第6話 魔王ルイーサ

所変わって、魔王領。

こちらも勇者を待つ者が居たが、それは魔王であった。


「人間軍は勇者を異世界より呼び出して、境界まで来たが何をしておる」


魔王は報告に来た大臣に問いかける。


「偵察に出したバッドの情報では、どうも3人目の勇者がまだ到着しないための様です」

「確か、異世界から呼び出した勇者は3人そろわないと、妾を倒せないようだが?」

「そうのようでございます。ならば、今のうち勇者2人を倒す方法もおありかと」

「何を馬鹿な事を言っておる、2年かけて王都直前まで侵攻したのに、ほぼ勇者1人で境界まで押し戻されたのだぞ?ここで打って出ても、無駄な犠牲がでるだけじゃ」

「魔王様のおっしゃる通りです」

「それに、魔王領に入ればこちらの方が地の利がある」

「そうでございます」

「とはいえ、妾も待ちくたびれた。今日はもう奥に戻る。誰も入れるのではないぞ」

「わかりました」


魔王は奥へ姿を消した。


「召喚されたのは2か月前のはず、もう1人は一体何をしているのだ…」

「もしかしましたら、我々が知らない秘密兵器を作っているのかもしれません」

「そんなもの造れる事が可能なら、既に出来ておるはず」

「多分ですが、勇者しか造れないものなのかもしれません」

「確かにそれはあり得る・・・」


大臣とその部下かは秘密兵器を作っていると勘違いするが、実際はトイレを作っていた。



―――――


一方、奥に戻った魔王はと言うと。


「ねえ、ねえ、あたし、今日も魔王らしかったかな?」

「はい、魔王らしかったですよ、ルイ―サ様」

「ありがとう、ブルーナ」


魔王はブルーナに甘えるが、これが魔王ことルイーサ・アンフェールである。

そして、ブルーナは側近で護衛であり、姉のような存在である。


「あんな風に言ったけど、勇者と戦わないと駄目かな?」

「侵攻に失敗しましたから、そうなりますね」

「そうだね…でも、痛いの嫌だし、戦いたくない…」

「だったら、初めから侵攻しなければよかったのですよ」

「だって、だって、あの場の雰囲気とノリで、侵攻はしないって言ったら、言い訳を考えないといけないし、みんなやる気だったし…」

「理由はわたくしが考えますから、あの場で振ってくれればよかったのですよ…」

「そ、そうだった…」


実はルイーサは気が弱くて、魔王の器ではなかったが先代の魔王には子供がルイーサしかいなかった為、ルイーサが後を継いだのであった。


「魔王の娘だから後を継ぐのは良かったけど・・・その理由がね…」

「まさか先代の魔王様が男性から女性になって…前回来た勇者と駆け落ちしたなんて言えません…」


ルイーサが魔王になる200年前にも行った侵攻作戦であったが

その時召喚された勇者のスキルが「魅了」であり、性別関係なく勇者を好きになるものであった。

そして、ルーサの父親は勇者に「わたし好みの女の子になったら結婚する」と言われて、女性になり駆け落ちしたが・・・その勇者は女性であった。


「まだ、相手が男の人で、女になったなるのはまだわかるけど、なんで、女の人なのに女になるのかわからないよー」

「それが勇者のスキルですので…」

「しかも、何で女性同士で子供ができたのかわからないよ。しかも、パパが妊娠して子供産んでるし…」

「こればかりはわたしもわかりません・・・」


先代の魔王は勇者の魅了のスキルによって魅了されて戦争をやめたのであった。

ただ、表向きは3人の勇者に負けたとなっているが、こんな事は公表はできないのである。

この事を知っているのはルイーサと、母親と魔王の元側近2人、そしてブルーナだけである。


「父親が女になっただけじゃなく、女の人と結婚して、しかも母親になったのに、あたしがグレなかったのが不思議だよ…」

「魔王なのでグレたほうが正解だったのでは…」

「そう言われてれば…確かに」


人間の場合、グレると問題であるが魔王場合はむしろグレ他方が良かったのではないかと思う。


「でも、魔王がグレたら勇者になるんじゃないのかな?」

「何故でしょうか?」

「だって、魔王は人間で言う所の悪い事をする人でしょ?そうなると、良い子をする方がおかしいから、ぐれたら勇者になるんじゃないのかなって思った」

「わたしも良くわかりませんが…どうなんでしょう」

「でも、あたしみたいな気弱な魔王よりは、強い魔王の方がいいよね」

「強い魔王のなのは良い事ですが、皆の前で演じられているルイーサ様も演技は十分、魔王らしいと思います」

「そうかな?」

「はい、皆の前で強い魔王を演じられてる時点で、魔王…いえ、指導者として十分です」

「ありがとう、ブルーナ。でも、勇者と戦わない方法はないかな?」

「無理です、ありません。素直に散ってください」

「えー、あたし死ぬの?」

「それはわかりませんが、勇者のスキルが死なないスキルである事を祈るしかないですね」

「そ、そんなー、まだあたし300歳だよー」


ルイーサの見た目は16歳ほどであるが、実年齢は300歳。

1000年単位で生きる魔族にとっては十分子供である。

ちなみに、ルイーサは460歳を超えてるが、見た目は23歳ほどである。


「こんな胸が大きくて、かわいい美少女魔王なんてそうそういないよー」

「自分でかわいい美少女と言わないでください。それに、美少女が好きだと限りません」

「そ、そうかな…」

「それに、今回の勇者は女性2と男性1人で、2か月でわが軍を押し返したの大半は女性勇者1人によるものったとの事です」

「でもでも、パパの時みたく、女が好きな女性かもしれなでしょー」

「多分、それはないので、男性勇者に賭けるしかないですね」

「でも、1人でうちの軍を押し戻せる勇者がいるから、きっとあたしは儚く散る運命…。パパでさえ子供を産んだのに、あたしは産まずに死ぬんだ…。神様、お助けを」


ルイーサは神に祈るようなポーズをとる。


「魔族が神に祈ってどうするのですか」

「だって、だって、死にたくないんだもんー!!」


ルイーサは椅子の上でバタバタと暴れる。


「侵攻してしまった以上、こうなるのは決まっていたのです。諦めてください」

「そんな事言っても…」

「過去の例から、3人のうち1人は攻撃系以外のスキルのはずなので、それに期待しましょう。現在わかっているのは1人は攻撃強化、1人は湧水だそうです」

「攻撃強化はともかく、湧水は大した事ないんでしょ?」

「そうでもありません、大水によってわが軍に大打撃を与えましたので」

「そ、そうなの、何それ恐い」

「なので、3人目は攻撃系じゃないと言う事は決まっておりますので、3人目に期待しましょう」

「だったら、パパみたく魅了みたいのがいいな。わたしもお嫁さんになれるしー」

「ルイーサ様はお子さんが居ないので、次期魔王はどうなるのですか」

「グランパの時代から魔王の座を狙ってる、ワグ家に譲ればいいって」

「ワグ家はまた人間と戦いを起こしますよ?」

「どうせ勇者を呼ばれて負けてるんだから、いいじゃない。むしろ、いまからかわってほしいな」


ワグ家はアンフェール家と並ぶ魔王領の家柄であり、魔王の座を長年奪おうとしているのである。


「譲っても構いませんが、ワグ家の事ですからルイーサ様は幽閉されるか、処刑されるだけですよ」

「う、それは困る」

「なので、諦めて勇者と戦ってください」

「うー、やっぱりそうなるね…」


ルイーサは諦めるがやっぱり諦めれない様子である。


「長く話してたら、ちょっと用を足したくなったから、トイレに行ってくる」

「はい、わかりました」


ルイーサはそういって部屋にある個室に入ったが、そう魔王領にはトイレがあったのであった。

この事をしったら博司はどう思うのだろうか。

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