第39話 魔王の城

用意された宿に3泊して体力を回復させてついに魔王の戦いになる。

前日もちゃんと眠れて、決戦の前であるがなんか気分もいい。

正直、戦って勝てるかわからないが、ここまで来たらやるしかない。


「博司様……おはようございます……」


グレイが隣のベッドから起きるが、結局グレイは俺に部屋に3泊した。

初日にあんなことがあったけど、吹っ切れというよりは素直に甘えるようになった。


 グレイはベッドからでて、後ろ向きであるが着替えをし始めるが

俺の前でも堂々と着替えるようになったのはどうなんだ……。


「博司様、グレイの服しりませんか?」

「知る訳ないだろ。自分の脱いだ服はちゃんと管理しないと駄目だろ」

「上はあるのですが、スカートがないのです。博司様、ご使用になったら怒らないので正直に言ってください」

「何に使ったかは聞かないが、グレイの服は触ってないぞ」

「そうなんですか、なんか残念です」

「何が残念が知らないが、部屋の中で脱いだなら部屋の中にあるだろ」

「そうですね」


グレイはパンツと下着姿で歩くが、今更だがこの世界にはパンツとブラジャーなどの

各種下着はちゃんとある。

生地の質はあまりよくないが、きっと先代の勇者が伝えたのであろう。


「んー、ベッドに下にありました。何でこんな所にあるんでしょう」

「俺に聞くな。しかし、同じ服ばかり着ているが洗濯しなくていいのか?」

「いつも着ている服は魔法が施されていて、ある程度破れても元に戻りますし

1晩で汚れやにおいも落ちて、ほっといても綺麗になるのです」

「そんなすごいものだったのか」

「さらに、魔法の効果である程度の物理防御力や魔法防御効果もあるのです」

「へー、そうだったのか」


最終決戦前に服の秘密を知ったが、だったらその服を俺に授けてくれれば

よかったのにと言ったら


「え、博司様の服もそうなっているはずですよ?」

「え?」

「え?」


またこのパターンだけど、もしかしてこれも王様がちゃんと説明してくれたのか?


「博司様が身につける物にも同様の物が付与されてると

国王陛下が説明しているはずですが……これも聞いてなったんですね」

「……はい」

「やっぱりそうですか……。博司様の服も物理と魔法の防御効果と汚れやにおいが

落ちる効果があるのです。

一生懸命、洗濯をしてたので不思議でしたが、博司様の世界の風習と思って黙っていました」


風習と言えば風習だけど、もしかして俺って無駄な事してたの?

そういえば、魔王領に来てから洗濯をしてないけど、その割に着る物が

匂ったりするどころか、戦いで汚れても1晩で綺麗になってたな。

この事に最終決戦前に気づいてよかったかもしれない。


「魔王との戦いの前に知れてよかったよ」

「そうですか。物理と魔法の防御効果があると言っても、魔王相手では気休め程度です」

「この程度では、魔王の攻撃を食らったらひとたまりもないなか」

「多少の攻撃なら聖剣で防ぐ事が出来ますよ」

「え?」

「……またですか」


流石にグレイが呆れるが、仕方がない。


「聖剣で防御もできるのか?」

「出来るますよ。やり方は同じく念じればよいですが、練習しておきます?」

「そうしたいけど、どこでやるんだ?」

「この部屋の広さならばできない事もないにですが……ドゥニーズさんに

頼んで結界を会ってもらった方が良いですね」

「部屋の中でやるのか?」

「時間があまりないですし、ドゥニーズさんの結界内大丈夫でしょ」

「確か、中庭が広かったからそこで結界を張ってやればいいんじゃないか?」

「敵に手の内を……知られてもよいですか、どうせばれますしね」

「それじゃ行こうか」


俺たちが着替えて、ドゥニーズさんの部屋へ行ことしたらドアをノックする音がした。


「どなたですか?」

「メイドですが、魔王様のお城へ行きますので装備を整えてロビーへ来てください。

他のお荷物は部屋に置いといてください」

「え、もうそんな時間ですか?」

「予定より早まりました。お食事は携帯食を要しましたので移動の馬車内で食べてください」

「わかりました」


予定では朝食を食べて、しばらくしてから魔王の城へ向かって最終決戦となる予定だったが

時間で言えば3時間程早まったが、仕方がない。


装備と言っても、俺は聖剣ぐらいしかないし、グレイも普段の格好が戦闘服だ。


「では、博司様いきましょう」

「そうだな」


俺は両手で頬を叩いて気合を入れて、集合場所のロビーへと向かった。


********


宿から馬車で魔王城へ向かうが、この馬車は魔王が用意した物だ。

車でなく、馬車と言うのは馬型の魔物が曳いているため馬車と呼んでいる。

馬車の中では用意した携帯食……要は弁当だけど中身はおにぎりとおしんこに

緑茶がついてたが、これは間違いなく日本人の勇者が持ち込んだものだな。


「なんか、白い粒々の塊に黒いものが巻いてありますがなんですか?」


グレイは米がわからないが、王国には米はあることはあるが

いうならばパエリアやピラフにして食べるので、日本の様に炊いた米を

そのまま食べる訳ではないため、おにぎりを知らない海がないので海苔もしらない。

ただ、海がない魔王領に何故、海苔があるかは知らないが、川海苔はあるけど

海海苔と比べて、量が少なくて焼きのりに出来るほどじゃなかったような。

ただ、この際海苔については考えない事にする。


「それは海苔という水の中にある草を加工したものだ」

「そうなんですか?王国では見た事ないです」

「俺の居た国で食べる物だけど、俺も魔王領にあるとは思わなかった」

「そうなんですか」

「それを巻いてると、手をあまり汚さず食べれるぞ」

「なるほど、掴む場所なのですね」


それがわかったら、グレイはおにぎりを口に運ぶ。

俺も腹がってるから、食べるが馬車の中はグレイと2人きり。

何時もいるメイさんとオーガストさん……というか、騎士5人は留守番。

魔王と戦うのは勇者と従者とドゥニーズさんとなったが、出発前の体調確認で

騎士5人の瘴気によるダメージが高く、普通にしてる分には問題ないが

魔王との戦いに耐えられないと言う事で、留守番になった。

5人ともかなり悔しがっていたが、魔王を倒すために俺たちが来たと

説得して、しぶしぶ宿にとどまってもらった。


「おいしかたったです」

「ごちそうさまでした」


俺たちは弁当を食べ終わるが、日本人はやっぱり米だよね。

マチルダさんはわからないが、米を食べないと力でない。

魔王との戦いの前に気合が入ったが、これで魔王に勝てる……はず。



 馬車は魔都の中を進むと、街のはずれあたりに城が見えたが

見た目はいわゆる西洋風の城で、ゲームや漫画、アニメなんかに出てくる

おどろおどろしい感じは全くないが、考えてみたら普通の城だよな。

ただ、城の大きさは王都の城と比べてもかなり大きく、大きな濠が三重になっており

攻めにくい構造になっているが、俺たちは馬車に乗って跳ね橋を渡って城へ入る。

なんか拍子抜けするが、先代の勇者は少人数でこの城に乗り込んだからすごい。


 少し広い場所で馬車が止まると、俺たちは馬車を降りると

ブルーナさんが待っていたが、宿と時と違い正装であった。


「勇者御一行、ようこそ魔王ルイーザの城へ。魔王様は謁見の間いらっしゃるので

をご案内します」


俺たちはブルーナさんに案内され、謁見の間に通される。


「こちらが謁見の間になりますが、ご質問はありますか?」


質問があると聞かれたので、謁見の仕方について聞いた。


「本来は作法がありますが、今回は気になさらなくてもよいです。

しかし、発言には注意してください」

「わかりました」

「魔王様がおなりになるまでお待ちください。わたくしは一度下がります」


ブルーナさんはそういって、謁見の間を出て行ったが一体どんな魔王だろう。

先代魔王の娘とい言ってから、やはり美少女なのか。

いや、魔王だから見た目は美少女でも実年齢はかなり年上かもしれないが

実年齢よりも、見た目の方が大切と重れ思うぞ。


しばらく待っていると、再びブルーナさんが謁見の間に来た。


「おまたせしました、魔王様がいらっしゃります。

本来ならば跪いてお待ちいただきますが、そのままでよろしです」


俺たちは言われた通り、立ったまま待つ事にした。


後ろからコツコツという足音がして、ついに魔王が姿を現す。

俺だけでなく、皆も緊張しているが出て来た魔王は……なんていうか

水着姿にマントをつけてた姿であった。


「……」


全員に沈黙が流れるが、魔王が出て来たからというのもあるが

どちらかというと、魔王の姿を見て何にも言えないと言った所か。

魔王の表情を見ると、少し引きつっているようにも見えるが

きっと魔王自身もこの格好が恥ずかしいので、察してあげよう。


魔王が玉座に着く。


「我は現魔王のルイーザ・ル・アンフェールである。

人間の勇者たち、よくぞここまで来た、褒めて遣わそう」


魔王は出来るだけ威厳を出すが、この格好だと……。

いやいや、考えてみたら最近の魔王はこのような恰好が多い。

しかし、実際に見ると水着……ではないと思う、肌の露出が多い服装に

マントをつけてるって、変態ぽく見える。

魔王の表情を見てると、本人もそれをわかってはいるが

魔王としてお出ましになった手前、威厳を見せるのである。

魔王は魔王で大変だな。


 恰好はどうあれ、頭には角があり紅色の髪にワインレッドの瞳が魔王らしい。

さらに、強い力がある事は俺でも判るぐらいだから、グレイはもちろん

イゾルダさんやドゥニーズさんも強大な魔力を感じている。


「流石魔王です、物凄い力を感じますわね」

「変態女でもわかるのですね」

「これだけ凄ければだれもわかりますわ。

あと、わたくしより魔王の方が変態ぽいですが」

「わたしたちはこれからあのお方と戦うのですね」


3人はたじろいでいるが、正直、俺も同じだ。

マチルダさんは平然な振りをしているが、汗が流れていて

果歩に関しては逆に無の境地になっていた。


「これから我との戦いになるが、戦いの場は城内の闘技場で行う。

我は先に行って待っている。そなたちの案内はブルーナが行う。

我に何か言いたいのならば、今のうちに聞いておくがよい」


魔王はそう言うが、言いたい事は……あるような、ないようあるような。

正直、魔王を前にして何を言っていいのかわからない。


「なければ我はいくぞ」


魔王が玉座をたったが、俺は思わず


「俺たちが勝ってもも負けても、魔王領のトイレを人間に普及させてくれ!」


と言ってしまったが、沈黙が流れて場の空気が凍ったといか、止まった。


「ハッハッハッ、何を言うかと思えばそんな事か。

それぐらいやってあろう。

しかし、面白い事を言う奴じゃ、殺すのは最後にしてやろう。

他になければ、我は行くぞ」


他の皆は呆れたのか、言う事がないのかわからないが何も言わなかった。


「どうやらないようじゃな。では、闘技場で再び会おう」


そういって、マントを翻すしながら魔王は謁見の間を出て行った。


魔王が出て行ったあと、マチルダさんがこちらで近づいて来た。

何を言われるかわからないが、あんな事を言ったら何を入れても仕方がないか。

少し俯いているが、怒っているのかな……。


「博司……まさかあんなの事を言うとは思わなかったわよ」


マチルダさんそう言って震えているが、顔をあげると同時に笑い声をだした。

どうやら、笑いを我慢してたみたいだ。


「まったく、博司はあの場面であんな事いうとはすごいわよ。

博司なら魔王に勝つかもね。さ、魔王を倒しに行くわよ」


マチルダさんはそう言って、俺の背中を何度もたたくが、ちょっと痛い。


「思わず言ってしまいましたが、自分でもあんな事言ったのかわからない……」

「ある意味、博司様らしいです。おかげで気が楽になったのです」


グレイもそう言うが、皆の表情から少し緊張が解けたようである。


「皆さま、闘技場へ向かいますがよろしいですか?」

「はい、お願いします」

「では、ご案内します」


ブルーナさんの案内され、俺たちは闘技場へ向かうが

ついに魔王との最後の戦いの時が来たのであった。

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