第24話 作戦会議

 街に戻り、ジュルダンさんの屋敷にマチルダさんとルアナさん、イゾルダさん、

ドゥニーズさんも集まり偵察結果をみんなに話す。


今回わかった事は事は以下の通り。

・峠は峠道の頂上部分にある平らな部分を利用して建設されているので果歩のスキルは使えない

・峠を下った場所に駐屯地がある

・休憩時に鐘が鳴るので、それを合図にして作戦を開始する

の3つである。


「砦の建設はほとんど進んでいない上、兵士の数も少ないのでここの突破は難しくないと思うな」

「そうね、ここは問題ないわね」

「問題は…超えた後ですね…」


砦を強行突破しても、問題は駐屯地。

峠の下にあるので、果歩のスキルで流せばいいかもしれないが

問題はその水がどこに溜るかで、自分達の道を塞いでしまったら意味がない。

さらに、道が谷間など狭い所ならいいが、崖だった場合は水を流す事ができない。


「地図だと峠を越えた先の地形は谷になっていますね」


メイさんは地図を広げてみんなに見せるが、駐屯地が造れそうな土地は

峠を下ってすぐにある狭い盆地だと思われる。

また、そこへ向かう道も谷間をなので、これならば水を効果的に流せるが問題は流した後になる。


「駐屯地を作る為に造成はある程度されていると思います」

「雨や雪が降りやすい所らしから、水が溜まりにくいよにはしているかな」

「そうよね。そうなると、水で流すのは無理かもね」

「道も関をもうけるなどして、自由に通行できないはずです」

「駐屯地の事はわからなかったの?」

「デュランさんの情報だと労働者は峠の建設現場近くの小屋に

寝泊まりしてて、峠の下まではいかないらいそうだ」


峠の下に行くのは制限されているのもあるそうだが、それ以前に峠の下に駐屯しかないので行く理由がない。

さらに、駐屯地がある側の峠道の方が高低差が大きいので、たとえ行っても帰りが大変なので行かないそうだ。


「そうなると、強行突破したあと、大水で流せばいいって訳じゃなそうね」

「やっぱり、相手は軍な訳だから、簡単には行かいな」

「敵の情報なしに無暗に突っ込むのは勇敢ではなく、単なる無謀だな」


オーガストさんが言う通り、勇敢と無謀は違う。

それに、同行してきた人達は一人も欠けずに無事に戻ってもらいたい。


「偵察に行くにも、峠を越えた先を見に行くにはリスクが大きすぎるな」

「でしたら、また鳥に頼めばいいのですわ」

「確かにそうだけど、アオとアカ以外に鳥はみてないしな」

「だったら、そのに二羽また捕まえればいいのですよ」

「そうはいっても、同じ場所にいるとは限らないだろ」

「明日、また確かめればいいだけなのです、いなかったら仕方がないのです」

「確かにそうだな」


アオとアカがいるかどうかは、明日確かめればいいとして、強行突破以外の作戦も考えよう。


「強行突破しても、結局は駐屯地が問題になりますね」

「そうなると、突破しないで建設現場を押さえる方法なんかどうだ?」


オーガストさんの提案は建設現場を占拠して、駐屯地から来た兵を果歩のスキルで流すというもの。

もちろん、むやみやたらに流すのではなく、敵の兵から情報を聞いてから行う。


「博司様のスキルを使えば、簡単に口を割る事が出来るはず」

「確かにそうですが、俺のレベルの問題でスキルが効果あるかわからないですよ」

「スキルが効果がない時は、我々騎士が尋問しますので」


騎士は戦いだけではなく尋問もするそうだけど、多分、拷問まではいかないが

暴力的な方法で口を割らせるか、魔法を使って割らせる感じかな。

どんな方法を使うかわからないが、この世界は俺達の世界と違う訳だから

その方法を批判も肯定も出来ないので、騎士達に一任して俺は口出ししない事にする。

ただ、スキルが有効なのが一番平和的とは思う。


「建設現場を占拠するにしても、兵の数はどれぐらいなの?」


マチルダさんが質問するが、ジュルダンさんの話では監視の兵は6人ほどだったが

他には峠下の詰め所に6人いるらしい。


「合計12人か、それならば問題は無いな」

「そうなんですか、オーガストさん?聞いた話では魔王軍兵士1人に対して、兵士3人がかりか

それ以上と聞いてますが、大丈夫ですか?」


相手が合計12人だと、単純計算で36人以内とならないが、俺達は合計で26人なので数が足りない。

ただ、この質問にオーガストは笑う。


「それは一般兵の話だ。我々のような騎士、特に上級の騎士ならば魔王軍の一般兵なら大したことない」

「騎士が5人いれば、魔王軍の兵12人ぐらい博司様達のお手を煩わせる事もありませんよ」

「そうなんですね」


流石騎士だけあって、魔王軍の一般兵相手ならば問題ないか。


「それに、わたしのスキルを使えば、ザコなんて一撃だわ」


確かに、マチルダんのスキルがあればチートできるし、建設現場に関しては問題ないか。


「では今回の作戦をまとめましょう」


今回の作戦は2つ。

1つは強行突破をして、果歩のスキルで駐屯地を水で流すか水没させるというもの。

この問題作戦の問題点は駐屯地の情報が全くなく、兵の数や駐屯地の地形がわからない事。

兵士や駐屯地は水で流せばなんとかなるが、下手に水を流して、自分達が通れなかったら意味がない。


もう1つは砦の建設現場を占拠する作戦。

砦を作る場所に適してると言う事は、戦いやすいと言う事。

また、兵士の数が少ないので、占拠も楽である。

さらに、先の情報も聞き出しす事も可能となって、こちらの方がいいかもしれない。

問題点は素早く敵を倒さないと援軍が来ると言う事だが、魔王軍の戦力もかなり

減っているので援軍が来るかどうかはわからない。

とはいえ、こちらも素早く魔王軍を倒さないといけない事には変わりない。


「どうあれ、この峠を越えないと先に進めませんので、やるしかないですね」


魔王の住んでいる城へは一本道なので、この峠を越えないとならない。

ジュルダンさんの話では、この峠を越えれば地形的にも戦い的にも楽になるそうだ。


「駐屯地は最近、出来たようですね。以前からあれば私もわかりますので」

「そうなると、まだ未完成の可能性もあると言う事ですかね?」

「直接、駐屯地を見てませんので、兵士に聞くしかありません」

「そうなると、強行突破をするよりは兵士から情報を得る方がよさそうですね」

「ならば、建設現場を押さえる作戦の方がよさだな」

「そうですね。では建設現場を押さえて、兵士から情報を得る方法にします?」

「そうなると、変更をお伝えしないとなりませんね」

「皆さんのやる事は同じと思いますが、強行突破ではなくなったことは伝えた方が良さそうですね」

「わかりました。あとは決行日ですが、いつにします?」

「早い方が良いですが、流石に明日は無理ですので2日後にしましょう」


基礎工事はまだそれほど進んでおらず、現在は両側の基礎作りが中心で

中央部はまだまだなので早い方がいい。


「わかりました。あと、高速車もご用意しておきます」

「強行突破をしないので普通の車でも良いとは思いますが」

「高速車ならば、峠を越えた後魔王城へ3日で到着可能です。

さらに、軍の高速車は王国侵攻時、大水によって全部破壊されてしまっておりますので」

「でも、それは3か月前なので、流石に新しいものが配備されたのではないんですか?」

「高速車は実は人間の技術で作った物なのです。魔王領では金属で車輪等を作る術がありませんので」


高速タイプの車は俺が使っていた高速タイプの馬車と同じ。

普通の馬車と高速タイプの違いは高速タイプは車軸から車輪まで金属制と言う事。

なので、かなり高度な技術

わかりやすく言えば、鉄道の車輪みたい感じでサスペンションもちゃんとある。

流石にゴムは無いが、代わりに木が表面い貼られているがこれも高度な技術らしい。

これらの技術がないため、魔王側は新しい高速車がないそうだ。

ただ、この技術は人間側でも高度な技術なのに、それを人間側がなぜ魔王側に提供したのかな?


「平和な時期に取引されてたのです。しかも、普通に売るよりも数倍も高く売れたので、結構な数がこちら側にも売られたのです」

「そうなんですね」


売った後もメンテナンスや修理のための費用も取れて、かなりの儲けだったらしい。

買った台数は合計20台ほどで10台が軍、残り10台は3つの主要な街が所有したが

この町は貿易のため4台所有しているそうだ。

ただ、他の街は軍に拠出したそうだが、この街の物はもし戦いで全てを破壊されたら

手に入れる方法がないので、残しておいた方がよいと言ってなんとか拠出を免れたそうだ。

撤退後も攻めるのではなく防御に徹するため、やはり拠出を免れたそうだ。


「そうなんですね。でも、4台で26人全員乗れますか?」


1台当たり4人しかのれないので、16人と10人も余ってしまう。


「全員乗れなくても構わないぞ」


答えたのはオーガストさんであったが、何故なんだろう。


「何故全員でなくて良いのです?」

「今朝の時点で、同行者の半分は瘴気にやられていて、ここより奥にいけないはずだ」


今朝に同行者の健康状態を調べてたが、ポーターをはじめ魔術師も含めて半数が

瘴気の影響を受けていたのは知っている。

ただ、まだグリーンに黒線なので、問題ないが峠の時点でも瘴気が街より濃いので

悪化するのは予想がつく。

多分だけど、峠の時点で黒線が出ている半分の人はオレンジになると思う。

そう考えると、黒線が出ている人達は今回の作戦までとしておいたほうがいいかもしれない。


「わかりました。黒線が出ていない半数の人が高速車に乗って、今回の作戦に参加しましょう」

「残りはどうする?」

「残りの人達は…この街に待機してもらいましょう。場合によっては、王国に戻っても

良いかもしれませんが、モンスターと戦えるかわからなにので街に残ってもらいましょう」

「そうだな。それでいいと思うぞ」

「では、作戦は13人で行います」


作戦の内容はこう。

ジュルダンさんが現場に行って、決行を知らせる。

高速車は山道の分岐点で待機。

ジュルダンさんが戻るか、戻らなくても昼の休憩時間の鐘が聞こえたら突入する。

休憩時間は兵士も見張り意外は詰所に居るので、高速車で詰め所を包囲。

抵抗されたら、騎士が戦うが話を聞くため殺してはいけないと念押しする。

ただ、俺はこれが一番の不安材料で、騎士は魔族を嫌悪しているおり敵としか見ていない。

さらに、戦いで多くの騎士が戦死しているので、余計に感情的になっている。

しかし、17歳の俺が騎士を説得出来る訳もなく、もしもの事があってもどうする事も出来ない。

残念だけど、素人がプロを説得なんて現実的には無理。

それはともかく、兵士を拘束して、情報を得てから駐屯地を攻めるというか突破する計画。



「作戦はこれでいいかな?」

「ああ、これでいいな」

「後は実行するだけです。もちろん、計画通りに行きませんが、そこまで難しい内容ではないです」


2人の騎士からも大丈夫と言われたので、この作戦で決まりだ。


「作戦は決まったけど、ジュルダンさんに1つお願いがあります」

「お願いですか?」

「はい、弓矢が使える方がいましたら、協力して欲しいのです」

「それならば、娘のファイエットを連れて行ってください。娘は街一番…いえ、魔族

一番の弓の名手と言ってもいいぐらいです」


魔族は弓を使うのが恥とされていて、中級魔族以上は使用しないため街一番の

腕前は魔族一の名手なのは確か。

それなれなば、協力してもらおう。


「では、娘を呼んできます」


ジュルダンさんは娘さんを呼び、俺達に紹介する・


「は、はじめまして、ファイエットと申します。よ、よろしくお願いしましゅ…」


最後ちょっと噛んだけど、それがかわいいな。

人間と会うのはちょっと緊張するそうだけど、それがいい。

ただ、年齢は200歳だけど、それがさらにいい。


「ファイエットさん、これからよろしくお願いします」

「こ、こちらこそお願いします…」


ペコっと頭を下げて、部屋を出て行ったが普段はこんな感じでも

弓を持つと凄い集中力を発揮しするそうだ。


「他に用件はありますか?」

「いえ、ありません」

「では、本日はこれまでですね」


作戦会議が終わり、俺達は宿に戻る。

今日は久しぶりに登山をしたけど、疲れは思ったよりない。

これが勇者補正なのか、実際に体力がついたのかはわからないけど

肉体的も強くなってると言う事は実感した。

あとは魔王軍とどれぐらい戦えるかだな。

ここから本格的に魔王軍の戦いになると思うと緊張する。

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