閑話

第5話 果歩とマチルダ

 博司達がウィルダとトイレの話をして居る頃、先行していた勇者2人は博司を待っていた。


「3人目は遅いわね。召喚されて2か月経てるのに、なぜ来ないのかしら」

「何か理由があると思います…。魔王軍が撤退した後は地のモンスターしかいないので、レベルアップに手間がかかって遅れてと思う…」

「そうだとしても、召喚されたのは2か月前なのよ。通常の馬車移動で王都から1か月、レベルアップしながでも2か月経っても着かないのは遅いわ」

「な、何か理由があると思います…」

「そうだとしても、そろそろ到着する手紙が来てもいいはずよ」

「そ、そうですが…」

「私がせっかく魔王軍を押し返したのに、3人揃わないと魔王領に入れないのだから、さっさときなさいよ!」


 イライラして近くの木を殴ると、木が倒れたがこれは勇者のスキルであった。

木を殴ったのは初めに召喚された勇者であるマチルダ・オハラ。

アメリカ出身の23歳の女性で、身長169㎝、Eカップで髪は金髪での髪はセミロング。

自宅が大規模農家で、家の手伝いをしていた。

性格は基本的におおらかであるが、流石に2か月も待っているとイライラしている。

スキルは攻撃力強化で、武器はもちろん、棒切れでも最強の剣と同じ攻撃力にできる。

ただし、攻撃力が増すだけで耐久性は上がらないので、耐久力がない物は1度や2度ほどで壊れてしまうが

自分自身の身体に賭けた場合は、魔力で保護されるためダメージは受けない。

なので、先ほどの様に木を殴っても怪我をせず、木の方が倒れたのであった。


 一方、気弱に話してる方は水元みずもと果歩、16歳の高校1年生。

身長148㎝、Aカップで腰のあたりまである黒髪。

マチルダの次に召喚されたが、召喚された時点で王都直前まで迫った魔王軍は

マチルダによって魔王軍は王都と魔王領の中間位置まで押し戻されていた。

性格は引っ込み思案で、気弱であるが知識は豊富。

ただ、この世界に来て3か月経つが、食事にはなれたものの、博司同様にトイレ事情になれない。

スキルは湧水で、どこからでも水を湧かせる事が出来る。

水の量はその土地の水分量によるものの、魔力レベルが上がれば自分で好きな量を出す事ができる。

ただし、調整が非常難しいため、失敗すると災害を引き起こしてしまう。

実際に、調整をミスして大変な事になったが、運よく水が流れた方向が魔王軍が陣取る

場所だったため魔王軍に大きな損害を与える事が出来たから良かったが、使い方を間違えると大変な事になると言う事はわかった。


「果歩だって、早くこの世界から帰りたいでしょ?」

「か、帰りたいです、3人目が来ないとどうにもなりませんし…」

「私はこの世界のトイレは気にしないけど、果歩はまだ慣れないでしょ?」

「は、初めの頃と比べたら少し慣れました・・・。それに、簡易的なトイレを作ってもらいました・・・」


果歩は博司以上に、この世界のトイレになじめず、大変であったが野営の場合、穴を掘るか

直接川に流せるようにして、簡易トイレを作って個室に近い形にしてるため室内でおまるでするよりは良いと思っている。


「そ、それに、わたしのスキルで簡易的に水洗トイレにしてますので…」

「なるほどね、それでにおいがすくないのね。どこに流してるか知らないけど」

「ちょっと離れた池に流してあります…。元々、水が綺麗じゃないので飲み水などにできませんし、水自体はわたしが出すのでも問題ありません…」

「池に何か伸びてて何だと思ったら、そういうことだったの」

「は、はい…。ただ、勾配があるとはいえ、多めの水がないと行けまでちゃんと流れないですが…」


池までは大体、20mで木樋に設置してあるものの、しっかり流すには結構な水量が必要となる。

1回当たり、35リットルは使うので結構な量である。


「使うのはわたしと、マチルダさんだけなので…」

「でも、果歩が寝ている時は水が流せないから、その辺の茂みでしてるわよ」

「じょ、女性がそんなところでしても大丈夫ですか…」

「この世界の女性は皆平気だわ。小はそのまま、大は穴を掘ってそこにして、埋めておしまいよ」

「拭くのはどうするのですか・・・」

「葉っぱでいいわよ。ただ、かぶれる葉っぱがあるから、そこだけは気を付けないと」

「それでよく平気ですね…」

「今はなれたわよ。第一、日本みたく質のいい紙なんてない事ぐらいわかるでしょ?」

「わかりますが…それでも…」

「もう、日本人は繊細過ぎなのよ」

「マチルダさんもアメリカで暮らしてるのなら、あまり変わらなと思いますが・・・」

「私はアメリカの田舎の農家だから、ある程度は平気なのよ」

「そうでしたね・・・」


果歩は慣れたと言ってるが、本音はまだだ無理。

それでも、小はまだいいとして、大の方が問題。

野営では、仕方がなく穴を掘って埋めていたが、拭く物がない。

途中にあった製紙業が盛んな街で、使えそうな紙を大量に購入できたから今はそれをほぐして使っている。

とはいえ、トイレットペーパーと比べら硬い紙ではあるので、普通に使うと逆に傷が出来てしまう。

なので、出来るだけ薄く、柔らかくして破れないようにして使っている。

使い心地は悪いものの、葉っぱや木でするよりはかなりましなのである。


「それに、この世界は生理用品がありませんし…」

「確かにこれだけは私もつらいわ。一応、生理用パンツに真綿を挟んで吸収できるけど、すぐ交換しないとならなしね」

「そう考えると、この世界の女性はすごいですね…」


この世界の生理用品はビキニパンツのような物に真綿を敷いて吸収させるという物。

ただ、真綿はかなり高級品らしく、勇者だから使えるとの事だ。


「こう考えると、他に異世界に行った女性は大変だったのでしょうか…」

「私はそういうの、まったくわからないけど、日本では多いの?」

「異世界にに行ってる話は多いです…。あ、もちろん創作ですが・・・現実に自分が来る事になるとは思っていませんでした…」


 しかし、日本人はいったい何人異世界に行ってるのかは気に所ではある。

もしかしたら、万単位の人間が異世界に転生したり、転移してるいるかもしれない。

その中には女性も含まれていると思うと、トイレや生理用品の事を気にする人はそれなりの数はいると思う。


「王国にトイレがないですが、魔王領はどうなっているのでしょうか」

「魔王領にもやっぱりないと思うわよ」

「そうですよね・・・」

「それか、魔物ってトイレにいかないんじゃないの」

「でも、人や動物の姿をている魔物もいますし、魔王も見た目は人間といいますし」

「確かにそうだけど、魔物が排泄するって考えた事なかったわ…」


2人が悩んでいると、1人の女性が声をかけてきた。


「あらあら、お二人と何をおはなししてますの?」

「ドュニーズさん、こんにちは。実はですね・・・」


2人でモンスターが排泄をするか考えたと言うと、笑いながら


「ええ、モンスターもちゃんとしますわ。この国では肥料にしてますし」

「そうなんでか?」

「ええ、妹が元王国の農学者だったので、肥料の事も詳しかったですの」

「妹さんもハーフエルフなんですか・・・?」

「もちろんそうよ。ただ、わたくしと逆で妹は見た目は子供ですわ」


ドュニーズはウィルダの姉のハーフエルフ。

身長は高く、胸も豊満で正反対で博司が想像した通りのむっちりお姉さんタイプ。

職業は元王国魔法師で、魔法学院で教師をしていた。

辞めた理由はウィルダと同じ理由で、土地を譲られてたため2人で管理する為だった。


「同じ姉妹でも違うんですね」

「小さいのは妹だけなのですの。本人はそれを気にしていますので」

「見ための事は言いませんので…」


果歩も年齢も小さい方なので、ウィルダの気持ちはわかる。


「ただ、肥料に出来るのは地の大人しいモンスターの物でしたが、魔王軍の侵攻でどうなってしまたかわかりせん。

道中に家畜やそのモンスターの死体がありましたから、多分かなり数は減ってでしょう」

「そうなると、肥料がないってことかな?」


マチルダは農家なので、畑の事に関しては詳しい。


「わたしはあまり農業に詳しくないのですが、妹が言うには元々肥沃な土地でも荒らされた上、肥料がないと来年の作付けが出来るかどうかわからないと」

「そうなると、新たな肥料を作らないと駄目じゃない?」

「でも、家畜もモンスターも居ないとなるとどうするば・・・」


2人が悩んでいると


「あの・・・人間の物を使えばいいのです・・・」


と果歩が言った。


「人間の物を肥料に出来るのですか?」

「はい、やり方は動物と変わりません・・・多分。動物の物を利用してるなら・・・病気の心配もないと思います」

「そうなのですね。でも、人間の物は捨てたり、川に流しますよ」

「トイレを作って、溜めて・・・作ればよいです・・・」

「トイレとは果歩が作ったあの小屋ですね?」

「はい・・・。わたしの作ったのは水で流してしまうので、肥料に出来ませんが・・・溜めて、同じように発酵させれば・・・肥料に出来ます・・・」

「なるほど、面白いお話ですね。きっと妹が聞いたら喜びます」

「もちろん・・・色々問題はありますが・・・」

「妹は困難があればあるほど、やる気を出すのでかまいませんよ」


ドゥニーズは面白い事を聞いたので、妹に手紙を出すといって去っていた。


「しかし、果歩の国は人間の物を肥料にしてたなんて面白いね」

「数十年前まで使ってたました・・・」


日本では戦後でも下肥は利用されていたが、その後化学肥料の普及や規制も使われる事がなくなった。


「へー、そうなんだ。それはともかく、3人目は一体何してるのよ」


別の話をして忘れたと思われたが、またマチルダはまたイライラしはじめた。


「もしかて、トイレを作っているかも・・・」

「まさか、そんな事して遅くなる訳ないでしょ」

「3人目はわたしと同じ日本人で17歳の男の子だから、きっとトイレを気にしてると思う・・・」

「日本人はトイレを気にすぎるのよ。男なんて、女より楽なんだから気にする訳ないでしょ」


マチルダが呆れていたが、翌日、魔法によって高速長距離飛行が出来る伝書鳩によって王都から届いた手紙には


『トイレを作る事を考えて王都を立つのに、2か月かかりました』


という旨が書いてあり、マチルダは果歩が言っていた事が本当で何も言えなかったのであった。

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