第25話 峠

 作戦決行当日。

皆、流石にピリピリしてて、作戦としてはそこまでではないが

俺としては初めて魔王軍と戦うので、緊張している。


「やっぱり、魔王軍と戦うと思と緊張するな…」

「グレイも、魔王軍と戦うのは緊張するのです…」

「ご主人もグレイの嬢ちゃんも落ち着けよ」

「そうよ、気楽に行きましょ」


緊張する俺達をアオとアカが落ち着かせるが、前日の朝に再び同じ場所に行ったら

また2羽がいて、イチャイチャしたてたので、また捕まえてスキルを使った。

2羽には訳を話したが、峠より先はアオとアカにとっては瘴気が濃いためいけないが

駐屯地のある場所ぐらいなら空から見る分には大丈夫だそうだ。


「まったく、鳥使いが荒いぜ」

「でも、ご主人のためだわ」

「そうだな。せっかくだから、峠の所も見てきてやるぜ」

「ああ、頼んだ」


この2羽はスキルで従属させているとはいえなかないい鳥だ。

やはり、空から偵察が出来るのはかなり大きい。

俺達が出発する前に、アオとアカは峠へ飛んで行った。


「博司様もそろそろ乗り込んでください」

「わかりました」


オーガストさんに言われて、車に乗り込む。

ジュルダンさんは先に峠へ向かっている。

ジュルダンさんは遠くから声が聞こえる魔石を持たせてくれたが

いわば通信機であるが、聞くだけで会話はできない。

それでも、話を聞けるだけでもかなり違う。


 ただ、聞こえる範囲が狭く、峠道だと地形の関係もあってさらに狭くなる。

そのため、待機場所では聞き取る事が出来ないが、聞こえる範囲だと

今度は見張りに見つかるので、近づく事ができない。

そのため、アオとアカに上空を飛んでもらっているが、アオとアカの話だと

峠の辺りは鳥は近寄らないので、あまり飛びたくはないが俺のために飛んでくれるそうだ。


「全員、乗り込んから出発してください」


俺は先頭の高速車に乗って、御者に伝えると峠に向けて出発した。



 ― 峠ではジュルダンが一足に現場に到着していた。


「ジュルダン殿、こんな短期間に来られるなんて珍しいですな」

「今日は少しメルヴィルに私用がありまして」

「私用では会わせる事が出来ないですぞ」

「それはわかっていますが、ちゃんと渡す物を渡しますので」


ジュルダンは金貨1枚を隊長に渡すが、袖の下である。


「少しの時間ですよ」

「念のため、もう1枚どうぞう。あと、ここにおられる兵士の皆様の分もありますので」

「そうですか、それではごゆっくり」


隊長といっても、階級としては低く建設現場の監視はやる気がなので

袖の下を渡せばいいだけなので楽なのです。


「ジュルダンさん、こんにちは」


メルヴィルは私の姿を見つけてすぐに察した。


「今日なのですね」

「はい。休憩の鐘が合図となります」

「言葉は既に皆に伝えてあります」

「ありがとうござます。鐘が鳴ったら皆さんすぐ小屋に入ってください」

「わかりました」

「では、私はこれで」

「ジュルダンさんも気を付けてくださいね」

「わかっております」


兵士達も私が通常より短い間隔で来たので、疑っているようです。

ただ、時間的には間もなく、鐘が鳴る頃です。

もし、兵士たちに何か言われても、博司様たちが来るので心配はないはずです。


私が車へ戻ろうと知ると、兵士たちが私を止めますが…やっぱり怪しんでいるようです。


「ジュルダン殿…いや、ジュルダン、我々が何も知らないと思いかな」

「何のことか、私にはわかりませんが」

「とぼけても無駄ですよ。お前が人間の勇者と手を組んでいる事はわかってるぞ」

「何のことかわかりませんが…と言いたいところですが、やはりばれていますよね」

「この場所を見渡せる場所は1か所だけ、下から気付かないと思っていたようだが

騎士の鎧で光が反射すれば流石に気づくぞ」


魔族はほんのわずかない反射があれば気づくぐらい、光には敏感です。

多分、人間ではそこまで気づかない程度の反射だったと思います。

私もあの場所ならば大丈夫と思って、言わなかったのが失敗です。

これは私の責任ですので、私が犠牲になればよいのです。


「本来ならば鐘の音が鳴らす頃だが、それが合図になっているのはわかるぞ」

「そうですか、わかりました。観念いたします、私の首をはねるなりなんなりしてください」


私は潔く、座り込むが隊長はゲスな笑いをする。


「そうしたいところだが、勝手に首をはねるとこちらの首が飛ぶもんでね」

「では、どうするのですか?」

「ジュルダン、あんたの一人娘をよこせば見逃してあげよう」

「何故娘なのでですか?」

「兵士たちも女日照りで、色々溜まっていてね。ただ、同じ中級に手を出す訳にはいかないんでね。

その分、下級相手ならば上官も目をつぶる。さらに、今回の事も内密にする」

「そうですか…」


先代魔王の時代よりは良くなったといえ、やはりこういう輩はまだまだ多いです。

娘をこんな奴らに渡すぐらいならば、わたしの首が飛ぶ方がましです。

しかし、娘は博司様たちと一緒に居ますので…博司様達が車で時間を引きのばすしかないです。


私はふと空を見上げると、2羽の鳥が飛んでいますがあれは博司様と

一緒に居たアオとアカですね。

アオの方が博司様の居る方へ飛んでいきましたが…この状況を伝えに行きましたね。

なので、少し辛抱すれば良さそうですね。



―分岐点の博司達- 


日の高さを見るとそろそろ鐘が鳴る頃だけど、鐘が鳴らない。

少し遅れているかもしれないが、軍は時間にうるさそうだから…何かあったのかな?

俺がそう思っていると、アオが凄い速さで飛んで来た。


「ご、ご主人、ジュルダンの旦那が大変だ。作戦の事を兵の奴は気づいてたぞ」

「やっぱり、相手も気づいていんだな…」

「話してる事は聞こえなかったが、旦那がやばいから早く行った方がいいぜ」

「わかった。それじゃ、作戦開始かな。皆、車に乗って!」

「博司様が車に乗れといってるので、全員急げ!」


オーガストさんが、俺より大きな声で言うと、皆急いで車に乗り峠へ向かう。

俺の車には俺の他にグレイ、オーガストさん、ファイエットさんが乗り込む。

高速車ならば、5分もかからない距離であるが、状況は良くないの感じなので

5分も引き延ばす事はきっと無理。

出来るだけ、急ぐがそれまでにジュルダンさんが無事で居て欲し。


俺がそう祈ると、通信用の魔石からかすかに声が聞こえてた。


『お前たち…に娘を・・・私が犠牲になる』


 断片的にしか聞こえないが、どうもファイエットさんについて

話してるようだけど、きっと娘を渡せとか言うある意味お約束だろう。

ただ、兵士の声とノイズとは違う音が聞こえるが、どうやら暴行を受けているらしい。

それを聞いて、俺の車に乗っているファイエットさんが泣きそうになっているが


「泣いてはダメなのです。お父さんは頑張っているのです」


っとグレイが励ましてくれた。


「ファイエットさんは走っている車から矢を射る事はできる?」


俺が聞くと


「走るモンスターの上から、射る事ができますがこれぐらいの速さでも大丈夫です」

「それじゃ、車の扉を開けるからそこから弓を射って欲しいんだ」

「わ、わかりました」

「グレイ、オーガストさん、扉を開けると風が強いので捕まってください」

「はいなのです」

「ああ、わかった」


俺が扉を蹴って開けると、風が吹き込んでくるが思ったより強い。

揺れとカーブでバランスを崩したが、オーガストさんとグレイが掴んでくれて助かった。

俺は急いで移動して、ファイエットさんと変わる。


「すみません、身体を押さえてください」

「わかった」


俺とオーガストさんとファイエットさんの身体を支えるが、坂が緩くなり

道もまっすぐとなり間もなく峠の頂上になる。

ファイエットさんが「見えた!」というと、弓矢と思えないぐらい連続で射るがこれが魔族一という腕前か。

そして、矢が飛んで行った方向で何か声が聞こえが、どうやら命中したらしいが

距離としては200mはある思うが、動いて揺れる車から矢を射って命中させるのはすごい腕前だ。



―私が兵士たちに暴行を受けていると「ぐあ」という声がして、兵士が倒れるが

兵士には矢が刺さっているが、

この矢は間違いない、ファイエットの矢だ。

矢が命中すると言う事は、間もなく車が来るがこのままでは私も轢かれてしまいます。

既に音が聞こえてきますが、立ち上がる事が出来ません・・・。

ただ、博司様の魔法石の声が届く頃です…ので、気づいてください…。

私がそう祈ると、車は私の手前で止まったのであったー



俺達が峠に着くと、倒れたジュルダンさんがいて、ファイエットさんが駆け寄った。


「お父さん!大丈夫!」


ファイエットがそういうと


「私の事は皆さんが治療してくれますので、早く水を飲むようにと皆さんにおっしゃってください」

「わかった!」


ファイエットさんが「早く水を飲んで!」っというと、その声に気づいた作業員が小屋に向かって行く。


俺達は残りの見張りの兵士を捕まえて緊縛をする。


「グレイ、ジュルダンさんの治療を頼む」

「はいなのです」


グレイがジュルダンさんの治療をするが、魔族にもヒールはちゃんと効くらしい。

傷がすぐに治って行ったが、考えてみたら効かない可能性もあったからよかった。


「ありがとうござます」

「いいのですよ」


グレイのヒールはかなり効果があったようで、ジュルダンさんの傷は見た目では綺麗になっていた。


「それより、この兵士は大丈夫なのです?」


グレイが矢が刺さった兵士3人を見てると、息はあるそうだ。


「だ、大丈夫です。中級の兵が矢の1本で死ぬ事はないです」


中級魔族は流石に矢が1本刺さったぐらいでは死なないそうだが、それでも人間でも

急所にあたる場所に刺さってるから、ダメージはかなりあるそうだ。


「話を聞くなら、矢を抜きますよ」

「いや、その前にちょっと私やりたい事があります」


ジュルダンさんは兵士たちの元に行くと、足で頭を踏みつける。


「隊長さん、ご所望の娘が来ましたが、娘の矢のプレゼントはさぞ嬉しいですよね」

「ジュルダン…いや、ジュルダン殿…すまなかった…」

「あなたは先ほど、謝って済むなら兵はいらないといってましたよね?」

「あれは・・・すまなかった…」


どうやら、俺達が聞こえない所で、そんなやり取りが行われてたみたいだ。

あと、やっぱりファイエットさんに何かしようと思ってたが、やっぱりゲスな兵はいるんだな。


「ご主人、下の兵たちがこちらに向かっているわ」


鐘が鳴っていないのに作業員が小屋へ戻ったため、怪しんで兵達が

こちらへ向かっているとアカが教えてくれた。


それを聞いて騎士5人が迎撃するが、言っていた通りあっという兵を間に倒したが

3人しかいなかったので、残りの3人は小屋へ向かったらしい。


「残りの3人もお願いします」

「わかった!」


オーガストさんが答えると、小屋の方へ向かったが5分後ぐらいで戻って来た。


「これで全員か?」


オーガストさんが隊長に聞くと、そうだとと答えるが怪しいので俺のスキルを使う。

俺のスキルはLV200になったので、一般兵がLV100までならスキルは効果あるが

隊長はLV90で残りはLV80だったので、多分大丈夫。

試しに、隊長に使ってみたが紋章が緑になったので成功だ。

ならば、残りの兵も大丈夫だが、相手がこのレベルだと5人までなのでスキルが使えるのはあと4人。

ただ、それだとアオとアカのスキルも解かないとならないので、2羽にお礼を言ってスキルと解くが

どうやら、2羽は既に懐いているらしく、解いても俺の言う事は聞くと言っている。

スキルをつかうのは2人の班長に、伝達係と予定を管理してる兵にして

情報を聞き出すことにしたのであった。

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