第4話 農学者
猫にスキルをかけて、飼い主の所へ案内してもらったが
小屋の中から出てきた飼い主は予想外に、背の小さい女性だった。
こういう所に住んでるのは魔王軍の残党とか、元傭兵や兵士のごついおっさんが
出てくると思ったからちょっと予想外だった。
見た目は背が小さく、見た目は女の子だけど、白衣を着なれている感じから見た目より若くない気はする。
ただ、初対面で年齢の事を言うのは失礼になるか。
「うちの小屋の前で騒がしいけど、何だい君たちは」
「騒いでしまってすみません、俺はら召喚された勇者です」
「博司様、相手が何者かわからないのに、勇者と名乗ってはいけないのですよ」
聞かれたからつい勇者と答えてしまったが、やっぱりいけないなかったかな。
「ああ、君が今度来た勇者か。心配しないでくれ、僕は王国で農学を研究をしていた者で怪しい物ではない」
「そうなんですか」
「もしかしたら、ウィルダさんなのですか?」
農学研究をしていたと聞いて、グレイは女性の顔を見るとこのように言う。
「知っているのか、グレイ?」
「はい、知っているのです。王国一の農学研究者なのですよ。魔王軍が攻めてくるちょっと前に王国の農業研究所をやめて、行方不明と聞いたのですがこんな所にいたのですか」
このひとが研究者と聞いたけど、服装とか見てちょっと納得かも。
「若いのに、僕の事を知ってるとは、流石だねグレイ君。君も7歳で魔法学院に入って天才少女として有名だから知っているよ」
「ありがとうなのです」
2人とも見た目は小さい女の子だけど、ウィルダさんは農学博士で、グレイは7歳で魔法学院…名前からして、王国の魔法学校に入ったって事か。
「2人ともすごいんだな」
「グレイは100年の1度の天才と言われているのですよ」
「僕はこう見てても王国一の農学者と周りが勝手に言っててね。見た目はグレイ君とあまり変わらないが、これでも40なんでね」
ウィルダさんは自分で年齢を教えてくれたけど、思った以上に年上だった。
40歳で外見はグレイと変わらないけど、40歳なのに何でこんな姿なんだろう。
良く居る何故か年を取らないキャラなのか、それとも普通の人間ではないのだろうか。
「おや、勇者君は何故、僕がこんな姿と思っているね」
「わ、わかります?」
俺の考えてる事がばれて慌ててしまう。
「40でグレイ君と変わらない見た目ならば、誰でも気になるからね、説明するよ」
ウィルダさんは実はハーフエルフだそうで、姿は人間に近くて耳は普通というけど
この世界のエルフも耳は長いらしい。
「僕は人間の母親に育てられたが、時々、エルフの村に行って植物の事に教わり、その知識を農学にいかしてるんだ。あと、念のために言っておくが僕は一応、女だからね」
「そうなんですね。ハーフエルフだから、40歳でも見た目がグレイと変わらないのですね」
俺は何気なく言ったけど、ウィルダさんは
「そういう訳じゃなく、これは個人差だよ…」
あ、しまった、これはかなり失礼だった。
「す、すません、身体の事を言ってしまって」
「いや、ハーフエルフの成長は確かに、普通の人間よりも遅い。ただ、40になればもう少し成長してる…はずなのに、なんで13からこの体型なんだ…。母親の家系も父親のエルフの家系も皆、背も胸も大きいのに…」
ウィルダさんの表情が曇るが、しまった地雷を踏んだ。
悪気はなかったが、この世界は俺の住んでいる世界と違うから聞いただけだけど
初対面・・・いや、初対面じゃなくても、体の事を言うの駄目だよな。
「すみません、悪気はなかったもので」
「いや、こちらこそ悪かった。勇者君はこの世界の事を知らないから、知識の為に聞いたたのだろ?」
「は、はい、そうです」
「僕も知識欲で失礼な事を何度も言ってるからね。気持ちはわかるから気にしてないよ」
「それならよかったです」
「ところで、君達はなぜこんな所に来たんだ?」
ウィルダさんに従属のスキルを試して猫にここへ連れてこられたと説明する。
「なるほど、僕の飼い猫にそのスキルを使ったと言う事か」
「はい、勝手に試してすみませんでした」
「解く事ができるならかまわないよ。しかし、勇者君は何故まだこんな所にいるんだ?」
先に来た2人は魔王軍を蹴散らせて既に魔王領の境にいるから、疑問に思うのは仕方がない。
最も遅く召喚されたといっても、2か月あればレベルアップもできて追いつく所であると思うし。
「実はですね…」
ウィルダさんにトイレの話をすると、興味深そうに聞いていてくれた。
あと、排泄物は肥料になる事も話した。
「なるほど、勇者君の言う事は興味深い。確かに、トイレというのものは大切そうだね」
「わかってくれましたか?」
「つまり、モンスターや家畜の排泄物の代わりに、人間の物を使うって事なんだね」
「そうなんす…って今、モンスターや家畜の排泄物っていいましたか?」
「ああ、言ったよ。元々、肥沃な大地ではあるが収穫量を増やすために、家畜やモンスターの物を発酵させて使っていたよ」
そうか、既に動物やモンスターの物を利用した肥料があるのか、そりゃそうだね。
ここにある畑だけでも、サッカーグランドの広さがあるし。
でも、使っていたと過去形だったな。
「使っていたという事は、今はどうしているんですか?」
「この畑は残っていた肥料を使ったのだけど、魔王軍の侵攻で家畜や人間に懐く地のもモンスターは殺さて激減、または別の場所へ逃げてしまったからね。さらに、魔王軍が2年間留まって、作付けもできな上に荒らさてしまったから大変だよ」
「そうだったんですか」
「作っておいた肥料も台無しになってね。だからまた作り直さないとい行けないんだが、肥料を作るのに時間がかかるうえに、その原料も激減してしまったからね。ただ、勇者君んからいい事を教えてもらったよ」
なるほど、ちょうどいいタイミングだった訳か。
とはいえ、人間の排泄物から肥料を作るのも時間はそれなりにかかる。
「作ると言っても、使えるまで時間がかかりますよ?」
「既に、大部分の作付け時期は過ぎてしまったから今は使わない。冬の野菜はこれからではあるが、畑を荒らされてしまっているから、作付けするにしても来年さ。だから、今から肥料を作るのちょうどいい頃合いだよ」
確かに今から作っておけば、来年に肥料として使える。
ちなみに、今は晩夏の頃。
「それなら、トイレを作って肥料を作りましょう」
「肥料の作り方はわかるのかい?」
「多分、やり方は同じのはずです」
ウィルダさんに造り方を聞くと、土に埋めて発酵させるか葉っぱと一緒に発酵させるとの事だった。
「基本的に同じですね。ただ、肥料にする場合、熱がないと病気の原因になるものがなくらないらしです」
「つまり、熱を加えるという事かな」
「加えて作る方法もありますが、おがくずや藁、葉っぱを混ぜてると自然に熱が発生するらしいですが、これもうろ覚えでよくわかりません」
「なるほど。どうあれ、そのトイレを作り、排泄物を集めて、発酵をさせれば肥料になるのは同じだね」
「土に埋める方法あるようですが、安全性を考えると発酵させるのが良いみたいです。あと、発酵時はかき回さないといけないらしいです」
「少し、手間はかかるんだね」
「しかも、匂いがすごいそうなので」
「ここは周りに人がいないし、元々肥料を作っていたからここなら大丈夫だよ」
ここは宿場から離れており、元々肥料を作ってから問題ないらしい。
しかし、それでも風向きによっては匂って苦情がでそうな気がする。
「匂いに関しては、道に捨てられているから皆気にしないよ。王都なんて酷いものだったろ」
「た、確かに」
王都も排泄物が捨てられてて、匂いが酷かったから大丈夫かな。
でも、宿場町はそうでもなかったけど。
「宿場は人が少ないから、川に流してるからね」
宿場は湧水で出来た川がある為、そこに流してるそうだ。
「そうなんですね」
「しかし、肥料になるなら川に流すのはもったいない。肥沃の土地でも魔王軍の侵攻で荒らされたから、元に戻すのは大変だよ。ここは僕が結界を張って隠しておいたから荒らされなかったが、他は本当に酷いものだよ」
聞いた話では、王国に侵攻して2年経ってるらしい。
王国軍と隣りの帝国軍の連合軍で戦っていたが、真央軍によって帝国からの支援路が遮断されて王国軍と帝国軍が分断された。
それまでは連合軍によってギリギリ押さえていたが、分断された事により王国軍は一気に押されて
王都の間近まで魔王軍が迫って来たので、勇者召喚を行って押し返したそうだ。
「学者さんなのに魔法が使えるのですか?」
「ハーフエルフだからね、魔法は使えるよ」
「ハーフエルフは物凄い魔力を持っているのですよ。魔法を使うぐらいなんてことないのですよ」
「僕は戦う魔法は苦手だったが、結界など防御の魔法は得意でね。魔王軍ですらこの結界は壊せなかったよ」
「あれですか、行方不明だったのは結界の中にいたからなのですか?」
「ああ、そうだよ。この畑は僕の知り合いから譲り受けたものでね。ここは湧水がありも食べ物もあったから、問題なかったよ」
「でも、この広さ全体に結界を張るのはハーフエルフとしても、無理だと思うのですよ」
「もちろん、僕だけでは無理だ。今はここにいないが、僕の姉のに協力してもらってね。姉もハーフエルフだが、僕よりも魔力がすごいよ」
「そうなんのすか」
いくら魔力が人間よりついと言っても、広い土地に結界を張るのは1人では無理ととの事。
あと、お姉さんはどんな感じの人かな?
こういう時のパターンはお姉さんはむっちり大人タイプかも。
「お姉さんは今どこにいるのですか?」
「姉は勇者達と戦っているよ。だから勇者君もそのうち会えるはずだ」
「そうなんですね。あと、勇者君ではなく、博司と呼んでください」
「そうだね、名前で呼んだ方がいいね。勇者は3人いるしね、わかったよヒロシ君」
「ありがとうございます。あと、この世界の野菜について教えてください」
「ああ、わかったよ」
ウィルダさんは野菜について教えてもらったけど、ニンジン、タマネギ、キャベツ、カプと言った身近な野菜ばかりだった。
中にはこの世界特有の野菜もあったけど、見た目は赤い白で味は酸っぱいけど甘みを感じるので、トマトみたいな味って言えばいいのかな?
とにかく、変わったもので名前はベーナサイって言うらしい。
この世界の言葉で「甘酸っぱい菜っ葉」って意味らしい。
「このベーナサイは僕の実験的に作ったので売り物ではないが、自分で作ってなおいてなんだが、正直、これはどうやって食べたかわからない」
「生のまま食べるのもよいかもしれませんね」
「確かに、このまま食べるのがよいかもしれない」
「あとは、火を通したら酸味が減るかもしれないです」
「なるほど、加熱するのはまだ試してないな。流石、ヒロシ君、僕の知らない事を教えてくれる」
「いえ、俺が居た世界に似た感じの味の野菜がありましたので、それを参考にしてみました。ただ、この野菜で同じようにできるかわかりませんが」
「それがわかっただけでも良かったよ」
俺とウィルダさんが野菜の話で盛り上がってるとグレイが
「野菜の話で盛り上がってる場合でないのです、そろそろ先に進みレベルアップしないといけないのですよ」
「すまん、忘れてた。あと、トイレの話もまとまってない」
「博司様は勇者と言う事をすぐ忘れるのですよ。先に行ったお二人もお待ちなのですよ」
「トイレは作り方がわかれば、宿場の職人に頼んで作ってもらうよ」
「そうですか、ありがとうございます。紙と描くものがあれば絵を描きますよ」
「中にあるから入ってくれため」
小屋に入ると髪とペンを借りて絵を描くが、2人には理解されなかった。
「わかるような、わからないような絵だね」
「博司様は絵心がないのですよ」
はい、俺には絵心がありませんのでこの結果はわかっていました。
ただ、俺が説明したてグレイ描いてもらったら、完璧な絵ができた。
トイレの形状は洋式だけど、形状は汲み取り式。
もう少し言うと、収納ボックスぐらいのサイズの箱に土とおがくずを詰めて、水分は排出される仕組みになっている。
ある程度溜まったら交換しする方式で、30人ほどしか住んでいない宿場なのでこれで大丈夫と思う。
「つまり、水分を減らす事で発酵をし易くするのだね」
「はい、そんな感じです。土を入れる事でそのまま畑の土にする事が出来ます」
「なるほど、それは良さそうだ」
「ただ、俺もうろ覚えなので、うまく行くかわかりませんが」
「僕は研究が好きだから、基本的なやり方を教えてくれれば構わないよ。楽しみが増えたからね」
「ありがとうございます」
「ただ、トイレの形状だけは1度実際に作ってくれないか」
「はい、それは任してください」
「それでは今から、職人に頼みに行こうか」
「そうですね」
この話を聞いてグレイは横で、早く行きましょうって言ってるが、1つ出来れば後は
ウィルダさんに任せられとグレイを説得して、何とかこの場を収めた。
だって、ついに念願のトイレ作りが試作であるがスタートした訳だし。
いわば、やっとスタート地点に立てた訳だ。
ただ、今回のトイレは小規模な所のトイレだから王都など都市では使えないかもしれないが
トイレがどういう物かわかるだけでも大きな一歩でなのだ。
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