魔王領
最初の街
第18話 魔王領へ
司令との話し合いの後、兵士の前で壮行会をして否が応でも緊張が高まる。
本格的な戦いになるが、いくらスキルや勇者補正があるといは
相手は魔族な上に敵本拠地へと向かう事を問うと正直、怖いし不安であるがやるしかない。
夕食の後は明日は日の出とともに出発となるので早々に皆眠りにつくが、不安と緊張、さらに時間的な事もあり寝付く事が出ない。
さらに小屋の中では1人なので、余計不安が強くなる。
こういう時、もう1人男が居れば馬鹿な話をして誤魔化せるんだけどな。
せめて、グレイがからかいに来てくれれば…って俺は何を考えてるんだ。
…でも、こういう時にバカというか、言いたい事言えるのはグレイだけだよなぁ。
ルアナさんとイゾルダさんは出会ってまだ2日だから、まだまだ話しにくい。
果歩とマチルダさんは勇者同士という共通点があるから、2人よりは話はしやすいけど
気楽に話す間柄でもないから、眠れないからと言って会いに行く訳にはいかない。
なのでグレイだけとなるが、従者は同じ小屋で寝てるから男の俺が行く訳にもいかない。
あれこれ考えると、余計眠れないので外の空気を吸いに行く。
俺は起き上がって、外に出るが晩夏とはいえ標高的には結構高い高原地帯なので夜はそれなりに冷える。
ただ、空気が澄んでいて星空がとても綺麗で、2つの月が昇っていておりここが異世界だと言う事をさらに実感される。
「この星空は山の上で見た空と一緒だなぁ」
去年、親父と登山でテント泊をした時に見た。
正直、星や星座は見てもわからないが、ただ一つ言えることは満天の星空というのはこういう事を言うんだと思った。
空にびっしり星が輝いていて、普段住んでいる街中では見られない風景だった。
たがこの星空はそれ以上気綺麗で、この世界は空気が汚染されてない上、月明り以外の明かりがないため肉眼でも無数の星が見える。
月明かりがあってここまで綺麗だと、なければもっとすごいだろうな。
俺は思わず感動したが、この世界来て夜に外に出る事がなく今回初めて星空を見たのであった。
星空に感動するのは良いけれど、やっぱり冷える。
体感的には11月ぐらいに感じるが、着ている物が薄いせいもある。
外の空気を吸いきたが、風邪をひいたらいけないので早々に小屋に戻るが
せっかく外に出たから用を足しておくか。
トイレまで行ってもいいが、小の方だしこの時間は人もいないから、茂みに隠れてする。
俺は近くの茂みに入るって用をすますと、なにやら女性の声が聞こえる。
まさか、幽霊の類なのかな!?
通常ならば気のせいって思うが、ここは異世界のファンタジー世界。
一応、アンデットや
アンデットはヒールで倒せるそうだけど、幽霊は攻撃魔法か聖なる力の類で倒せるらしい。
一応、ヒールが使えるからアンデットは何とかなるが、攻撃魔法が使えないから幽霊だったら困る。
とはいえ、そんなものが出るなら噂になるがそんな噂はないから、気のせいだろう。
ただ、もし本物だったら困る。
気のせいか思ってもう一度耳を澄ますと、やはり声が聞こえるが、よく聞くと何となく聞き覚えのある声、
ただ、普段のしゃべり方と違って、ちょっと乙女チック。
誰かわかるが、念のため確認すると…ルアナさんの姿があった。
ルアナさんは地面に座ってなにかしてるが、用を足している所ではないので良かった。
ただ、ルアナさんが何をしてるか気になり、聞き耳を立てるが
「明日からついに魔王領へいかないといけないけど、ルアナは強いんだからがばんばれ」
と自己啓発的な事を言ってる。
ルアナさんは普段は低めの声で、一人称も「俺」だけど、自分の名前を言ってるのは可愛いな。
考えたら、ルアナさんは俺より1つ年上。
しかも、前衛の戦士をやっていると思うと、すごいよなぁ。
本人が言うには、13歳で見習いとして軍に入り、16歳で戦士として正式に入隊した直後に魔王軍が侵攻し、その迎撃が初陣の予定だった。
ただ、ルアナさんの部隊は前線に着く前に、先の部隊が壊滅したという報を受け撤退したそうだ。
その直後、勇者の従者適性があるとわかり、従者候補となった。
そして、マチルダさんが召喚されて、正式に従者となったそうだ。
ただ、従者に選ばれる条件は本人にも公表されないそうだが、各種適性があり
それを多く当てはまった者が従者にはなるらしい。
ただ、大体は魔法が使える人物らしく、魔法が全く使えない戦士が従者になるのは今回が初とグレイが言ってたな。
そんなルアナさんだけど、年齢を考えたらやっぱり女の子だな。
「お花さん、お花さん、あたし、勇者様のお役に立ってるよね、うん、やってるよね」
今度は花に話しかけてるけど…見てはいけない物を見た気がする。
このままそっと離れてもいいけど、こういう時に限って枝を踏んだり、草の音が何故か立つ。
距離はそこそこあるけど、戦士だけあってちょっとした気配には敏感そうだから、何もしないでそっと見守る。
「さて、そろそろ寝ようかな。明日は早いしー」
ルアナさんはニコニコしながら小屋に戻ろうとするが
「誰だかわりませんが、この事は内緒にしてください…みんなにバレると恥ずかしいです…」
と言われたので、気づいてるなら隠れてても仕方がない。
「ごめん、ルアナさん。眠れなくて外の空気を吸いに来たら、声が聞こえたので気になったから…」
「博司様でしたが。こちらこそ夜にこんな事してる事が知られて恥ずかしいです…」
お互い気まずいが、これはルアナさんと話すいい機会かも。
「ルアナさんも眠れないのですか?」
「は、はい、緊張して眠れないです」
「俺も緊張してるけど、いつもより早くて寝て眠れないんだ」
「そうなんですね」
本当は人恋しさもあって何だけど、流石に恥ずかしいのでこれは言わない。
「ところでさっきの事ですが…」
聞くか悩んだが、やっぱり気になる
「や、やっぱり気になりますよね、実は…」
ルアナさんが言うには、本当は可愛い物が好きだそうだけど
戦士である以上は弱い所を見せては行けないと思い、あえて俺と言ってるそうだ。
とはいえ、ずっと気を張っている訳に行かないので、夜にこっそり抜け出して今みたいことをしてるそうだ。
ただ、この事はイゾルダさんにバレてはいるそうだけど、黙っててくれるそうだ。
イゾルダさんはあんな感じだけど、基本的にはいい人らしい。
「ただ、他の方に見られるのは、やっぱり恥ずかしいです」
まぁ、あんな姿をみられるのは誰だって恥ずかしいよね。
偶然とはいえ、悪い事をしたかな。
「覗こうと思って覗いた訳じゃないけど、すみませんでした」
「いえいえ、夜だからと言ってこんな事していたわたしがわるいですし、勇者様に謝られると気が引けます…」
「勇者といえでも、謝る時は謝りますよ」
勇者とは言え、自分が悪いと思った時はちゃんと謝らないとね。
本音を言えば様付けも正直いらないけど、これは立場もあるから仕方がないか。
「博司様がそうおっしゃるならいいのですが、果歩様もマチルダ様も思っていたいたのと違いますね」
「そうかな?」
「はい。言い方は悪いかもしれませんが、勇者というのでもっと偉そうかと思いましたが、皆様お優しくて」
勇者と聞いたので、もっと偉そうにしてるかと思ったら3人とも違ったらしい。
マチルダさんはおおらかで、果歩は気弱だったけど、俺はどんな風にみえるのだろう。
「博司様は…なんでしょうね…変わった方は失礼ですかね」
「まぁ、この世界の人から見たら変わってるとは思いますので…」
魔王討伐に来たのに、トレイを作る事を考えて遅刻したのだから自分でも十分変わってるとは思う。
「来られるのが遅かったのは、果歩様も作っていたトイレのため聞きましたが、グレイちゃんが言うには変な所にこだわりがあって急いでるのに、無駄な事ばかりしていたと」
グレイの言う事は間違ってないが、そんな事を言ってたのか。
「でも、グレイちゃんも楽しかったと言ってましたよ」
「本当ですか?」
「ええ、グレイちゃんも知らな事をしたり聞いたり出来て、楽しかったと言ってましたよ」
グレイはつまらないっていてけど、本音は楽しかったんだな。
ただ、最初は本当につまらなかったかもしれないけど。
パピーでの紙づくりは、出来る範囲で手伝ってくたし、紙を漉くのも一緒にやってたし、紙が出来る時は宿に帰ってから喜んでたからな。
ツンデレ…とはまた違うけど、この年頃にある素直じゃない感じかな。
「グレイも素直じゃないので」
「結構、言いたい事はっきり言ってるとは思います」
「言いた事ははっきり言うけど、本心は結構隠してますよ」
グレイは言う事ははっきり言うが、自分の本心は意外と言わない。
実は楽しんでいたいうことは、1度も俺の前では言ってない。
ただ、畳工房への帰りは予想外な事をしたけど。
でも、結婚もしてない男女が頬とはいえ、口づけをするのはどうなんだろう。
よくあるのが、口づけは結婚の証とかだけど、ちょっと聞いてみるか
「ところで聞きたいのですが、女性が男性へ頬へ口づけはこの国では一般的なんですか?」
「え、あ、その…口づけですか!?」
ルアナさんが急に真っ赤になるが…そうか、軍に居たから恋愛経験はないんだろう。
俺も正直ないが、さすがにここまでならない。
「今のでわかりましたので、答えなくてもいいですよ」
「そ、そうですか。たとえ頬でも、結婚を前提としない男女が口づけはするものではないです。ただ、婚約をしなくても女性から男性へする時は親愛の印になるのですが…それでも、気楽にするものではありませんね」
「わかりました、ありがとうございます」
「で、でも、何で口づけの話なんかを…」
「いや、ちょっと文化を知りたくて。俺の居た世界ではあいさつで口づけをする文化もあるので、気になっただけです」
「そ、そうですか」
こういう文化がある所もあるので、嘘は言ってない。
といことは、グレイのあれは親愛の印であって、恋愛的な意味はないって事かな。
ただ、急にしたから驚いたけど、キスしたら婚約した事にならなくて良かった。
しかし、口づけの話だけでこれだけ真っ赤になるなんて、乙女だな。
「少し冷えてきましたから、そろそろ戻りましょうか」
「そうですね。そろそろ寝ないといけませんし」
「明日からはついに魔王領に入りますので、少しですが博司様と話しできたのはうれしです」
「俺もルアナさんの本当の姿を見られてよかったです」
「で、でも、他の方には言わないでくださいね…」
「はい、黙っておきます」
「ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」
「おやすみない」
俺はルアナさんと別れて小屋にもどると、気分が軽くなったのか横になったらすぐに眠りに落ちた。
―――――――――
まだ暗いうちに起床のラッパが鳴り響く。
俺もそれで目が覚めたが、時間的には短いが深い眠りだったようなのですっきりしている。
身支度を整えて、皆と集合する。
点呼が行われ、魔王領に入るための魔石が2つ渡される。
1つは瘴気の濃さを測定するもので、1つは身体の状態を示す物。
透明なクリスタルがはめ込まているが、通常は透明か緑でこれは異常なし。
黄色になると疲労や瘴気の影響で弱っている事を示しているが、見分けがつくように
瘴気の影響の場合は黒い横線が現れるらしい。
もし横線があった場合は、同行者は引き返す事になる。
赤になると危険、紫になると重篤、黒は死亡となる。
赤はまだ治療が可能な範囲らしいが、紫になるとかなり厳しく、黒は見ない事を祈るしかない。
司令からの訓示を受け、兵士たちに見送られて魔王領へと出発した。
野営地をでてしばらく歩くと、瘴気の反応が少し出てきてがまだ魔王領ではない。
境界付近は魔王領からの瘴気がわずかであるが常に流れてくる。
なので、動物もおらず植物も色が薄くなっている。
そして、魔王領の入口になる門…の跡にやって来たので。
元々は境界には国境を示す門があったが、魔王軍が進軍時破壊したらしい。
もっとも、人間側は薄いとはい瘴気がある為無人ではあったそうだけど。
「ついにここを超えれば魔王領か…」
「やっぱり、緊張するわね」
「そ、そうですね…」
「でも、勇者が怖気ついたらだめめだから、気合を入れようか」
俺はみんなの方に見返る。
「これから魔王領に入るが、誰一人欠けることなく絶対に戻る。ただ、無理はしなくてもいい、魔石の色が変わった場合は素直に引き返す事。
引き返す事は恥ずかしい事じゃない、魔王領に踏み入れただけでも十分な名誉、引き返す勇気がある者こそ真の勇者だ!」
俺はみんなにそれらしいことを言うと、皆が盛り上がる。
うんうん、主人公らしいね。ただ、決まったからいいけど、これでしらけたら恥ずかしかったけど。
ただ、グレイは「言ってて恥ずかしくないですか?」って顔をしてるが、空気を読んで皆に合わせてくれはいる。
「では、俺が最初に門をくぐる」
そう言って門に近づくくが、いざ近くに来ると足が震えるが恰好つけた以上は行かないとな。
あと、背中に皆の視線を感じるし。
なので、を出して一歩踏み出す。
そしてをゆっくりなあ歩みで門を超え、ついに魔王領に足を踏み入れたのであった。
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