第26話 情報

 スキルを使って、兵士からう情報を得る事にする。

従属しているので、尋問ではなく会話ではあるんだけど。

ただ、スキルは兵のLVが高いため5人までしか使えないので

残りの7人が余計な事をしないか騎士5人が見張り、

逃げれないよう両側の道もマチルダさんたちが道を塞いでいる。


「それじゃ、質問するから答えるんだ」

「はい、何なりと」


俺はまずは駐屯地の事から聞くが、駐屯地には全部でここにいる兵士を合わせて

合計1000の兵士がいるそうだ。

少なそうに見えるが、多くの兵を失ったので今、魔王軍が使える兵の数は

4000程で、その内2000は魔王城の最終防衛ラインに配備。

残り2000は1000は峠下の駐屯地で、残り1000は、2つ目の街と3つ目の街の

砦に中間地点に配置してるそうだ。


 街は最初の街の他に2つの街があり、峠を下った所にあるパスの街、その次はレイクの街となり

最終防衛ラインがあって、魔王城と城下町となるがここがいわば首都。

最終防衛ラインだけ合って、上級魔族とも戦う事になる…と思ったら、何故か魔王が禁止しているそうだ。


「なんで、上級魔族は戦いを禁止されているんだ?」


俺が聞くと


「どうやら、最終防衛ラインでは戦いをしない方針らしいです」

「え?なんで?」


っとまた聞き返す。


「これはあくまでも兵たちの噂で、決定事項かどうかはわかりませんが、

兵士の損失が大きかったため最終防衛ラインまで来たら、

魔王城で直接魔王様が戦うそうです」

「そうなのか」

「とはいえ、これは噂でしかありませんが、上級魔族に将軍が言っておられた

そうなので、かなり信憑性は高いかと思います」


将軍クラスがいってるならば、信憑性は高いかもしれないが、

これは不確かな情報だからすこし信憑性を下げておく。

兵の配置は信憑性が高そうなので、情報のレベルを上げておこう。

峠下の駐屯は峠に出来た砦が本体で、駐屯地はバックアップという形だそうだ。

砦に配置するのは300人なので、駐屯地は700人で使用する計画になっているそうだ。

ただ、今は700人収容の所を無理やり1000人で使っているので窮屈だそうだ。


 また、街道にはやっぱり関というか、検問所を設けてあるそうだ。

そして、地形であるが、駐屯地がある所は湿地帯で街道より少し低い位置になっていおり

土でかさ上げしてはあるそうだけど、まだ土が不安定らしい。

また、使用をはじめたのは12日ほど前からだそうだが、ジュルダンさんに

つたわってないのは単に伝達ミスであったらしい。


「もし、駐屯地に大水を流したらどうなる?」

「大水を流した場合、駐屯地に流れる水はそう多くなく、そのまま峠下のパスの街の方に流れていくと思います」

「ということは、そのまま流すと街の方が被害が大きくなるって事?」

「谷に沿って川がありますので、そのまま街へ行く訳ではありませんが、駐屯地のは兵や建物を押し流すほどの効果はないと思われます」


そうか、地形の関係で思ったほど効果はないか。

そうなると、どうした方がいいんだろう。


「方法としては、ここにおびき寄せて戦う事だと思います」

「その場合は長期戦は想定は想定しておらず、水や食料がないから

すぐ蹴りをつけないとならないな」

「そうですね…」


オーガストさんが言う通り、長期戦は想定していない。

ただ、後方の街の方への道があるので、補給自体は不可能ではない。

地形的にもこちらが有利にはなると思うけど。


「駐屯地も使用不能なだけでは後方の不安と、街への報復を考えると壊滅させないとならないな」


後方の不安だけではなく。オーガストさんが街の心配をしているがこれは意外だ。


「オーガストさんが後方の街の心配をするんですね」

「ジュルダンは作戦のため、身体を張ってくれたかれたからな。

騎士は義がある物は信じるし、報わなければならない」


少し照れ臭そうに言ってるが、オーガストさんも今回の事で信用してくれたようだ。


「しかし、ここであれこれ言ってても始まりませんね」

「そうだな。食料などの問題もあるし、ここを早く超えて次の街へ行きたい」


俺達は悩むが、隊長が


「いっそのこと、駐屯地へ行くのはどうでしょ?」


と助言した。

隊長が言うには、元々湿地帯なので土を持ったと言っても、元の地盤が弱くて

土を盛った部分が今も沈んで常に補修をしているそうだ。

なので、駐屯地に直接水を流せば、駐屯地に大きな損害を出せるという。


「なるほど、その手でいくか」

「そうですね。どうせ戦うのですから、こちらから打って出るのもありですね」

「リスクは高いと思うわ。ただ、のんびりもしてられないわね」

「そ、そうですね。これから先はリスクしないので…まだこちら側の

事が知られていないうちにやりましょう…」


マチルダさんも果歩も打って出る事を選んだので、こちらから駐屯地へ向かう事にした。


「それじゃ、車に乗って駐屯地へ向かおう」

「こいつらはどうするんだ?」

「スキルを解いて、解放する。捕虜にしても面倒ですし」

「確かにそうだな」

「なので、一通り話を聞いておきましょう」


スキルを使って他に聞き出した情報は

・夕方に交代の兵士がくる

・駐屯地の責任者は中級であるが、上級並の強さを持っている

・1つの班は6人構成

・関は谷を塞ぐように設置されているので、駐屯地を攻めるには関を突破する必要がある

・駐屯地は街道の一方向から攻められないが、その分水が溜まれば無力化できる

といった所か。

先の事はあまり情報がないが、パスの街の先には昔からある砦があるので

これを突破しないといけないので、ここが魔王城へ行く最大の難関になると思われる。


「ひとまず、目ぼしい情報はこんなものかな」

「後は大した情報はなかったわね」

「それじゃ、スキルを解くか」


俺はスキルを解くが、捕虜にしないので緊縛も解く。

おかしなことをしたら、今度こそ仕留めると脅しはあるけど…なんか不安だ。

そう思っていると、1人の兵の緊縛を解くと、解いた騎士を払いのけて駆け出して行った。


「おい、どこへ行く!」


オーガストさんが叫ぶと


「詰所へ緊急時を知らせる空砲を鳴らしに行ったと思います」

「何故それを言わない!」

「聞かれなかったので」


確かに、これについては聞いてないので、こちらが悪い。

ただ、言い争ってる暇はないので、急いで追いかけてるが意外と足が速い。

隊長が言うには、ここの兵士の中で一番足が速いそうだ。

なので、追いかけても間に合わないかもしれないが、俺も足はそこそこ速いので

追いかけてるが、逃げたのに気づいたルアナさんも後からついてきた。

俺が詰所が見えた辺りまでくると、兵士が打ち上げ花火の筒の様なものを

持って空に向けていると思ったら、筒から煙がで大きな音が響いたのであった。


「こ、これってまずいんじゃ…」


俺が息を切らせて立ち止まると、後から来たルアナさんが空砲を鳴らした兵士倒して馬乗りになって押さえつける。


「ふ、最後に人間の女のも悪くないな…」

「残念、俺は魔族は好みでないんで」

「それでも、別に構わないぜ」

「それでは、覚悟を決めてください」


押さえられた兵士はルアナさんを不敵に笑うが、同時に兵士の首が身体から離れた


「博司様…」


意外だったのが、ルアナさんが俺の名前呼ぶが、首を落としたのは俺だ。

俺は初めて魔族を斬ったが…思ったより嫌な感じはしなかった。

むしろ、少し快感を感じてしまったが…これはおかしいのだろうが。

ただ、俺も躊躇なく魔族が斬れることは分かった。


「すまん、なんか斬りたくなって…」

「いえ、別にいいのですが、何の迷い無く斬ったので逆に驚きました」

「自分でも、驚いてるけど、恐怖とか後悔はなんかない…」

「そうですか…」


ルアナさんは一言だけ言うと、首が無くなった死体に祈りを

ささげたが俺も手を合わせてた。


「敵とはいえ、死んだ者には祈りをささげないといけません」

「そうですね」


敵だからと言って死んで当り前ではなく、ちゃんと弔わなければいけない。


「ところで、博司様は手を合わせていたが、果歩様も同じ様にしてましたね」

「これが俺と果歩はこの祈り方だからね」

「そうなんですね」


ルアナさんの祈り方はマチルダさんと一緒と言ってたが、この世界は元々の祈り方だと言う。

なので、偶然マチルダさんが同じ祈り方をしたので驚いたそうだ。


「それなら、俺も同じ祈り方をした方がいいかな」

「祈り方は自由ですが、博司様がそうお思いなら同じでいいです」

「わかった」


俺は次からはルアナさんに教えて貰った祈り方をする事にした。


「それはいいとして…敵がこちらへ来るって事だね」

「そうですね、皆さんの所へ戻りましょう」


俺とルアナさんんはみんなの所へ戻るが、上りになると意外と急だった。

さっきは無我夢中で下り坂であったのもあるけど、ちょっと無茶したかな。

息を切らせて戻ると、隊長が慌てていた。


「大変です、あれが鳴ったと言事は駐屯地の全軍がこちらへ来ます」

「慌てるのはこちらで、お前が慌てる事はないだろう」

「いえ、慌てますよ。隊長が全責任を負って、首を落とされます」


隊長はそう言って座りこむが、下っ端の隊長はミスをすべて負う決まりらしいが

緊急事態が起きたという事は、大きなミスなので処刑となるそうだ。


「隊長さん、なんなら戦いが終わるまで私の街に隠れるのはどうですか?」


さっき、暴行を受けたジュルダンさんが隊長にそういうと隊長が泣きだした。


「先ほどのご無礼すみません、ジュルダン殿」

「いえ、いいのですよ。ただ、単に隠れるのは敵前逃亡なので、皆さんに殺されたことにしましょう。

遺体は…谷底に捨てた事にしましょう。この谷の深さならば、落下時にバラバラになってもおかしくないでしょう」

「ありがとうございます」

「さ、鎧を脱いでください。谷底に捨てますから」

「わかりました」

「あ、あの…僕も匿ってください…戦いが終わったら婚約者と結婚しますので…」

「お、俺も、戦いが終わったら、家族で店を開くのでお願いします」

「おらも、軍をやめて田舎でのんびりくらすんで、おねげえします」


何か、兵士たちが死亡フラグを立ててる気がするが、この際いいか。

兵士たちはジュルダンさんの車に乗り込むが、流石に1度では乗れない。

なので、一度分岐点まで歩いいて行ってもらい、そこ位待機してもらう。

念のため他に武器がないか調べるが、武器は隠し持っていない。

あと、魔法も使えないそうなので、芝居ではなさそうだ。


「そういえば、作業員の皆を忘れてた」

「ここに到着するまではかなり時間があるので、作業員たちも逃がしてください」

「いいのですが?」

「はい。自分が愚かな事に気が付きました、もちろん何もしませんのでご安心を」

「わかりました、街の者を避難させましょう」


ジュルダンさんが小屋へ向かい、皆を分岐点まで避難させる。

全員の避難を確認すると、後ろに被害が出ないためとドゥニーズさんが結界を張るが

ドゥニーズさんの結界は張った本人ですら、突破不可能なのでいわば背水の陣の様なものだ。


「戦いの準備はできた。あとは迎え撃ちだけだ」

「そうですね。しかし、本格的に軍と戦うのは緊張する…」

「大丈夫ですよ、博司様。さっきは迷いがありませんでしたので」

「そうだね」


ルアナさんにそう言われて、俺も気を引き締めて魔王軍が来るのを待つのであった。

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