第37話 グレイの告白
俺たちは魔都と呼ばれる魔王領の都かつ魔王の住んでいる街に着いたが
門の前で一旦車を止めた。
「ついに到着したが、門は開いているな」
「誰か門の前にいるのですが……かなり強い魔力を感じるのです」
グレイがそういうと、身震いをしている。
「グレイ大丈夫か?」
「大丈夫といいたいのですが……魔力がすごすぎるで勝手に震えるのです」
門の前にいる人物は俺でさえ魔力が凄い事がわかるぐらだから、グレイは尚更。
グレイでこれだと、イゾルダさんはドゥニーズさん達もグレイと同じ感じだろう。
「博司、あれはどうすんだ?」
オーガストさんが聞いて来たが、俺も正直わからない。
ただ、俺たちが車を止めても、ただ立っている何もし来る気配はないが。
「あれは間違いなく上級魔族ですね。ただ上級魔族ではなさそうです」
「魔王の側近ですかね?」
「多分、そうだと思います」
メイさんはあの魔族は魔王の側近と考えているが、俺もそう思う。
もし戦ったら、勝てると思えない。
だからこちらから手出しは出来ないが、向こうも門の前に立っているだけで
車を止めた後も門の前に立ったままでやはりなにもしてこない。
ただ、こちらから動いても良いのかわからず、何もできずにいた、
―――――
人間の勇者たちを出迎えたのは良いですが、車から出てきません。
もしかしたら、警戒されているのでしょうか。
わたくしは戦いに向いていませんし、ルイーサ様……いえ、魔王様も
手出しをしないように言われていますので。
ただ、この状態になってから、ある程度時間が経っているので
人間たちにこちらに戦意がない事を伝えた方が良いでしょう。
「わたくしは魔王の側近のブルーナと申します。わたくしは魔王の命で皆様をお待ちしておりました。
わたくしに戦う意思はありませんが、戦わないように命令されております。
安心して車からお降りください」
わたくしがお伝えしますが、しばらく沈黙が流れまて伝わったのか不安になります。
ただ、しばらくすると、車のドアが開かれ、勇者たちが降りてきました。
――――
俺たちが車の中でどうするか悩んでいると、門の前に居る魔族から
戦う意思がない事が告げられた。
それを聞いて、俺たちはどうするか悩んだがひとまず車を降りてみた。
そして、みんなでどうするか話し合う。
「ああ言ってるけど、信じてもいいの?」
「今までの流れからして、信じてもいいと思います」
「わたしも……そう思います」
マチルダさんは疑っているが、今までの流れから信じても良いと俺と果歩は思っている。
マチルダさんは少し悩んだが、ここであれこれ言っても仕方ないと言う事で
俺たちの意見を納得はしないが受け入れてくれた。
「それでは行こうか」
俺たちは俺を先頭にして、待っている魔族のもとへ向かう。
「ようこそ、魔王の都へ、お待ちしてました。
改めて自己紹介をいたしますが魔王の側近のブルームです。
以後、お見知りおきを」
「俺は、手洗博司です」
「私はマチルダ・オハラ、よろしく」
「わたしは……水元果歩です……」
「では、街の中へどうぞ。お部屋を用意しておりますので。
街の中で手を出さないように命令をしていますのでご安心を。
万が一の事がありましたら、厳しく罰しますので。
車でご案内しますので、ついてきてください」
「わかりました」
お互い自己紹介をし、ブルーナさんの乗る車に先導されて街の中へと案内される。
レイクの町の宿で聞いたが「魔都」と呼ばれはいるが、正式な呼称は単なる「都」らしい。
ただ、「魔王の住む都」と言事で、魔都で呼ばれているそうだ。
魔王領でもっと大きい街であり、首都なので今までの街の中でも立派な事はわかる。
ただ、街の賑わいはここもないが、何らかの制限がされているだけかもしれない。
考えてみたら、魔王の側近が来るのだから厳しく制限されてもおかしくはないか。
俺たちの車はブルームさんに案内されて、立派な宿に到着した。
「本日はこちらの宿にお泊り下さい。
大したおもてなしはできませんがごゆっくりしてください。では、中にどうぞ」
宿の中に案内されるが、なんて言ったらいいのだろう、高級なホテルといった感じ。
もっとも、高級なホテルに泊まった事はないから、俺の中にあるイメージだ。
ただ、この世界に来て泊まった宿の中では最も高級と言っても良いかな。
「王都に居た時でもこんないいベッドで寝た事がないのです」
グレイがベッドに寝転んでいるが、グレイが俺の部屋に自然にいる事はもう気にしない。
部屋はもちろん、男女別になってはいるが今更言ってもしょうがないので諦めている。
「グレイは王国のエリートだから、優遇されてただろ?」
「もちろんされてました。グレイの部屋もいい部屋でしたが、ここまでではなかったのです」
グレイがいい部屋というので、本当にいい部屋なんだろう。
これだけいい宿と言うか、ホテルとなると外交に使ったり富豪が使うんだろうな。
「ところで博司様、一つ聞いてもいいですか?」
グレイが急に真面目な顔をしたけどなんだろう。
「答えられる事ならな」
「そうですか。魔王との戦いが終わったらどうするのです?」
グレイが魔王との戦いが終わったらどうするのか聞いて来たが
もちろん元の世界に帰ると決めている。
「元の世界に帰るぞ」
「そうですか、そうですよね」
グレイが残念そうな顔をするが、俺にこの世界残って欲しいのだろうが。
「もしかして、俺にこの世界に残って欲しいのか?」
「な、なにをいってるんです、グ、グレイはそんな事思っていないのですよ」
わざとかと思うぐらい、わかりやすい反応だな。
ただ、魔王領に来てからずっと一緒にいるから、何となくわかってはいたけど。
「グレイが俺がいなくなると寂しくなるだろ?」
「だ、だからそんな事は……」
グレイが俯くが、どうやらその通りだ。
グレイも14歳の女の子だからなって俺も17歳だけど、これでもお兄ちゃんだから
強がっていることぐらいわかっている。
「グレイ、俺は妹がいるら強がってることぐらいわかるぞ」
俺がそう言うと、グレイが俺の胸元に抱きついて来た。
「博司様のそう言う所が嫌いです。でも、そういう所が好き」
いつもので「なのです」口調でないが、あれもキャラ付けと言う事はわかっている。
パピーの村で畳工房を見に行った帰りに、話したあの口調がグレイの本当に話し方。
俺はいつのもの「なのです」口調は好きだぞ、十分なキャラ付けができてるからな。
「もしかして、俺の事を好きになったのか」
「それは内緒です。あくまでも従者と勇者の関係です」
「そういうことにしてやる」
お約束として、ラブコメ展開があるがラブコメ展開どころか
恋愛展開自体今まで全くなかったのに、ここで来たか。
いやまぁ、最終決戦前に告白するのはあるけど、これって死亡フラグじゃないよな?
ここまで死者がでてないのに、最終回直前で最初から出てるヒロインが死ぬのは勘弁だぞ。
もっとも、グレイがヒロインなのかわからないが、立ち位置としはヒロインか。
そうでなければこんな事しないだろうな。
「博司様て鈍感を演じてますが、かなり鋭いですよね」
「はっきりいえば、そうだ。ただな、俺たちの世界では勇者は鈍感でないといけないんだ」
「なんですかそれ」
「文化の違いだ、気にするな」
「そういうことしておきます。わたしもはっきり言いますが、博司様の事を好きになりました。
ただ、わたしは恋愛がなにかわからないから、これが恋なのかわからないです」
グレイは勉強ばかりしてて、初恋していない恋愛もよくわかない。
ただ、グレイは14歳の女の子なので恋愛をしてなくてもそこまでおかしくないだろう。
それに、単なる憧れなを恋愛と思っているだけかもしれない。
「俺も正直、わからん。好きな女の子もいる事はいるが、付き合った相手はいない」
「そうですよね、博司様はどう見ても童貞ですし」
「おい、この場面はそれはないだろ」
「冗談です」
なんだろう、グレイの場合冗談に聞こえない。
そのうち「ざぁこ、ざぁこ、童貞。童貞が許さるのは小学生までだよね」
みたいなことを言いそうな感じがある。
もっとも、この世界に小学生って言葉ないだろうけど。
「とにかく、グレイは博司様が好きです。多分、憧れではないです。
博司様に憧れる所はないのです」
憧れがないのと言われると正直、傷つくが考えてみたら
あまり活躍してないから仕方がないが、グレイはさらに
「憧れはないですが、尊敬はあります。そして、大事な人です」
と言ったのであった。
しかも、口調からして冗談ではなくて本気だ。
つまり、尊敬していて、大事な人はいろんな意味合いがあるが
今の流れでは恋愛的な意味合いだろ。
俺はどう答えたらいいか悩むが、この世界の恋愛事情はどうなってるのだろう。
キス=婚約とルアナさんが言ってたから、下手な事は言えない。
グレイには大事な仲間で大事な従者であるが、恋愛感情はまったくない。
もちろん、他の女性たちに恋愛感情はないというか、考えてた事がない。
でも、俺はこの世界に留まるつもりはなく、元の世界に帰りたい。
グレイも大事であるが、文字通り住む世界が違う。
なので、グレイの気持ちに俺は答える事ができない事を正直伝える。
「グレイ、俺もグレイは大事だ。ただ、ここでいう大事は仲間や従者、家族という意味での大事だ。
グレイの俺に対する大事は、恋愛的な意味と言う事はわかっている。
だが、俺とグレイは住む世界が違うから、グレイの気持ちには答えられない」
「……やっぱり、博司様ははっきり言うのですね」
グレイはさっきから俺に顔をみせない。
来ている服は薄い長そでのTシャツであるが、グレイの顔が当たってるので
僅かに濡れている事がわかる。
「悪るいな、グレイ」
「構いません。召喚された勇者は元の世界へ帰るらないと知っていて
グレイが好きになってしまったのです」
「そうか。グレイが気が済むまで、こうしててもいいぞ」
「わかりました……。グレイの顔は博司様に見せられません」
グレイはそういって、10分ほど抱きついたあと顔を見られないように俯いて
さっきまで寝ていたベッドに寝転んだが……出て行かないんだな。
******
部屋でこんな事があったが、大広間に集まって欲しいと言う事で大広間に向かう。
大広間はみんなが集まっているが、どうやらブルーナさんが何か話す様だ。
「皆さん、おあつまりになられてありがとうございます。
しつこいですが改めて自己紹介しますが、魔王の側近で世話係のブルーナです。
この旅は魔王の都までご足労ありがとうございます。
長い旅と戦いでお疲れであると思いますが、本日はごゆっくりお休みになり
魔王様との戦いにお備えください。
皆様にはお飲み物をお配りしましたが、お酒が飲めない方もおられまますので
ノンアルコールでありますが、乾杯の音頭をとらせていただきます。
それでは、魔王様の最終決戦の備えて乾杯!」
「「乾杯!」」
なんか宴会の挨拶みたいだけど、他の皆もやってるのでどうやらこの世界の文化らしい。
俺と果歩は何とかついて行ったが、マチルダさんは訳がわからない顔をしていたが
アメリカ人にはわからないか。
マチルダさんには俺と果歩が日本のパーティー文化と説明しておいた。
「お料理もご用意したので、お好きなだけお食べください。
もちろん、毒や魔法、薬など入っておりません。
我が魔族はそんな卑怯な事して勝とうと思いません。
そんな事をするぐらいなら、ここに来る前に既に殺しております」
最後、物騒な事を言ってるが今までの感じから信じてもいいかな。
そして、出された料理はどれもおいしそうで、実際に美味しい。
「ところで、博司君いいかな」
マチルダさんが珍しく君付け呼び、笑顔で俺に話しかけるが、目が笑ってない……。
「いつもならすぐに博司君の隣に来るグレイちゃんがなぜ来ないのかな?」
「えーと、それは……」
さっき部屋であんなことがあったなんて言えない。
ただ、明らかに泣いた後の顔なので、なんと説明したらいいのか……。
「グレイちゃんのあの顔、どう見ても泣いた後だけど、ついに手を出したの?」
マチルダさん、俺をそんな風に見てたんですか?
俺の好みはマチルダさんやドゥニーズさん、イソルダ……さんは見た目いいけど
性格的になしだけど、つまり年上お姉さんグラマーがタイプなんです!
っていいたけど、この場面では言えない。
「出してませんよ。グレイをそういう風に見てません」
「ならなにがあったの?話せない事なの?」
「えーと、素直に話しますよ……」
隠せないと思うのであった事をそのまますべて話したがマチルダさんも何となくわかっていたみたいだ。
一緒に旅をして近くに居たいから仲間としての絆を恋愛感情と思っていた
っとマチルダさんは言ってておいた。
「……多分、それ本当に好きだと思うわ」
「わたしも……そう思います……」
となりで食べながら話を聞いていた果歩もマチルダさんと同意見というか
果歩もやっぱり恋愛の話は気になる様だ。
「グレイちゃん……博司さんの事が好きなのは……見てわかります」
「女の子から見るとやっぱりわかる?」
「はい……わたしも恋愛経験がある訳ではないでが……好きな人を見る目はわかります」
やっぱり、女の子にはわかるんだな。
「でも、元の世界に帰るとはっきり伝えた……」
「そう……」
それを聞いてマチルダさんも何も言えない。
実は魔王領へ出発する前に、マチルダさんも果歩と魔王を倒した後の事を話したが
俺と同じく、魔王を倒した後はこの世界にとどまらないと言っていた。
「この世界は思ったより悪くないけど、やっぱり元の世界に戻りたい。
わたしがいなくなったら、ダディとマム、友達が悲しむから……」
「わたしも……この世界は嫌いではありませんが……やっぱり、元の世界に戻りたいです……」
2人も本音をいうが、空気が重く暗くなってしまった。
「この話はひとまずよそうか」
俺を話題を変えようとするが
「いえ、この際だからちゃんと話しましょ」
とマチルダさんはこの話を続けることにした。
仕方なく、話題を続けたが逆に今まで思ってた事をすべて話した。
そして、果歩がイゾルダに狙われている事もわかったが……
詳しくは言えないが、結構激しいプレイをしてる事も告白されたが
イゾルダさんはMなので、果歩がSというか攻めだけど
これはこれで興味が出て、見たくなったがもちろん口にはださなかった。
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