紙と温泉の街

第10話 紙と温泉の街

 焼き物の街では使える窯が1つしなく、しかも便器サイズは焼けないというので

結局は粘土で便器の形を作っただけで終わったけど、焼く事が出来ず人を待たせてるから仕方がない。

次の大きな街は紙づくりが盛んな街であるパピーに向かうが、パピーは王都と魔王領の境界の中間位置になる。


「パピーは大体中間地点って事か」

「はいなのです。ただ、パピーから先は山登りになるので移動速度が落ちるのです」


王国は元々高地にあるが魔王領はさらに高地にあるそうだ。

パピーまでは平坦で道も石畳で整備されているため移動速度も早かった。

パピーから先も道も帝国へ繋がる重要な道なので整備はされていたが、魔王軍の進軍でかなり損傷してしまった。

修理は行っているが、あまり進んではいないそうだ。


「馬車は思ったより乗り心地が良くて、速度が速いな」

「この馬車は特別な高速馬車で、馬も4頭で牽引してるので早いのです」


体感であるがママチャリで全力で下り坂を走ってる感じなので、20㎞/hぐらい出てるかな。

移動距離は馬の疲労や駅ごとに馬を交代、さらに時々レベルアップをするので移動時間は1日100㎞あるかないぐらいかな。

本来ならばパピーまでは4日で着くそうだけど、レベルアップに2日使うので6日かかった。


パピーへ到着し、何時もの様に宿へ向かう。

ポトゥリの宿については触れなかったが、トイレがない意外はかなりい宿だった。

あと、風呂も温泉ではないが、魔法石による人工温泉と謳っていたが

この世界はトイレがない割に、風呂に対しては何故か力を入れている。

なので、人々は清潔であるんだけど、トイレがないからプラスマイナスゼロかややマイナスな気がする。

もちろん、この宿も風呂に力を入れているが、この宿は温泉宿であった。


「パピーは元々湧水が多く、植物が多く自生していたので紙づくりが盛んなのです。さらに、温泉も湧いていて、湯治にも来る人が多くて侵攻前は盛況だったのです」


俺達の泊る宿も温泉宿であったが、異世界に何故かあるが時々ある和風宿なのである。

ちゃんと畳みなうえ、浴衣も用意されているうえに、本来ならば宿は夫婦以外は男女別々の部屋でないといけないのだが

パピーに関しては特別に男女一緒の部屋でも構わないという特例があるそうだ。

なんでこんな特例があると思ったら…前回召喚され勇者によるものだった。


 グレイの説明では前回、勇者が召喚された200年前に魔王倒した勇者が

この街の温泉が気に入ったので温泉街として整備。

しかし、宿は夫婦以外の男女別々の部屋という法があり、同じ部屋に男女一緒に泊まれない問題にぶつかった。

本来ならばここで宿を諦めるか、男女別々にして終わるのだけど勇者の頼みと言う事で

パピーの温泉街に限っては男女同室に法を制定したと事。


 そうなると、自然と結婚前の男女がパピーに集まってくるようになる。

さらに、王国一の紙の生産地でもあるので、職人も多いので職人の慰安にもなり、街が益々発展していったの事。

街が発展すると周りの街が衰退して反発が出そうだけど、パピーは他の街から離れているせいか

周辺への影響は少ないため、反発もなかったそうだ。


「なるほど、そんな理由があったのか」

「はいなのです。なので、グレイも博司様と同じ部屋なのです」

「嫌なのか?」

「グレイは別に着替えを見られても平気なのです。でも、博司様には見せないのです」

「心配するな、俺だってみない」

「それはそれで何か悔しい気分なのです」


一体どっちなんだって言いたいが、グレイはそういいながら普通に俺の居る横で着替えてる。

俺もマナーとして見ないようにしているが、グレイの裸を見た所でどうって事ないし。


「ひとまず、着替えたのです。しかし、この服は前が空いてて紐で縛るだけの不思議な服なのです」


グレイは浴衣を知らないので珍しい服と思っている。


「それに、ここにはベッドがないのです。どうやって寝るのです?」

「布団を敷いて寝るんだよ」

「布団とはなんですか?」

「説明すると、ベッドに敷いてあるものを畳に敷くって感じだ」

「何かよくわからないのです。あと、履物を脱いで草の敷物の上にいるのもよくわからないのです」

「畳というものだ」

「タタミというのですか。しかし、博司様は詳しいのはなぜなのです?」


グレイにこの宿は俺の居た国と同じ造りだと教えた。


「つまり、博司様の国の家はこんな感じなのですか?」

「全部ではないが、こんな感じかな」

「そうなのですか」


グレイは日本の文化の一端を知って関心してはいるが、どうも畳は馴染めないようだ。


「履物を脱いで床の上にいるのは何か落ちつかないのです」

「そうか、俺は寝っ転がる事が出来るて、楽でいいぞ」


俺は座布団を枕にして、ごろごろするが、やっぱりこうじゃないとね。


「博司様が気持ちよさそうなので、グレイもやってみます」


グレイも座布団を枕に寝っ転がる。


「確かに、これは楽でいいのです。ただ、このまま寝てしまいそうです」

「ああ、油断したら寝るから、風呂へ行くぞ」

「そうするのです」


俺達は温泉へ向かうが、今までの話しでわかるようにこの宿を作ったのは間違いなく日本人。

という事は、前回の勇者にも日本人がいたって事だけど、異世界に日本人多すぎだよ。

でもまてよ、日本人が作ったって事はトイレがあるはずだが、部屋の中におまるがなかった。

もしかすると、もしかするかもと思って、グレイを先に風呂へ行かせる。


「グレイ、先に風呂に行ってくれ」

「ここは男女別なので、構わないですがどうしたのです?」

「ちょっと確かめたい事があってな」

「はぁ、わかったのです」


グレイも大体なんだからわかったようで、そのまま風呂へ向かう。

俺はトイレがありそうな所を探すと、「ここで用を足してください」いと書いてある部屋がありそこに入ってみると…トイレと言えばトイレであった。


 このトイレは源泉かけ流しの湯などを使って、排泄物を流す仕組みになっている。

ただ、側溝の上に石でできた足場があり、座って用を足す仕組み。

隣りとの仕切りはないが、一応男女別々になってはいる。

まぁ、おまると比べればかなりいいが、求めていたトイレとはまた違う。

しかし、このタイプのトイレがあるならば、水不足の王都はともかく

少しはトイレが普及してもいい気はするが、なぜ普及しなかったのだろう。

200年あればそれなりに普及しそうであるが、多分、大量の水を常に流さないといけないからっと思ったのだろう。

どうもこのトイレの水は排水を流してるのを利用している様だし。

あと、この宿を作った勇者も設計だけして、戻ったかからトイレはこういう物だと思いこんだ可能性もある。


 とはいえ、この世界で俺が試作したトイレ以外に、トイレらしいものがあってよかった、

後、よく見ると紙が置いてあるが…つまり、これはトイレットペーパー。

つまり、この世界にもトイレットペーパーがあったって事か!

でも、トイレットペーパーがあるなら、他にの所にもあっても良さそうだけど

この街が紙の生産地だからかもしれないが、200年も経ってるならこれこそ普及してもよさそうだけどな。

もしかして、とっても高いからなのかな。


 試しに紙に触ってみたが…なにこれ、堅くてゴワゴワしてる。

拭けない事もないが、これで拭いたら逆に傷つくよ。

なるほど、これが原因で普及しないのかも。

しかし、200年あればもっと柔らかい紙を開発できそうだけど、この世界はトイレ周りに無頓着だな。

とはいえ、トイレに近い物があるのはちょっと嬉しかった。



 トレイを確認したので、風呂へ入る。

この宿は男女別なので、宿場町の時みたグレイが入ってくる事はない。

男湯の方に入ってみたら…おい、何故グレイの着ていたものがあるんだ。

この宿ももちろん、俺とグレイの貸し切り。

なので、脱いだ服がある=グレイとなる。

それに、風呂に明かりもついてるし


「おい、グレイ、いるのか?」

「はい、居るのです…ってなんで女湯にいるのです」

「それはこっちのセリフだ。こっちが男湯と書いてあったぞ」

「博司様、グレイをだまそして覗く気なのですか」

「どうせ湯あみ着を着てるだろ?」

「いえ、一人なので着てないのですよ」

「え?」


グレイが言うには、ウィルダさんが1人なら全裸で風呂に入っていたので

それ以降、男女別々の風呂なので全裸で入るようになったそうだ。

俺としてもそれは変な事ではないが、混浴でない風呂に男女が入るのはどうかと思う。


「あのー、勇者様、すみません…」


声をかけられたが、声の主は女将であった。


「女将さん、どうしたのですか?」

「お伝え忘れたのですが湯を張ろうとしたら、女湯の樋が壊れる事がわかりまして、今は男湯しか使えないのです」

「そうだったのですか」

「なので、ご一緒にお入りくださいまで」

「わかりました」

「あと、我が宿は湯あみ着はご用意していませんので。この宿を作った先代の湯者様が『風呂は全裸で入るもの』という教えだそうです」

「わかりました・・・」

「勇者様、すみませんでした。では、ごゆっくりと」


女将は頭を下げて、出て行ったが…先代の勇者はやはり日本人だな。

まぁ、それは別にいいとして、グレイと一緒に入る訳にはいかないから、出るのなで待つか。


「俺はグレイが出たら、入るよ」

「別にグレイは構わないのですよ。裸を見られて恥ずかしがる間ではないのです」

「誤解を与える言い方をするな」

「どんな誤解かはあえていいませんが、ライトの魔法石は高いのですよ、節約するために入ってください」

「わ、わかったよ…」


この風呂の明るさから、ライトの魔法石は1つや2つじゃないのはわかる。

宿の人は特に何も言わないが、節約する暗黙の了解。

なので、仕方なく風呂に入る。


「グレイ入るぞ」

「どうぞなのです」


風呂に入ると、湯気が結構ありグレイも湯につかっているので別にいいか。

俺は入浴前に、身体を洗うがグレイが


「以前から思ったのですが、博司様は何故石鹸で身体を洗うのです?」

「俺の国ではこれが普通だからだって、グレイは石鹸で洗わないのか?」

「入る前に湯で流しますが、洗う事はないのです」


そういえば、宿場町でも石鹸で身体を洗ってなかったな…。

毎日、入浴すればそこまで問題ないが、共同浴場ならば浸かる前にやっぱり身体は洗った方がよいだろう。


「いいか、グレイ。家の風呂はまだいいが、宿とか他の人とはいる場合、石鹸が置いてあったらそれでまず身体を洗ってから入るんだ。なければ仕方がないが」

「なんでですか?」

「身体を洗って入った方が湯が汚れないからだ」

「そういうことですか。でも、源泉かけな流しで常に入れ替わってるから平気と思うのです」


この世界でも源泉かけ流しという言葉あるようで、グレイも宿場に着く前に普通に言ってた。

もしかしたら、先代の勇者が広げたかもしれないけど。

そういえば、入浴施設での肺炎の問題は循環式がいけなくて、源泉かけ流しは問題なかったような。

だから、大丈夫なのか…。


「ま、出来たらでいいよ。入る前に掛け湯もしてるしな…」


俺のトーンが急に低くなったからグレイは不思議そうに見てい入るが、珍しく俺が引き下がったので気にはきてないようだ。


 身体を洗い、温泉に浸かるが…やっぱり、この歳でも温泉はいいよね。

馬車での移動も、案外疲れるし、レベルアップもしないとならないし。

ちなみに、今のレベルは120まで上がったが、120だとLV50のモンスターのみ追加されただけ。

カンストがレベル999なのにLV50は低い気もするが、どうも説明書によると

モンスターのカンストは100らしい。

ただ、これはいわゆるボス以外のザコ敵キャラであり、ボスは100を超えているとか。

どうも、魔王のレベルは255らしいが、レトロゲームの上限みたいだな。

ただ、魔王を従属刺せるのは倍以上のレベルが必要だから、魔王ってやっぱり強い。


 そういえば、結局このスキルって練習で使った以外、使っていない。

使う場面そのものがまだいないていうのが正しいけど。

俺達はボスも倒すイベントもないし、魔王軍とも戦わってない訳だからなぁ。

試しにモンスターに使ったけど、地のモンスターは元々大人しいし

襲てくるモンスターもパピー周辺でLV20ぐらいなので、このレベルだと正直ザコ。

というか、999もいるのかって感じだけど、バランス調整ミスか魔王が255ならば

ラスボスに「俺TUEEEEの為に999にしたぜ」って感じがするのは気のせいか。

2日間はLVアップに費やしたが、道中でもそれなりに倒して6日で上がったのは50だからペースは確実に落ちてるからなぁ。

魔王領へ行くレベルがどれぐらいいるかわからないが、通常の敵も強くなるから300はいるのかもしない。

ただ、これに関しては、説明書には書いてなかった。


「グレイはお先に出ます」


俺がスキルの事を考えてると、グレイが先にでた。

グレイがでたなら、気も楽なのでゆっくり入る事にする。

もちろん、ライトの魔法石の消費は抑えるけど。


 続きだけど、トイレ作り以外はイベントは0なので、スキルを使うよなイベントまずない。

ただ、魔王領に入ってからイベントは発生するはず。

あと、大人しいモンスターか弱いモンスター相手にしかスキルを発動してないから

このままだと、魔王相手にスキルを使うのは無理そうだしな。

そうなると、修行イベントをこなさないといけないなが、そんなイベントあるかな?


 あった場合、問題はその相手だけど、従者の一人が若いけどめちゃくちゃ強い女性戦士がいるらしい。

最初に召喚された人もめちゃくちゃ強いらしいから、この2人に頼むかな。

ただ問題は、待たせた分、この2人はなんか怖そう。

絶対、説教はされると思うけど、もしかしたらご褒美かも?

いやいや、説教じゃなくて問答無用に殴られるかもしれない。

流石に死なないが、ヒールで治せるからぼこぼこにされるのも覚悟しておこうかな…。


 あと、久しぶりに魔法を覚えたけど、素早さをあげるハイダッシュを覚えた。

これは5秒だけ、かなりの高速移動が可能だけど、つまりこれを使わないと魔王に接近してスキルを発動させるのは無理かな。

ただ、これを使っても、魔王に触れるぐらい接近なんてできるかな…。


 色々考えていたら、のぼせそうなので風呂を出る。

そこそこ長く入ってたので、流石に脱衣所にグレイはいない。

ライトの魔法石も、電気のスイッチみたく1か所に触れれば全部消える仕組みなっているので消すのも楽だった。

俺は浴衣を着て、明かりを消して部屋に戻るが部屋には既に布団が敷かれていたのであった。

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