第22話 偵察

 翌日、ジュルダンさんが車で迎えにきて、偵察に向かう。

車は2台であるが、男性と女性と別々に乗っている。

屈強な騎士2人と車に乗るのは空気が殺伐していて息苦しが、俺が居なかったら

2人は問答無用でジュルダンさんの首を取りそうな雰囲気である。

実際にオーガストさんとメイさんはおかしな事をしたら、すぐに首を取ると

ジュルダンさんに言うが、もちろんそれは構わないないと言ってる。

騎士としては敵と車に乗っているので仕方がないかな


「地図によると、峠に差し掛かる手前から分岐する道があり、その道を進むと

砦の建設現場を見渡せる場所がありますよね?」

「はい、そこを目指しています。ただ、地図にはありますが、10年以上使用されていないので道は荒れているともいます」


その道は元々は林業の為に作られた道が、その木も乱伐されて

木がなくなり使われなくなったそうだ。

林業で使われなくなっても、山に入り狩りなどのため時々使われたそうだけど

10年前からは今は踏み入る人もほぼいなくなり道も廃道同然とみていい。


「車が入れるのは分岐する地点までで、後は徒歩になります」


分岐点で車を降り、徒歩で山を登る。

距離は結構あり、高低差もある上、廃道同然なので歩きにくい。

そのため、ジュルダンさんが先導して歩くがおかしな事をしないか

騎士の2人が常に見張ってる。


 道は所々崩れてたり、水が流れて荒れているが、植物はあまり成長していない。

そのため、草をかき分けて歩かない分多少はましではあるけど。


「み、皆さん、待ってください…」


半分ぐらい進んだ所で、果歩がバテ始めた。

俺は登山やアウトドアの経験があるので、荷物が軽い分むしろ楽ではあるが

果歩はこちらに来てある程度体力がついたとはいえ、登山は厳しいみたいだ。


「す、少し休ませてください…」

「デュランさん、休憩しましょう」

「そうですね」


現在、半分ぐらいの所まで来たが様だけど、果歩は息が荒くてこれ以上無理かもしれない。

本人は自分から行くと言ったので最後まで行きたいと言ってはいるが、この様子だと無理だと思う。

なので、果歩はグレイに任せる事にして、男性陣だけで先に進むことにした。

デュランさんによると、この辺りはモンスターが基本出ないが、それでも時土出没するとの事。

ただ、グレイでも倒せる相手みたいなので、大丈夫なはず。


「果歩様はグレイがみているので、皆さん先に進んでくださいのです」

「わかった。果歩を頼んだ」

「はいなのです」


俺達は先に進むが、坂もやや急になって来たが高い山を登っている俺からしたら

これぐらいならば楽な方だ。


「ヒロシは余裕だな」


オーガストさんが話しかけてくるが、オーガストさん鎧などフル装備で

坂を登っているが息が上がってないからすごいと思う。


「俺は身軽なので、オーガストさんとメイさんん方が凄いです」

「俺達はどんな場所でも戦えるため、訓練されてているからな」

「そうです。これぐらいなら大丈夫です」


さすが騎士様だなぁ。

ただ、ここは瘴気が街より濃いから、あまり無理はしないで欲しいとは言っておいた。


 時間としては大体3時間ぐらいだろうか、目的地へ着いた。

上の方は道が水で流されて、どこが道だったかもわからないぐらいだった。

魔王領も雨や雪が降り、この辺りは冬になると雪がかなり積もるらしい。

なので、雪解け後は特に道の痛みが大きかったそうだ。


「取りえず、着きましたが…あれが砦の建設現場ですね」


感じから高低差は50mほどありそうで、こちらからは見えるが下からだと

こちら側は山肌で陰になるので、見にくい様だ。

また、瘴気で暗いといっても昼間の時間だと十分に明るいので肉眼でも十分見える。

昨日、暗かったのは天気が悪かったからだそうで、晴れの日だとそれなりに明るいそうだ。


「確かに、建設してますね」

「あの規模の砦だと、かなり大きな砦になりそうだな」

「まだ基礎部分の工事なので、完成はまだまだ先ですね」

「元々はもっと狭い谷間でしたが、削って広くしたので砦本体の工事は始まったばかりです」

「兵士も監視のためなのか、少ないですね。ただ、この先に待ち構えているかもしれませんが、この先は下りなので果歩様のスキルで流せば良いでしょう」

「そうだな。砦ができてないのならば、多少でも強引であっても突破するのが良いな」

「しかし、作業員は徴用された者なので出来るだけ傷つけて欲しくありません…」


確かに、作業員は街の人なので、傷つけたくない。

甘いかもしれないが、流石に非戦闘員を傷つけるまでの残虐性はもっていない。


「確かに、街の人を傷つける必要はありませんね。何か合図を出して、回避できるようにきたら良いのですが」

「それなら、方法がないこともありませんが」


 ジュルダンさんならば、状況を見に現場へ訪れてもおかしくないとか。

聞いた話では作業員のリーダーはジュルダンさんの知り合いの息子さんというので

皆に合図となる言葉を決めておいて、それを言ったら皆が安全な位置に避けるというもの。


「何かいい言葉がりますかね?」

「聞いた話では、二の刻に一度休憩をするので『水でも飲むか』を合図にしてもいいかもしれません。

ただ、詳しい状況を見てから決めましょう」

「そうですね」

「なんでしたら、この後すぐに行ってきます」

「大丈夫なんですか?」

「はい。事前に伝えず、様子を見るに行くのはよくあり事なので」


ジュルダンさんのが言うには、通告した以外の不当な労働や暴力等がないかを

調べる事が出来るので、突然来てもおかしくないそうだ。

徴用といっても、給料はむしろ良くてむしろ皆行きたがるそうだ。

ただ、そうはいっても軍の仕事なので、中には暴力や、本来の仕事以外の強要が

あるので、監視や聞き取りのために抜き打ちで訪れる事はあるそうだ。


「そうなですね。では、頼みます」

「お任せください」


ジュルダンさんは心強く引き受けてくれたが、騎士の2人はあまり信用して無いがこれはしかたがない。

多分、この2人に信用して欲しいと説得するのは、俺では無理だと思う。

なにせ、騎士はエリートな訳だから、17歳の高校生が知識や知能で敵うわけがない。

なので、行動で示ししかかないと思う。


「スケッチは出来ました」


メイさんが地形や砦の建設現場のスケッチをしてくれたが、写真見たくリアルでこれならわかりやすい。

メイさんが来た理由は、絵が上手くてスケッチを写実的に描かれるからだそうだ。

俺もこれぐらい上手く書けたらいいけど、ここまでくると特殊能力だな。


「では、車に戻りましょうか」


俺達は途中で休んでいた果歩とグレイと合流し、車に戻った。

そして、先ほど話した事を伝え、ジュルダンさんのをここで待つ事にしたのであった。

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