訳にはいかない。

しかも、その魔力の弾は一度も破壊された事がないドゥニーズさんの

障壁を破壊できるほどの威力なので、魔法の効果の防御力が

あるとはいえ1発でも食らったらおしまいだろう。

ルアナさんの鎧にはさらに強う魔法が施されており、かなり強い魔力や魔法に

耐えられる特別な物であるが、魔王の攻撃にどれだけ耐えられるかはわからない。


「どうした、あの程度で怯えているのか、情けない」


魔王は煽ってくるが、思った以上の力でビビっているのは確かだ。

正直、作戦なんてないし、防御面に関してはドゥニーズさんの障壁しかない。

とはいえ、こちらから何もしない訳ではないので、今度はマチルダさんのスキルを

ファイエットさんの矢に付与して、魔王に向かって矢を射る。


 放った矢は魔王にまっすぐ飛んでいくが、魔王に命中する事なく

やはり数m手前で弾かれる。

それ見ても、ファイエットさんは何度も矢を放つが、やはり結果は同じ。

ただ、同じ場所に矢を射続けると、5射目で矢は弾かれずにそのまま魔王

目掛けて飛んで行ったが、魔王の違和感があったのか素早く身をかわしたが

それでも完全に避ける事は出来ず、魔王の腕に矢が突き刺さった。


「ぐっ……」


マチルダさんのスキルを施した矢は魔王に効果があるようだ。

それを見て、ファイエットはさらに矢を射るが、数m手前で矢が落ちた。

連続して同じところに矢を射り、わずかに魔法防御に穴が開いて

魔王に命中しただけで、すぐに元に戻ったと言った所か。


 魔王も痛みの表情をしているが、刺さった矢を抜くと魔力で傷を

完全に回復したが、魔王だから簡単に傷がを治し回復ができるか。

そうなると、魔王を攻撃で倒すとなると、連続した打撃を与えないとならないか。

俺たちは与えれたスキルと聖剣だけしかなく、いわゆる伝説の装備といった

物はなくて防御面は本当にないため、攻撃こそ最大の防御と言った感じ。

なので、こちら側から攻めるとなると、接近する方法を差がなさないとならない。


「ここに来て防御面の弱さが仇になったかな」

「今まではわたしの障壁で十分でしたからね」

「ドゥニーズさんの障壁は最強と思っていましたが、流石魔王と言った所かな」

「あの、ドゥニーズさんの障壁は鎧にも施すことが出来ますか?」


ルアナさんがドゥニーズさんに質問してきたが


「やった事はないですが、もしかしてできるかもしれません」


と答えた。


「それならば、盾といいますか、鎧に施して防御力を上げれば魔王に接近できると思います」

「出来るとは思うけど、どれぐらい持つかわからないからなぁ」

「博司様、そんな事言ってたら何もできませんよ」

「確かにそうだけど、無謀に突っ込むだけな気がするし」

「確かにそうですが……」

「せめて素早く動ければいいんだど、ハイダッシュの魔法って他人にかけれるのかな?」

「ハイダッシュの魔法は本人以外にもかけられるのです」


グレイが言うには、ハイダッシュは補助系の魔法で他人にもかけらるそうだ。

そうとわかればルアナさんにハイダッシュの魔法をかけることいしたが

ハイダッシュは30秒間だけ素早だがますので、魔王へ接近しても1撃で倒す事は

不可能だから戻ってこないとならない。


「博司様も一緒に行って、再び魔法をかけて戻ればいいだけです。

さらに言えば、博司様が従属のスキルを魔王にかければいいのです」


確かに、グレイの言う通りであるが、スキルが成功するかはわからない。

レベル的にギリギリな所あるが、スキルを使える距離まで近づけるもわからない。

が、ここまで来たら何でもやるしかないので、覚悟を決める。


「ルアナさんの剣にマチルダさんのスキルとドゥニーズさんの障壁を施す。

そして、ハイダッシュの魔法を使って、俺とルアナさんで魔王に接近するが

聖剣で防御を破壊できると思うので、防御を破壊し魔王を攻撃するって作戦か」

「うまく行かなくても、やるしかないわね」

「緊張しますが、ここまで来たので覚悟を決めます」


ルアナさんは顔を領てで叩いて気合を入れる。

俺も深呼吸をして、出来るだけ落ち着かせるがやはり緊張はする。

今までの戦いは、運で勝って来ただけで実力じゃないと言っていい。

正直、他の勇者には悪いぐらい楽に魔王の所に来ている。

ただ、最後の戦いだけあって、やはり簡単いは行かないがやるしかない。


 ドゥニーズさんの障壁をルアナさんの鎧と俺の帷子と皮の鎧に施す。

俺たちに施された障壁は、本人には色がついてるように見えて

まずは緑があるが、ダメージ受けると色が変わり赤になり1、2発受けると

破壊されるそうだけど、こんな事も出来たのか。

そして、ルアナさんの剣にマチルダさんのスキルを施す。


「では、行ってきます」

「博司、少しは勇者らしく戦いなさいよ」

「わかってるますよ。では、ハイダッシュの魔法をかけますね」

「お願いします」

「かけたら俺と同時にスタートしますよ」


俺は自分とルアナさんにハイダッシュの魔法をかけると、俺の合図とともに

魔王をめがけて走り出したのであった。

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