第20話 魔王領のトイレ

 魔王領にトイレがあった事を知り、早速宿の主の元へと向かい

宿の主をベルで呼び、トイレの事を聞いてみた。


「何の御用件と思った、トイレのお話ですか。確かに、人間の国にはトイレがないと聞いてますが、トイレが珍しいのですか?」

「いえ、逆なんです。俺達が異世界から来た勇者と言う事は知っていると思いますが…」


俺は宿の主人に俺達の出界ではトイレが普及しているが、この世界の人間の国には

トイレがないのに、魔王領にはあったので疑問に思った事を話した。


「ああ、そう言う事ですか。トイレは200年前に来た勇者によって作れましたよ」

「え、そうなんですか?それじゃ、なぜ人間の国にはないのだろう…」

「言い方が悪かったですね。戦いが終わり、他の勇者が帰った後に普及したのです」


他の勇者が帰った後って事は、この世界に残った勇者が居たって事?

俺は先代の勇者が残した記録戦いについての部分しか読んでないけど

戦後の記録がどこまで残っているのだろうか?

記憶は果歩が持っているので、後で戦後の事がどこまで描かれてるか見せてもらうとして

魔王領にトイレがどのように普及したかは気になる。


「トイレがどの様に普及したかですか?」

「そうですね…」


宿の主の説明では、魔族にもトイレがなかったそうだ。

トイレがなかった頃は人間と変わらず、おまるや甕などに溜めて決められた所に捨てていたそうだ。

ただ、この街の場合、捨てる場所は街の外なので、溜まったものをいちいち運ぶのは

魔族も面倒くさいそうで、やっぱり街の道に捨てたそうだ。


 戦後、魔王城にトイレができたそうだけど、それが素晴らしいとなってトイレを作る事を義務付ける法ができたそうだ。

ただ、費用などは魔王持ちって事で、新築は始めから、既存の家はリフォームする形でトイレを設置したそうだ。

全てにトイレが出来るのは時間がかかったが、魔王領ではトイレ普及率が

ほぼ100%になったそうだ。


 話を聞いて思った事は、現在人が来てトイレが普及って事だけど

勇者召喚自体、それ以前にも行われてたならもっとトイレが普及しててもいい気はする。

もしかして、今までの人たちは別に気にしてなかったって事なのか?

あれか順応しちゃえば、いちいち作ろうって思わないから、先代の勇者は俺と果歩みたく

トイレが気になる人だったかもしれない。

でも、戦後とはいえ、魔王はどんな形でトイレ知ったのかな?

これも聞いたが、そこまではわからないという。

ただ、勇者が絡んでいるのは間違いなさそうだけど。


「ところで、出した物の処理はどうしているのです?」


トイレがある事は排泄物の処理をしないとならないが、俺はこれが一番気になるが

こちらの方がトイレを作るより問題になると思う。


「出した物はスライムが食べて、肥料にして持ってますよ」

「スライムが食べるのですか!?」


俺は思わず声が上ずるが、グレイが言うには排泄物を食べるスライムはいるが

際限なく増えてしまうので、使えなかったと言ってたけど。

その事を主に聞くと


「それはまた別のピュリファイスライムですよ。正確にはグランディールスライムですが」

「どう違うのですか?」

「ピュリファイスライムは浄化をしてくれるスライムで、排泄物以外の汚れたものを浄化して肥料や綺麗な水にします。

一方、グランディールスライムは摂り入れた水だけ綺麗にしますか、栄養は全て蓄えますので、際限なく大きくなるのです」

「そうなんですか?つまり別の種類と言う事ですか」

「はい、別の種類のスライムです。多分ですが、人間は水を綺麗にするのをみて、浄化してると思ったのでしょうね」


なるほど、勘違いで名前を付けた訳だ。

でも、だったら、魔王領からスライムをつれてかえってもいいんじゃないのかな?

実際に、スライムを捕まえた話がある訳だし。


「それは無理ですね。ピュリファイスライムはほんのわずかでも瘴気がないと生きられないスライムなので。なぜ、瘴気がないと生きれないまでは知りませんが」

「そんな理由があるんですね」

「これも聞いた話ですが、一説では瘴気から栄養を摂っていると言われてますが、解明はされていないようですよ」


なんだろう、この主さんいろいろ詳しいな。


「何でそんなに詳しいのですか?」

「この宿は人間の学者や研究者が良く泊まったので、その時に話を聞いたのです。ただ、私の知識は10年以上前なので、今はわかりませんよ」


なるほど、そんな理由か。

しかし、ピュリファイスライムを使った方法はどちらにしろ無理って事か


「お話ありがとうございます」

「いえいえ、かまわないですよ。10年ぶりに人間とお話しできたので、楽しかったです」

「こちらもお話を聞いけてよかったです」

「この街の魔族は皆、こんな感じで、人間が好きなんですよ」

「そうなんですか、ありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして。食事は食堂でお願いしますね、人間が食べても大丈夫なので安心ください」

「わかりました」


このご主人さんの言う事なら信用できると思うけど、やっぱり油断は出来ない。

信用した頃にって事もあるからね。

ただ、ご主人さんと話してること自体は楽しかった。


 ご主人さんの話を聞いた後、果歩の部屋へ行ったみた。


「果歩、博司だけど、今いいかな?」

「はい、構いません。どうぞお入りください…」

「失礼します」


俺は果歩の部屋に入るが、中は同じだけど女の子の部屋と思うとなんか緊張する。


「博司さん、何の御用ですか?」

「ちょっと調べたい事があって、記録を見せてもらえないかな?」

「構いませんが…どの部分を見たいのですか?」

「魔王を倒した後の記録はあるのかな?」

「調べてみますね…」


果歩は記録を見るが、魔王を倒した後の記述はあった。

それによると


『勇者3人のうち1人は魔王領に残った。理由はスキルで魅了した魔王と共にするためであった。

俺とジョン2人は元の世界に1か月以内に戻らないとならないが、1か月を過ぎるとと元の世界へ戻れないらしい。

ただ、魔王を倒した後、1か月以内に戻らないといけない理由は不明だ。

どこから数えて1か月なのか聞いてみたら、聖剣を祭壇に戻した時で戻さなければ良いらしいが、引き伸ばすにも限界はある』


とあった。

魔王を倒した後、王都に戻り聖剣を返したら1か月以内に戻らないいけない事は

初耳であるが、それよりも俺が知りたかったこの世界に残った勇者の事が事が記述されていた。


「なるほど、元の世界に帰らないで残った勇者がいたのか。俺とジョンってあるから、ミナホさんかな」

「そうだと思います…」


先代の勇者は男2人、女1人だったそうだから、俺とジョンと言っている時点で自然とミナホさんとなる。

そうすると、魔王領のトイレはミナホさんが普及させたって事かな、時期も合うし。

200年前だから、もう生きていないだろうから直接話は聞けないのが残念。

とはいえ、トイレが出来た理由が現在人が居たからと言うのは間違いなさそうだ。

でも、トイレットペーパーが200年経っても出来てないのは、それだけ難しいって事かな。

考えてみたら、紙を作るのは専門の人じゃないとそこまではわからないか。


「俺は部屋に戻るよ、お邪魔したね」

「また気になる事があったら…言ってくださいね…」

「その時は頼むよ」


俺は自分の部屋に戻るが、すぐ食事になった。

食事は食堂で全員で食べるが、急な事にも関わらず全員分が用意されてるが

料理の見た目は王国の料理と変わらないが、何品か日本の料理も混ざっていた。

パピーでは味噌と醤油を作ってたいたが、魔王領でも味噌と醤油があったので

日本人は味噌と醤油が恋しくなるんだなって思った。

ただ、食べても安心か悩むけど、腹が減ってるので言葉を信じて食べる事にしたが

味はむしろ王国よりもおいしいんじゃないかと思うぐらい。

食材も人間と食べるものと全く変わらなかったし、害はないとドゥニーズさんが調べてくれたので大丈夫だろう。

食料と水が安全とわかれば、この先安心できるな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る