最後の砦

第30話 パスの街の宿屋

 日が暮れた頃にパスの街に到着した。

パスの街は峠を越えた所にある街で、峠越えの拠点の街だろう。

街の規模は下級魔族の街よりもやや大きい街であるが、街の賑わいはほぼない。

時間帯もあるだろうけど、雰囲気からして日頃から店が開いている感じがしない。


「街自体は大きいですが、何か寂しいのです」

「そうだな」


既に日は暮れているが、街の明かりはジェルダンさんの街と比べると少ない。

人通りもほとんどなく、家にも誰もいないと訳ではないが暗くなっても

明かりがついていない家が多い。


「街の宿に泊まろうと思ったけど、宿もやってるか不安だな」

「この街は何度も来ていますので、宿に向かってみます」

「お願いします」


御者が街に詳しいので、宿へ案内してもらったらが宿には一応明かりが点いていた。


「明かりは点いていますね」

「そうだな。しかし、人間が泊めてくださいって言って大丈夫だろか」


オーガストさんの言う事もわかる。

この街の魔族は人間にいい感情がないと言うので、宿に泊まれるかわからない。


「しかし、野宿する訳にも行きませんしね」


野宿はモンスターや魔王軍に襲われる危険もあるが、一番の問題は瘴気。

峠を越したら魔石の瘴気の濃さが緑から黄色と1段階濃くなっている。

勇者やその従者は瘴気の影響はほぼないが、同行者達はわからない。

建物の中に入れば、瘴気はかなり薄いかほぼないので問題ないので

外にいるよりは建物の中に入った方が良い。


「泊れるかどうかだけでも聞いてみます」

「そうだな、頼んだぞ」

「はい」


何かあった時のためグレイと宿の中に入ってみると、主の姿はない。

カウンターに『御用がある方はこちらのベルを鳴らしてください』と書いてあるので

鳴らしてみると、奥から返事がして女の魔族が出来てたた。


「珍しくお客が来たと思ったら人間とはね。とい事は…あんたたち勇者一行かい」

「は、はい…」

「そうかい。宿屋に来たという事は、泊まりたいって事だね」

「12人なんですが…よいですか?」

「ああ、大丈夫だよ。部屋の準備はしてあるが、食事の準備はすぐにはできないよ」

「泊れるだけでも十分ですが…俺たちを泊めても大丈夫ですか?」

「人間だろうが魔族だろうが、お客にはかわりないよ。むしろ、戦争が始まって

人間も魔族も来なくなって、こっちは商売あがったりっだよ。

だから、泊っておくれよ」

「ありがとうございます。あと、車が4台あるのですが止らます?」

「戦の前は商人たちが沢山来てたから平気だよ。裏にあるから、案内するよ」


そういって、女将さんが外に出て車の裏に止める

みんなにここに泊まる事は話してなかったが、車を止めたのでわかると思う。


「別に、泊まれるならどこでもいいわよ」

「わたしも…同じです…」

「ここから先は瘴気がさらに濃くなりますし、兵はもちろん、強いモンスターも

でますので野宿は危険です」


ファイエットさんの言う通り、ここから先は野宿はかなり危険だそうだ。

次のレイクの街まではこの車ならば当日に到着できるので問題ないと思うが

レイクの街もどんな状況かわからない。


「とりあえず、宿は確保できたから今日は休もう」

「そうですね…」


宿の女将は信用しても大丈夫そうだけど、何があるかわからないから

警戒はしておかないといけない。

ただ、今日は初めて本格的な戦いをし心身ともに疲れたので早く横になりたい。


「部屋は2階の空いてる所を自由に使っておくれ」

「わかりました」


部屋の鍵を受け取り、それぞれの部屋へ行く。

部屋は2人部屋と4人部屋となっているが、グループは決まっているので自然と

同室になる相手は決まっている。

俺も部屋に入るが…何故かグレイがいる。


「グレイ、何でここにいるんだ」

「何でも何も、他に部屋がないからなのです」

「いや、部屋は空いてるだろ」

「べ、別に1人では寂しいって訳ではないんのです。従者として同室の方が

良いと思ったのです」


いや、これは間違いなく寂しいからだろ。

でも、今までは別の部屋なので、今更寂しいと言われてもな。


「パピー以外では別の部屋だっただろ、今更寂しいと言われても」

「博司様の方が寂しいと思ったのです」


グレイにそう言われたが、確かに俺の方が寂しいがその事は絶対に口にしない。


「どちらにせよ、男女同室はだめだろ。開いてる部屋に行くんだ」

「わかったのです」


珍しくグレイが素直に引き下がったが、他の部屋は既に使用中だった。


「これでは仕方がないですね」

「そうだな…」


部屋数は5部屋あり、4人部屋が2室、2人部屋が3室なのでなので確かに足りない。

2人部屋の1つは男性騎士が1人が使用しているので同室にする訳に行かない。

仕方なく、俺とグレイは同室となった。


「今更着替えを見賀れても恥ずかしくはないのです」


グレイはそう言って、普通に着替えをするが俺も背を向けて着替えるのを待つだけ。

もっとも、妹も結構最近まで平気で俺の前で着替えてたが、何度も俺の前で

着替えのはやめろって注意したが、聞かなかったな。

ただ、高校に入ったらやばさに気づいて俺の前で着替える事は減ったが無くなった訳でない。

以前の様に風呂上りに全裸と言う事はなくなったが、下着姿はまだ平気。

妹はグレイよりも発育が良いので、何度も注意するけど言う事を

聞いてくれないが、何で下着を見られるのは平気なのは不思議に思う。


 それはともかく、グレイも俺の横で着替え終わるとグレイもベッドに横になる。

グレイも魔法をたくさん使ってやっぱり疲れている様だ。


「グレイ、今日は疲れた?」

「はい、疲れたのです。でも、グレイは後ろで魔法を撃ってるだけでしたので

直接戦った博司様と比べたら、大した事ありません」


グレイは大したことない言ってはいるが、実際は怪我の治療もしていて

魔力量が多いと言っても、体力はそこまでないのでグレイの方が

疲れていると思うが、グレイの事だから素直には答えない。


今回の戦闘で一気にレベルップして、LV400になていた。

実は経験値の詳細もわかるようになっており、アーティとの

一騎討で一気に100も上がっていて、間違いじゃないと思って何度も確かめたぐらい。

勝ち方に関係なく、勝てばとにかく経験値が入る仕組みの様だ。

ただ、魔王にスキルを使うにはあと100もあげないとならないが

砦は撤退済みという情報なので、このままじゃLV500にならないまま戦わないとならない。

普通に戦ったら俺の剣の腕の問題もあり、勝てる気がしない。

なので、スキルを使って負けたを認めさせたいが、魔王に近づくこと自体

可能かどうかもわからないが、あれこれ考えてもしかたがないからもうやるしかない。


 俺が色々考えていると、グレイはベッドの上でうとうとしてるが

疲れているからこのままにしておこう。

俺も疲れてはいるが、それでも腹は減るし汗も流したい。

魔王領も風呂にこだわりがあるようで、下級魔族の街も風呂も立派だった。

あと、疲れて忘れていたがトイレをチェックしていない。

この宿も部屋にトイレがあるようだけど、2階だからどうなってるかは気になる。

この部屋にも部屋にドアがあるが、ここがトイレだろう。


 部屋にあるドアを開くと、やはりトイレであったが思っている物と違っていた。

そう、水洗トイレだったのだ。

魔王領にトイレがあった事自体が予想外だったが、さらに水洗トイレがあるとは。

水は吊り下げてある紐を引くと流れる仕組みになっている。

便器の形状は洋式。

水洗トイレと言う事は、水が確保できる事でもあるが問題は流した先である。

下水処理施設は無いだろうから、どこかでスライムに処理させているのかな。

しかし、まさか水洗トイレがあるとは思わなかった。


 ただ、問題は紙で紙はトイレに流さずに、別途のごみ箱の入れるのだけど

ごみ箱だと匂いなどが気になると思ったが、おがくず見たい物が入っていた。

なので匂いもそこまで気にならないと思うし、量もそこまででないのだろう。

しかし、水洗トイレを造れるても、水に溶ける紙を作るのは

この世界ではかなり大変なんだろうな。

そう思うと、日本のトイレットペーパーはすごいんだな。

せっかく水洗トイレがあるから、もちろん使用するけど。


 トイレから出ると


「部屋の中なのになぜか水が流れる音がしたのです…」


グレイが半分寝ぼけた状態で言うが、トイレの流す音を聞いたからだろう。


「トイレの水を流した音だぞ」

「トイレ…水を流す…よくわからないのです…」

「説明するより、見た方が早いぞ」


俺はグレイを半ば無理やり、トイレに連れて行ったがトイレを見せた。


「確かにトイレに水が溜まってます…」

「用を足したしたら、その紐を引くと水が流れてる仕組みだ。

あと、紙は横のごみ箱へ入れないと、詰まって大変な事になる」

「わかりました…ちょっと、用を足します…」


グレイが脱ごうとしたので、一旦止めてドアを閉めてた。

言い忘れていたが、トイレは魔石で明かりが点く仕組みになっていた。


 グレイがトイレから出ると


「すごいです、水が流れたのです」

「水洗トイレというが、俺の住んでる国では大体はこの方式のトイレだ」

「そうなのですか、博司様の世界はすごいのです」

「魔王領にのトイレは残った勇者が普及させたそうだけど、

まさか水洗トイレがあると思わなかったが作るのはかなり大変だ」


俺のわかる範囲で説明をするが、まずは2階に水を汲みあげる事自体が大変。

ポンプがあると思わないので、どうやってやっているかわからない。

これはおかみさんい聞くしかない。

便器を来るのも大変なうえに、水を流したあとの処理も大変。

下水道を造らないとならないし、下水の処理もしないとならない。

ただ、下水処理はしないで垂れ流してるかもしれないし、スライムを使って

下水処理を処理している可能性もあるかもしれないけど。

とにかく、水洗トイレを造るのは大変だ。


「つまり、水洗トイレを造ったこと自体がすごのですか」

「そう言う事だ。侮れないな、魔王」


もっとも、魔王が侮れる相手ではないけれど。

どちらにせよ、手間と時間、費用をかけて水洗トイレを造るのだから

政治面でもやり手な魔王なのかもしれない。

そんな魔王がなぜ人間と戦うのかはは不思議に思えるが、魔王側から攻めて

来たから人間が起こした訳じゃないし、やはり魔王は魔王って事なのかな。

俺は魔王の事が気になったが、魔王がどんな人物か知りたくなったのであった。

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