魔王との戦い

第38話 戦いの心構え

俺たちが話していると、俺たちのもとにブルーナが挨拶にやってきた。


「はじめまして、勇者の皆様、ブルーナでございます」

「はじめまして、手洗博司です」

「はじめまして、マチルダ・オハラです」

「は、初めまして、み、水元果果歩です……」


お互い挨拶をするが、ブルーナさんは見た目からして優秀そうなうえ

胸も大きくいが、見た目は20代前半で、この世界では珍しい黒髪であった。


「博司殿と果歩殿はわたくしと同じ黒髪なんですね」

「はい、俺たちの国は黒髪が多いです」

「そうなんですね。黒髪は魔族でなく、人間でも珍しいので黒髪の人間をみて、

なんだから嬉しく感じます」

「ありがとうございます。しかし、我々は敵と言う事をお忘れなく」

「そ、そうでしたね」

「ただ、本日……いえ、ここに滞在している間はお互い戦いの事を忘れましょう」

「そうですね……って、ここに泊まるのは今夜だけ、明日戦うつもりなんですが」

「言い忘れておりましたが、ここで2日間ほど旅の疲れをとっていただきます」


俺たちはその言葉に戸惑った。

俺たちとしては1晩だけ泊まって、魔王との最後の戦いをするつもりだったからだ。


「あ、あの、俺たちはそんなにのんびりするつもりは……」

「お金のご心配はしなくて大丈夫です」

「お金の問題でなく、魔王様との戦いを早くしたいのです」

「ここまで来たので、はやる気持ちもわかります。ただ、魔王様は

万全の状態に対し、勇者殿たちは長旅と何度も戦いをして満身創痍。

そんな状態で戦い、負けたら魔王としての面目がありません。

なので、勇者殿たちには万全の状態で戦ってほしいのです。

おわかりになりましたか?」

「わ、わかりました」


ブルーナさんの圧に押されついわかったと言ってしまった。

ただ、ブルーナさんの言う事もわかるし、俺たちも戦いと旅の疲れを取りたい。


「しかし、戦いの最中にこれだけの食料を用意できるとはすごいですね」


俺は出された食事を見て感心する。


「魔王様の計らいで勇者殿たちを出迎えるためにご用意しました」

「そうですか、ありがとうざいます。急に泊まったレイクの街以外は

意外と食糧事情は良かったですから、魔都ならこれぐらい用意できますよね」

「これぐらい余裕ですので。わたくし他の仕事がありますにでこれで失礼します。

では、ごゆっくりしてください」


ブルーナさんはぺこりとおじきをして大広間を出ていたが

魔王の側近だけあって俺でもすごい力を感じたし、これだけの料理と数を

戦争中に出せるだけあってやはり凄い。


―――――――――


大広間を出て、従業員の休憩室に入ると全身の力が抜けて椅子に座り込むみ

ため息をついてテーブルにうなだれる。

何とかうまく行きましたが、これで魔王様との約束どり2日はここに足止めできます。

今回用意した食材は城に合ったものをかき集めて、作った物。

実際は食糧事情は悪く、魔王様はもちろん我々も最低減の食べ物しか食べていない。

民に食料を回すためであるが、都以外の食糧事情は悪くないようですね。

わたくしの予想ですが、兵糧に回す予定の食料が横流しされたのでしょう。

ただ、その事に関して罰するつもりはありません。

元は民のための食料ですので。

しかし……仕事があると言ってあの場を離れましたが、久しぶりのご馳走でしたので

せめて1品か2品食べておけば良かったです……。

わたしは空腹のまま、魔王様に足止めをできる事を報告しに、城へ戻ります。



―— 一方、魔王城後宮。


わたしはパパ……いえ、お父様.……いえ、元お父様の所へ向かう。

なんで元なのは今は女性になって、女性と結婚したから。

なぜ、こうなったのかは色々複雑だけど、更に面倒なのは

その女性との間に子供が……つまり、わたしの妹が生れたから。

父親が女性になって、女性と結婚して女性の子供を産んだと

わたし自身訳が訳がわからないが、今がどうあれ父親である事はかわりないため

お父様と今も呼んではいる。


「お父様……ルイーザです。お話があってきました」

「あら、ルイ―ザちゃんね。大丈夫だから入っていいわよ~」

「失礼します」


部屋に入ると娘から見ても綺麗な女性がいるが、これが父親で先代魔王の

アンドレア。

今はわたしの母親よりも母親らしくなってるが、実際に母親であるから

母親らしくてもおかしくはないけど……ややこしいから、もうこの話は終わり。


 わたしがパパの所に来たのは勇者と戦った時の話を聞きに来た。

といっても、パパは負けてるし、今まで何度も聞いてるけど

パパに会える口実にしてパパに会いに来たのが本当の所。


「ルイーザちゃんがここに珍しいわね」

「間もなく勇者たちと戦うので、パ……お父様に心構えを聞きに来ました」

「そういえば、勇者たちが来てるって言うけど、ついたのね。

心構えはね……負けても気にしない、かな」


パパは笑うけど……負ける前提なんだ。


「勇者が来て時点で、勝ち目なんてないわ。

わたくしも勝ちそうになったけど、油断して今はこうなりましたし。

ただ、わたくしも本当は戦いたくなかったけど、立場上しかたがなかったから

仕方なくたたかいましたが、それが魔王の役割です。

ルイ―ザ、結果がどうなってもあなたはただ魔王としての役割を果たしてきなさい」


パパが真面目な顔でいうので、わたしは「はい」と一言いうだけだった。


「お堅い話はここまでんして、ルイーザちゃんも立派になりましたね」

「そ、そんなことないです」

「そうかしら、ぺったんこだった胸も立派になりましたし」

「そ、それは……」

「あらあら、わたくしと似ただけだから、恥ずかしがらないの」


パパもグラマラスだけど、性別を変えた時、自分の好きな姿になれる訳ではなく

違う性別だった時の姿は決められているらしく、パパが最初から女性だったら

今のパパの姿になっていたと言う事。


「恥ずかしがってないけど……あの衣装だけは何とかならないのかな?」

「あの衣装は特殊な魔力が施されているから、魔力を数倍にする効果があるわよ。

というか、あれを着ないと勇者とまともに戦えないわよ?」


そんな効果があるってブルーナは言ってなかったよ。

ということは、あれを着ないと勇者にあっさり負けるって事なら着ないとだめか。


「わかった、恥ずかしいけど着るね」

「がんばってね。ルイーザちゃんがを着たら男はいちころよ」

「今回の勇者一行は男は1人だけみたいです」

「あら、そうなの。でも、がんばってね」

「わかった。お父様と話しで来てよかったです、不肖ルイーザ、勇者と戦います」

「負けて消滅しても、100年もすれば復活するから安心して戦ってね」

「では、失礼します」


わたしはパパの部屋をでるが、やっぱり負ける前提なんだ。

魔族は一旦肉体が消滅しても100年したら元に戻るけど、それでも痛いのは嫌。

でも、パパに合えたこと自体は嬉しいし、これで勇者と戦う覚悟が完全できた。

そして、自室に戻るとき、ルイーザがきて戦いを何とか引き延ばすことが

出来たそうだけど、よくよく考えたら勇者を万全にするのって間違ってない?

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