第19‐1話 下級魔族の街 その1

 門を超えて魔王領に入が、思ったほど皆は緊張していない感じである。

隊列を組む前に点呼をするが、ここまで来て逃げる人は流石にいなかった。


「魔王領に入ったのはいいが、今日の目標はこの街かな?」

「地図によると…道は一本道のようです。歩いて…3,4時間ぐらいで目指す街につくみたいです」


果歩が地図を確認する。

この地図は貿易をしていた商人が作った物で、古い地図ではあるが先代の勇者が作った200年前の地図の写しと比較しても全く変わってないので大丈夫なはず。

貿易をしていたころは最初の街までは瘴気がかなり薄いか、ほぼなかったらしい。

ただ、開戦近くになったら瘴気が濃くなったので、濃度はコントロールできるそうだ。


「思ったよりは近いけど、歩くのは大変だな」

「仕方がないでしょ、馬車がないんだから」


合流した時、魔王領で馬を捕まえて、スキルで従属させればいいって豪語したが

馬型モンスターはいるが、いるのはかなり奥地で捕まえもすぐ魔王城だそうだ。

なので、結局馬車なしとなったが、果歩が先代の勇者の記述では2か月かかったとある。

この記録はトップシークレットなので、グレイも知らない記録だそうだ。

なので、物凄く読みたい顔をしているが、閲覧は勇者だけなのでグレイに見せられないし、内容も教えられない。

なので、ドゥニーズさんに結界を張ってもらっている。

この結界は中に入れないだけじゃなく、音も漏らさないので話を聞かれる事もないそうだ。


「こんな記憶があったなら、野営で見せてくれればよかったのに」

「実は箱に鍵があって…指令から魔石と一緒に渡されたのです…」


そういえば、果歩には魔石の他に何か渡されてるのがちらっと見えたが、なるほど鍵だったのか。

果歩は王都を出発する時に、勇者の書いた戦いの記録と地図が入った封印の箱を持たされたそうだ。

この箱は魔法がかかっていて、例え盗まれても果歩のもとに自ら戻ってくる上に

どんな事をしても破壊できないそうだ。

ただ、トップシークレットなだけあってうっかり見られた困るので、箱の鍵は別に司令が持っていて魔王領へ行く時に渡したそうだ。

そして、中身を見る時は従者ですら見るのが禁止なので、人の居ない所かこのように結界を張って読む事にした。


「でも、日本語で書かれてるから読めないんじゃないの?」

「日本語じゃ、わたしにも読めないわ」


実は内容はすべ日本語で書かれていた。

これならば読める人はいないと思うが、翻訳する人は絶対出てくるだろうかな。

しかも、先代の勇者はパピーで色々した時に日本語をこの世界の言葉に翻訳したらしいので、翻訳は出来るだろうな。

ただ、トップシークレットなので翻訳の許可はでなそうだけど。


 ひとまず、ページをめくっているが、日記的な事も書かれているがちょっと読んだら

かなり個人的な事で読まない方がいい内容もあったので、ここは飛ばす。

読むのは道中をまとめたページで、そこには


『魔王城までは2か月かかったが、通常なら徒歩でも境界の門より2週間ほどでつくらしい。ただ、道中には3つの砦があり、3つ全部を攻略するには合計1か月かかた。さらに、疲労と絶え間ない襲撃によって心身ともに疲労困憊であり歩が遅くさらに時間がかかった』


っと書かれている。


「意外と近い感じはするけど、すんなりいかないよな」

「向こうだってこちらが来るのを待ってるはずだわ」

「きっと…要所要所に兵を配置しているはずです…」


撃って出ないで自分のホームで待っているんだから、準備は整ってるよね。

しかも、俺が2か月も王都にいたから、猶予を与えてしまったなはず…。

今になって、トイレにかまけてないで、早く行けばよかった後悔。


「俺が遅れたから、準備できてるよね…」

「今更言っても遅いわ。大丈夫、魔王軍なんてまたわたしスキルでなぎ倒すわよ」

「い、いざとなったら、わたしのスキルで大洪水をおこしますから…」

「2人ともありがとう。でも、大洪水を起こしたら、俺達も足止めになるかもよ」

「そ、そうですね…」


2人のお陰で、俺も気が少し楽なったがそろそろ最初の街へ移動する事にする。

記録をしまって、結界を解いて出発する。

隊列を組んで進むが、先頭はマチルダさんとルアナさん、次は俺とグレイ、果歩とイゾルダさん、そして同行者達がついてくる。

本当は同行の騎士が先頭に立つところであるが、マチルダさんとルアナさんが自分が先頭に立つと言って説得した。

その代わり、騎士は後方と同行者の魔術師を守って欲しいと言ってある。


 魔王領進むが襲撃される気配はない。

時々、モンスターは出るが、マチルダさんとルアナさんが簡単に倒して、2匹も倒せば俺のレベルもすぐ上がる。

レベルアップが大変かもって思ったが、誰かが倒せば全員に経験値が入るシステムでよかった。

モンスターも強いから、どんどんレベルも上がる。


 魔王領に入って2時間ぐらい経ったのだろうが、皆の状態を見るためにいったん休憩。

全員の魔石をチェックするが皆緑なので問題はない。

流石にまだ瘴気の影響は受けてないが、濃度は確実に濃くなっている。

それでも、まだまだ問題はない。

再び歩みを進めるが、相変わらずモンスターは出るが魔王軍自体は出てこない。

ただ、モンスターの数が結構多くて、思ったよりも進めていない。

さらに太陽の光もあまり届かず、夜明けと同時に魔王領へ来たとはいえ暗いのである。


「真っ暗ではないけど、日の光はほとんどないな」

「そうですね…時間的に日は登っているはずですし…」

「明かりがあると目立つけど、仕方がないわ」


明かりはグレイが炎の魔法を風の魔法で宙に浮かせているが、明かりがあると言う事はそれだけ目立つ。

ただ、それでも魔王軍の襲撃が全くないので、それはそれで不気味ではあるが。

 

 休憩を終えて、歩を進めるがやはり魔王軍の襲撃はなく、モンスターが出てくるのみ。

モンスターもゴーレムやオーガと言ったものだけど、これらもうまく行けば一撃で倒せる。

とはいえ、攻撃を食らったらかなり危険なモンスターばかりである。

戦い方はグレイとイゾルダさんの魔法で牽制して、隙が出来た所をルアナさんとマチルダさん、俺が剣で攻撃するのである。

俺のレベルはマチルダさんとルアナさんより低いが、それでも与えるダメージは高く、

とどめを刺す事は出来るけど俺の腕というよりは、剣のお陰といったところかな。

この剣は王様から授かった剣だけど、由緒などを説明してたけど緊張で実は覚えてないけど凄い剣なんだろうな。


 モンスターを倒しながら魔王領の最初の街に到着した。

しかし、敵の本拠地の街であるためすぐに入らずに警戒する。


「元々貿易をしてたから人間と交流があったとはいえ、魔族は魔族だから街の中に入ってよいのかな」

「そうよね。せめて街中の様子がわかればいいけど」

「壁がるので…空かじゃないと中の様子は見られないですね…」


街は壁に囲まれていて、中を見る事はできない。

ただ、門は解放されてはいる。

これをどのように見るか難しいが、旅人はいないだろうから出入りするのは軍ぐらいなんじゃ。

さらに門には門番もいないから余計怪しい。


「いかにも入ってくださいって感じが怪しいのです」

「そうだな、罠かもしれない」

「そうですわね。でも、敵に捕まって性的な尋問をされるのも悪くありませんわ…」

「博司様、今がチャンスなのでイゾルダさんを放り込みましょう。死んでも、戦死なのです」


何のチャンスかわからないが、気持ちはわかる。

でも、この場合ルアナさんが捕まって「くっ殺せ」ってなるのがお約束…て捕まっちゃダメだって。

くっ殺も気になるが、そのを見るには俺も捕まってないといけない訳だからな。


「それはともかく、グレイ、使い魔ってわかるか?」

「はい、精霊とかを自分の使いとして偵察などに使う事なのです」


この世界にも使い魔はいるらしい。

ならば、使い魔に偵察をって思ったけど、グレイは多分使えないだろうな。

聞いてみたら


「使えてたら最初から使っているののです」


と答えたのが、確かにグレイだった聞く前から自分でいいだすよな。


「となると、どうやって偵察をするか」

「それこそ博司様のスキルをつかって、鳥を従属させればいいのです」

「ああ、それは俺ももちろん思ったが、従属させても話せる訳じゃないからな」


人間はともかく、動物やモンスターを従属させても、会話が出来なければだめだしな。


「本当ですか?説明書にかいてありませんか?」

「多分...」


説明書は一応全部目を通したが、全部しっ狩読んだ訳じゃない。

さらに、細かい字の部分があってそこは読んでいない。


「わかった、読んでくれ」


説明書をグレイに渡すと、グレイは少し読んでため息をする。


「博司様、ちゃんと従属した動物やモンスターは会話可能ってかいてあるのです」


グレイがその部分を見せると、細かい文字で読んでなかった場所だ。

そこには


『従属のスキルで従属せた動物やモンスターとは会話が可能になる』


っと書いてあった。


「うん、書いてあるね」

「書いてあるね…じゃないのです。全部読んだのではないのですか?」

「グレイ、説明書はわからない部分だけ読むものだぞ」


俺が力強くいうと、グレイは呆れるが仕方がない。

スキルを使えば会話が可能ならば、鳥を捕まえて偵察してもおう。


「近くに鳥がいないかな?」

「鳥ならあそこの木にいますが…わたしにも話してるように聞こえます…」


果歩が近くの木にいる2羽の鳥を指さすが…うん、普通に話してる。

で、その会話の内容は


「人間どもがここまで来たようだな」

「今回の勇者は幼い人ばかりだわね」

「なんか、こっち見てるが嫌な予感がしないか?」

「ええ、なんかメスの1人が呪文を唱えてるわね」

「これってまさか…」

「ですわね…」


鳥が気づいて飛び立とうとしたが、グレイが風の魔法で飛べなくすると

イゾルダさんの氷の魔法で枝と鳥の足を凍らせて逃げられない事にした。


「イゾルダさんってすごかったんだな」

「普段はあんなですが…魔法はすごいです…」

「果歩様が珍しく責めてくる何って…興奮しますわ」

「ついでなので、燃やしてもいいですか?」

「まぁまぁ、今は鳥が先だ」

「鳥は俺にまかせてください」


ルアナさんが凍った枝を大剣で切り落とし、俺が枝を受け止める。

しかし、果歩ですら「普段はなんな」って言うぐらいだから、イゾルダさんは相当だな。

悪い人じゃないけど、ちょっと変態なのがな。


「おい、人間、俺値を食ってもまずいぞ!」

「そうよ!わたし達は人間どころか、魔族も食べないわ!」


鳥はオスとメスらしいが、つがいなのがな?


「しゃべり方からオスとメスぽいけど、つがいなのか?」

「ちがうわ、オス同士よ。でも、オス同士でも愛さえあれば関係ないわよ」


まさかのオス同士で鳥のBLだと思わなかったが、今はそれよりもスキルを使って従属させる。


「何するのよ!わたしは人間オスには興味…」


俺がスキルを発動させると大人しくなるが、もちろん2羽とも従属させた。


「あれ、人間のオスも魅力的ね…」

「そうだな、人間のオスもわるくないな…」


何回言ってる事が不穏だけど、人間と鳥のBLなんてかなりレベルが高そうな事にならないように

俺は鳥に興味ないから、鳥は鳥同士で愛し合えって言っておいた。


「ところでご主人、俺達ははなにをすればいいんだ?」

「街の中の様子を知りたいから見てきて欲しいんだ。嘘は言うなよ?」


嘘を言わないように念押しするが、効果があるかはわからない。


「大丈夫、鳥は人間と違って嘘は言わないぜ」

「キャー、アオのそういうところ、わたしは好き―」

「おいおい、ご主人の前でやめろよ、照れるぜ」


話しだけ聞いてるてると、バカップルぽいけどこれ鳥の会話なんだよな。

しかもオス同士の。

俺達は一体何を見せられているんだと思いながら、2羽に偵察に行ってもらう事にした。

ちなみに、アオと呼ばれた方は文字通り青い鳥で、オネエ言葉なのは赤い鳥で名前はもちろんアカであった。


 しばらくして、アオとアカが戻ってきたが、街の中には魔王軍はおらず、住民だけであったそうだ。

もしかしたら建物に隠れてるかもしれないが、普段から街の様子を知っており

少なくとも2か月前に敗退してからは、この街には来ていないそうだ。

多分、嘘はついてないと思うけど、門がなぜ開いているかはわからなかった。


「普段、門は閉じてるんだな?」

「そうだぜ、ご主人。ただ、今日は珍しく空いてるんだよ」

「だから、わたしたちも今日はなにかあるのかなっておもったら、人間とハーフエルフが来たわけよ」


流石、しゃべる鳥だけあって、ドゥニーズさんがハーフエルフって事がわかるな。

どうも、ハーフエルフは人間と魔力が違うからすぐわかるそうだ。


「そういえば、街の人が文字が書かれたものを持って待ち構えていたわ」

「俺は文字が読めるんだが『ようこそ。勇者御一行様』ってあったぜ」

「鳥なのに文字が読めるて、やっぱりアオはインテリね」

「だから、ご主人の前はやめろよ」

「ごめんね、アオがかっこよくてつい」

「だからよせいやい」


流石異世界、鳥のオス同士ののろけが見えるとは思わなかった。

ただ、やっぱり見せられる方は複雑というか、グレイが無言で炎を出してるから制止して

せめて、燃やすのは話が終わっておからと言っておいたけけど。


「それって歓迎してるってことか?」

「そう言う事だぜ、ご主人。この街の住人は武器を持って人間の勇者と戦えるような奴らじゃねえ。

むしろ、人間とは仲良くしたいんだぜ。俺も400年生きてるが、こいつらは人間と同等どころか、人間相手でも余裕で勝てるぐらいだぜ」


流石、魔王領の鳥だけ合って長生きだな。

あと、400年生きてるって事は先代の勇者もしってるのか。

アオにその事を聞くと


「200年前は街の連中は勇者と手を組んで戦ったぜ。だから、今回も手を組んでくれるぜ」


と答えたが、嘘を言わないようにって言ってあるから多分本当だろうな。


「それじゃ、アオの言う事を信じて街の中に入ってみるか」

「本当に大丈夫?」

「スキルで嘘を言わないって言ってるから大丈夫だろう、知らんけど」

「なにその知らんけどって」

「ジャパニーズ、責任回避だ」

「…日本人ってわからないわ」


流石にアメリカ人のマチルダさんには「知らんけど」は通じなかったが、

スキルの効果を信じれば大丈夫って説明しなおした。


「と、とにかく、中に入らないといけないので…入ってみましょう…」

「確かにそうね」

「それじゃ、皆、街の中に入るよ。あとアオとアカ、ご苦労さま」


俺は2羽のスキルを解除すると、2羽はそのまま飛び去っていたが濃い2羽だったな。

そして、俺達は隊列を組みなおし、街の開かれた門に入って行ったのであった。

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