トイレ作り

宿場町

第7‐1話 トレイを試作する その1

 ついにトイレを試作であるが作り始める事になった。

ただ、俺もトイレなんて作った事ないがうっすらだが知識がある。

アウトドア好きの親父と小さい頃からキャンプや登山に行っており、

その時にバイオトイレやコンポストトイレの話を聞いているのは覚えている。

バイオトイレはおがくずを使って、分解させるタイプで、コンポストトイレは肥料作りに使えるおような事を言ってた気がする。


 コンポストトイレは土とおがくずを入れて、水は分離する構造になっていて

固形のみで肥料にする仕組みだったはず。

溜まったものをかき回す必要があるのか、ないのかよくわからないけど、かき回した方が良かった気もする。

あとは交換するタイミングがいまいちわからないけど、あまり大量だと交換作業が大変なので

半分ぐらい溜まったら交換すると言う事にしてみるかな。


 次は形状だけど、やっぱ洋式かな。

素材は陶器がないから、木で代用するしかないか。

溜める部分だけど、木で作って交換式にするよりも、石造りにして土を入れ替える方式にほうがいいかな?

ただ、土をどうやって運ぶかという問題もあるけど、これはウィルダさんに相談しよう。


「土の運搬方法は馬車ですればいい。実際にそうやって土を運んでいる」

「そうですか、ありがとうございます」

「しかし、土を書き出して入れ替える方式だと、手間が大変な気するよ」

「俺もそう思うのですが、木だと重さに耐えられ物となるとかなり重くなると思いまして」

「確かにそうだね」

「プラスチックはこの世界にないしな・・・」

「プラスチックとはなにかな?」

「プラスチックは俺の居た世界にあった、軽くてある程度の強度がある素材です。似たような物があればいいのですが」

「多分、この世界にはそのような素材は無いと思うし、あれば物好きの僕が知らないはずはないよ」

「なるほど…」


 やはり木で代用するしかないようだ。

また、中身だけの入れ替え作業も匂いの問題があるから、木箱を作って入れ替える方式にしてみようかな。


「木箱を作って、そこに溜めて木箱ごと入れ替える方法にしてみます。木箱はコロを使って入れ替えす方法にしたいと思います」

「やり方はわかったが、1度どれぐらいの重量があるか試してた方がいいと思うよ」

「わかりました。でもどうやって試したらよいですかね?」

「ひとまず、木箱に土を入れて押してればいいと思うよ」

「そうですね」


ウィルダさんは家の中にあったミカン箱ぐらいの木箱を持って来て、土を詰め動かしてみたけど

結構な重さで動かせないが、さらに排泄物をこぼさないように運ぶ事を思うと厳しいな。


「このサイズでこの重さだと大変ですね」

「そうだね、もっと違う方法を考えるしかないね」

「方法としては・・・もっと小さい入れ物にして溜めておいて別の所に溜める方法ですかね」

「その方が土を詰めるよりも楽かもしれないね」

「そうですね。甕か小さい樽をつかうのがよいかもしれません」

「それならば、僕が趣味で作っているワインの樽の余りがいくつかあるからそれを使ってみよう」

「ありがとうございます」


小屋の裏に回ると、空き樽が2つあったのでそれを使うにした。

ワイン樽ならば漏れる心配もないと思うから良かった。


「樽を使うのは良いが、このまま使うのかい?」

「このままだと匂いが出るので、おがくずを詰めればいいと思います」

「なるほど。おがくずは宿場の材木店に行けば大量にあるので貰う事にしよう。僕なら顔が利くし、おがくずはどうせ捨てるものだからね」

「そうですか、ありがとうございます」


俺とウィルダさんが盛り上がっているが、その横でグレイがつまらなそうに俺たちを見ていた。


「グレイはつまらないのです」


グレイがつぶやきが聞こえたが、興味がないのと2か月待った挙句、また足止めになったらこうなるのも仕方がないか。


「すまん、グレイ。これが出来たら先に進むよ」

「いつできるのですか。今日明日は我慢しますが、3日以上待てないのです」

「うっ…」


簡易的な物でも、雨水が入らな用にしないといけないから、1日や2日で出来るものではない。

頑張れば1日でできるかもしれないが、正直、厳しい。

かといって、グレイだけ行かせる訳にもいかないから困った。


「グレイ君、2か月も待たされて、また待たされたら怒るのもわかる。さらに、人を待たせているのだからね。ただ、形になれば後は僕がやるし、動物やモンスターの排泄物で肥料を作っているので、作り方は同じだと思うよ」

「はい、作り方は同じでと思いますので、トイレさえできればウィルダさんでも出来ると思います」

「やはりそうだよね。なので、もう少し待ってくれないかな、グレイ君」

「・・・納得はしませんが、ウィルダさんがそう言うなら、わかったのです」


グレイはウィルダさんに言われて、渋々受け入れたけど納得はしてない。

ただ、グレイの言ってる事も正しくて、既に2か月も待たせてるのにさらにまたさせるのは確かに良くない。

しかし、この世界にトイレが普及する歴史的瞬間かもしれない。


「グレイ、出来るだけ早く済ませるから」

「頭をなでて喜ぶと思ったら、大間違いなのです」


口ではこう言ってるが、頭を撫でたら喜んでてて、このツンデレめ。

グレイはスキルにかからなかったのは腹黒っていうより、単に素直にないだけだっただろうな。


 ウィルダさんと共に宿場町へ戻り、木材店へ向かった。

おがくずと便器を設置するために、トイレ用の小屋を造ってもらう。

ただ、問題はどこに造るかだけど、場所と人数から木材店の敷地に造るを親方が承諾してくれた。


「つまり、そのトイレで俺達が用を足して、俺達が出したもので食い物が出来るって言うのか」

「はい、そう言う事です」

「なんか複雑だが、ウィルダ嬢は今まで動物やモンスターの物で作ってるから気にしなくていいとはいってるが」

「なに、僕のも混じってるから気にしする事はないよ」

「その言い方だと、変な趣味があるように聞こえるが、食い物の為と思えば仕方がないか」


 家畜もモンスターも魔王軍によって激減し、残っている肥料も少ないため来年以降の

食糧不足は間違いないとウィルダさんが多少大袈裟に脅し半分で説明したら納得してくれた。


「で、そのトイレはどんな感じなんだ」


 この木材店は大工も兼ねているので、形さえわかればすぐ建てれるそうだ。

今考えてるのは

・排泄物をためるのは樽で、横に取り出し口を作って交換が出来るようにする。

・樽を取り出しやすくするため、床の高さは樽のより高い。

・樽には3分の2ほどおがくず詰める

・便器は洋式タイプ

・水分は分離させず、肥料にする時攪拌する


としたけど、水分の分離は状況をみてウィルダさんが対応するとの事だった。


「小屋の中で1回転できるぐらいの幅で高さも余裕があった方がいいと思いまので、一番大きい人に合わせればいいと思います」

「あと、用を足す所は座るようにするってあるが、椅子みたい感じか?」

「まぁ、わかりやすく言えばそうですね」


グレイが書いた絵を見せる。


「なるほど、丸椅子のほとんどが穴みたい感じか」

「出来そうですか?」

「形は出来るが、耐久性はわからんぞ」

「今回は試作なので。本来は陶器という焼き物で出来ています」

「焼き物だと壊れないか?」

「普通の焼き物と違うのですが、詳しくはわからないです」

「そうか。ま、材料が木ぐらいしかないから木で作る。おかくずは捨てるほどあるかが、もしかして売れるのか?」

「普及すれば売れると思いますよ」

「そうか、そうか、捨てる物が金になるなら、そのトイレやら興味が出てきたぞ」


親方は捨てるしかないおがくずが金になる子も知れないと思ったら、興味がでてきた。

おがくずは集めて燃やすだけだったが、トイレの消臭のやくわりもあるし、

肥料を作るのに使えるし、さらに緩衝材にもなるので使い道はいっぱいある。

とりあえず、今回はトイレの為に使う事をメインにする。


「どんなもんかわかったら、作るのは早いぞ。やろうと思えば今日、完成するが2,3日あれば大丈夫だろう」

「そうですか、ありがとうございます」

「いいってことよ。勇者様の頼みでもあるが、それでもちとのんびりしすぎじゃないか」


親方は笑いながら言うが、親方の言う事も正しいからな…。

グレイはさっきよりは機嫌は直ったが、それでもまだむすっとしている。


「思ったより早く終わりそうでよかったのですよ」

「悪いな、グレイ。今思えば2か月も悩まないで、すぐ出発してウィルダさんに会えばよかっただけだったよ」

「今更言っても遅いのですよ。でも、反省するのは良い事なのです」


なんか上から目線な感じがするけど、グレイの言ってる事が正しい。

ただ、早く出発してたらウィルダさんに会えたかは正直わからない。

偶然、ウィルダさんの飼い猫にスキルを使ったから会えたけど、早く出発してたら

飼い猫に会う事自体できなかったかもしれないが、こればかりはわからない。

とにかく、トイレの試作が出来ればこの世界の人たちにトイレの存在を教える事が出来るからかなりの前進だ。

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