第7‐3話 トイレを試作する その3

 翌日、トイレを作る続きをするが、朝早く親方の所に来た時には既に外観は完成していた。


「親方、おはようございます」

「おう、ヒロシ、おはようさん。見ての通り、外観は完成したぞ」


親方が言うには、日の出とともに作業を始めて、俺が来た時には外観は完成していた。


「仕事が早いのはよいですが、疑う訳ではないですが耐久性は大丈夫ですか?」

「ヒロシが不安に思うのはわかるが、俺達は自分の仕事に自信を持ってるから手は抜かないぞ」


親方が試しに小屋に体当たりするが、びくともしない。

親方は身長190㎝ぐらいあり、筋肉でごついので体重も100㎏以上はあるんじゃないのかな。

いわば、ラグビー選手みたいな体格。

その親方が体当たりしても、平気って事は安心だけど、木造とはいえ丈夫そうな壁に体当たりして何にもない親方もすごいな。


「外観は出来たが、中は何も造ってないぞ」


扉を開けるとる床だけだったけど、便器がわからないから仕方がないかな。

あと、開ける穴の大きさも便器を設置して開けた方がいいかな。


「ひとまず、樽を入れてみてから便器を作りましょう」


横の取り出し口から樽を入れてみたが、ひとまずピッタリ。

試に出してみたが、出すときそこまで傾かないので中身がこぼれる事もない。

ただ、おがくずでも重量はそこそこあるので、重量を考えて目測で余ってる部分の半分ぐらい溜まったら交換する感じでいいかもしれない。


「ひとまず大丈夫そうなので、便器を作りましょう」


グレイの描いた絵にある通り便器を造るが、形状はほぼ椅子。

あと、匂いが出るので明り取りを兼ねて小窓を作っておいた。

夜に使うかわかからないが、天気が悪い日は暗いと思うので、燭台も設置しておいた。


「その便器とやらの高さはどうするんだ?」

「そこが難しいですね、低いより高い方がいいですが難しいですが基準が難しいので、俺の座高にします」

「ま、それがいいだろうな」


簡易の椅子を作って俺の座高に合わせてた。

便器は木で作るが、尿がかかる事を思うと表目に漆喰か粘土を塗った方がいいかもしれない。


「親方、内側に粘土化漆喰を塗った方がいいと思いますが、ありますか?」

「漆喰ならあるから塗っとくぞ」

「お願いします」


親方は弟子達に漆喰を作らせて便器内の表面にに塗り便器が完成したが漆喰が乾くまで使えない。

あと、座る所には布を張ってもったけど、便器はこれでいいかな。


「おはよう、みなさん。ヒロシ君が宿が居ないと思ったら、かなり作業は進んでいるいるようだね」

「おはようなのです。朝起きたら博司様が居なくて驚いたのですよ」


 実はトイレが出来ると思って興奮してあまり眠れなくて、日が登った時間に目がさめてそのまま起き、やる事もないのでここに来た。

ここに来たのは時間的には多分、8時ぐらいだと思うけど、親方達はそれ以上に早かった。

今は大体9時過ぎぐらいかな?


「便器を設置すればひとまずトイレの完成だから、親方、お願いします」

「おうよ」


便器のサイズに合わせて床に穴をあけ、親方が便器を仮止めであるが設置して

つい手に念願のトイレが完成したのであったが、漆喰が乾かないのでまだ使えない。


「漆喰が乾くまでどれぐらいかかりますか?」

「この季節なら1日で乾くが、確実に乾く事を思うと2,3日は待った方がいいかもな」

「つまり、まだ使用できませんね・・・」


せっかく試作トイレが出来ても使用できないので、すこし肩を落とす。



「漆喰なら、僕が魔法で乾かしてあげるよ。もう一度取り外す事はできるかな?」

「完全に固定してないから大丈夫だ」



便器を取り外し漆喰外の所は布で覆うって、ウィルダさんが呪文を唱えるて漆喰に風を当てる。

要は風で乾燥を速めているが、普通の風じゃないらしく直接当たると危険なので離れていて欲しいと言われたけど、どうも水分だけを飛ばす風の魔法らしい。

なので、直接当たると人間も水分を持っていかれると言うから、結構危険な魔法だな。

ただ、布とかで覆えば大丈夫らしい。


「うむ、これだけ乾燥してるなら大丈夫だ」


魔法で短時間で完全に乾燥したので、これですぐ使えるそうだ。


「それでは、今度こそしっかり固定してください」


今度は便器をしっかり固定して、試作であるがついにトイレが出来た。


「ついに、ついに、この世界にトレイが出来たぞ!」


俺は思わず叫んだが、皆は不思議そうに見ててちょっと恥ずかしかった。


「ひとまず、おめでとうと言っておくよ」

「ウィルダさん、ありがとうございます」

「何が嬉しいかわかりませんが、喜んでいるので、グレイもおめでとうというのです」

「グレイもありがとう。そして、親方達もありがとうございます。お金はいくら必要ですか?」

「これは勇者様とウィルダ嬢の願いだから、金はいらねえ」

「し、しかし・・・」


思ったよりも立派な物を作ってもらったらので、流石にただはどうかとおもったが


「そもそも、勇者から金なんてとれえって、わかるだろ」


と言われてた。


「そ、そうですね」

「その代わり、ちゃんと魔王を倒してくれよ」

「はい、わかりました」


親方にまた背中を叩かれたが、親方は加減してないんじゃなくて、加減をしても力が強すぎるだけだと、さっきの体当たりを見て思った。


「ところで、どうやって使うのです?」


グレイは質問する。


「女の子は普通に椅子に座るようにするだけでいいぞ、脱がなくてもいいから、グレイ座ってみて」

「もちろん、脱ぎませんが、見られるのは変な気分なのです」

「いいから、座るんだ」


グレイが座って見せるが、椅子に座ると同じなので、何か変らしい。


「なんか、この格好で用を足すのは変なのです」

「女の場合、どちらも頬杖をつく感じでちょっと前かがみになったほうがいいらしいぞ」

「何で博司様がそんなこと知ってるかわからないのですが、こうですか」


グレイは頬杖をつく感じで前かがみになるが、多分大丈夫と思うけど実際にしてもらわないと何とも言えない。


「多分、平気だと思うが、実際にしないとわからないな」

「博司様は覗きの趣味があるのです?」

「いや、そんな趣味もないしい覗かないぞ」

「皆さんの前なので、信じるのです」


その言い方だと、皆の前じゃな無かったら信じなさそうだな。

グレイはやり方がわかったから、トイレから出て行った。


「ところで、一つ聞いていいかな?」


ウィルダさん質問してきたので聞いてみたが


「女性はどちらも拭かないとならないが、拭くものはないのかな?」

「そういえば、考えてませんでした」


この世界にはもちろんトイレットペーパーはない。

それじゃ、何で拭くかと言うと、布切れか木を丸く削ったもの、葉っぱである。

王都に居た時は布を使ってたけど、何度か洗って使いまわしていた。

この世界には植物の原料にした石鹸はあるが、消毒剤がないのがね。

石鹸である程度は綺麗になるが、やっぱり消毒をしたい。

ただ、この世界にワインなどお酒があるから、それを蒸留して消毒用アルコールをつくればいいし

さらに言えば蒸留酒を作って新たな商売ができるな。

そう言えば、ブランデーはワインを蒸留したものだったはず。

ウィルダさんは趣味でワインを作ってるから、後で教えてあげよう。


「布切れか使えそうな葉っぱですかね?本当は紙があればいいのですが」

「拭くのに紙を使うのかい?」

「紙と言っても普通の紙でなく、専用の紙です」

「ヒロシ君の世界ではそんな紙もあるのか、感心するね」

「この世界も紙があるので、作ろうと思えば作れると思います」

「そうなんだね。紙づくりはこの街では1軒ある事はあるが、作っている時間は無いかな」

「そうですね・・・時間がありません」


本当はトイレットペーパーも作りたいが、先に進まないとならないので紙づくりまではしてられないか。


「ヒロシ、話してる所悪いが、男の小はどうするんだ?」

「一応、小は立ってやればいいですが、汚れる事を考えると座った方がいいかもしれません」

「男も女みたくやるのか?」

「別に普通に立ってやっても構いませんよ」

「そうだよな」


最近は男も家では座ってする人が増えてるが、この世界じゃ受け入れられないだろう。

俺は基本立ってやるけど、家ではいろいろ言われから仕方がなく座ってやっている。


「出来たのはいいが、誰かに使ってもわらんとな」

「そうですね」

「せっかくだから、ヒロシ、おまえがしろ」

「俺がですか?」

「そうだ、お前が望んだものだからな」

「確かにそうですね・・・ただ、でるかわかりませんが」


まだ食事もしてないし、起きてすぐしたのででるかわからない。

ただ、一応、大の方が出るかもしれないから試しててみる。


「すません、大の方をするので何か拭くものを…」

「いい感じの葉っぱがあるぞ」


親方は近くの木から葉っぱを3枚ばかり取って手渡した。


「ありがとうございます」

「この葉っぱもそのまま入れてもいいのか?」

「葉っぱも肥料になりますし、発酵を進めるのでかまいませんよ」

「わかった、それじゃしてこい」

「わかりました。あと、扉は締めますからね?」


流石に皆に見られながらするのは無理。

あと、出るかどうかわからなかったが、座ると出てきたのでトイレってすごい。

この世界に着て2か月ちょっと、久しぶりにちゃんとトイレで用を足したよ。

やっぱリ、トイレって素晴らしい、この素晴らしさを皆に教えたい。


「どうだった、ヒロシ?」

「ちゃんと出ましたよ。あと、やっぱりトイレはいいですよ」

「そんなにいいと思うと、俺も試したくなるな」

「それでば親方もどうぞ」


親方も入るが、出てくる時間から小であったが親方も感動していた。


「確かに、トイレはいいな。した後、かたずけなくていいし」

「でしょ、トイレっていいでしょ?本当はした後、手を洗うともっといですが」

「そうなのか?」

「はい、終わった後に石鹸で手洗をするのが一番ですが・・・俺の世界でも洗わない人はいるので構いませんが」

「そうか」


本当は病気の予防のために手洗したほうがいいけど、俺の世界でもまともに手洗いしている人は少ないから強くは言いえない…。


「なんか、ヒロシ君と親方を見てたら、僕も用を足したくなったよ」


ウィルダさんもトイレで用を足すが、やはり感動していた。


「ヒロシ君に教えられたように、前かがみでやったが、あんな風にでてたんだね。自分の体の構造も知れてよかったよ」


ウィルダさんは違う意味で感動していたが、俺は「そうですね」としかしか言えなかったけど。


「これならば、僕の小屋にも欲しいね。僕の小屋ならば室内に繋投げる形で造れそうだね。いちいち外に出るのは面倒だからね」

「それなら、今日から俺達が作業に取り掛かりますぜ」

「そうか、親方、礼を言うよ」

「ウィルダ嬢の頼みだからな」


そういえば、親方はウィルダさんをウィルダ嬢っていうのはなんでだろう。

理由を聞いてみたら


「そりゃ、エルフの長の娘だぞ、呼び捨てに出来んだろ」


って言ったが、そうなの?


「ああ、僕の父はエルフの種族長だ。だから受け入れハーフエルフでもエルフ受け入れられているんだ」


まさか、父親は種族長だったとは意外だな。

でも、そのおかげで受け入れられているけど、種族長ってすごいんだな。


「この辺りでは皆この事を知ってるが、姉も僕も父親と関係なく努力したのもあるからね」

「そうでしたか」

「ところで、博司様、念願のトイレが出来たなら、そろそろ行きましょうよ」


確かにトイレが出来たから、出発しないとならいが、せっかく出来たのに1回しか使えなかったのは残念だが、仕方がない。


「それじゃ、宿に戻って馬車を手配して先に進むか」

「わかったのです、ただ、グレイもやっぱりトイレを使うのです」


グレイもトレイを使ってみたが、やっぱり感動していた。


 親方達にお礼を言って、宿に戻り馬車の手配をしてもらった。

馬車は何時でも出れるように準備をしてたので、思ったより早く着いた。

馬車に乗り込むと、ウィルダさんと親方達に見送られる。


「ヒロシ君とは3日ほどしか一緒にいなかったのに、とても面白い事を知れてよかったよ」

「俺もウィルダさんが居たから、トイレができてよかったです、ありがとうございます」

「僕もお礼をいうよ。それでは僕の姉にもよろしく言っておいてくれたため。では、武運を祈ってるよ」

「それでは、ウィルダさんも肥料作り頑張ってください」

「ああ、僕もがんばるよ」

「ヒロシ、魔王倒しくれよ、いい知らせをまってるぞ」

「わかりました、親方。では、皆さん行ってきます」


ウィルダさんと親方は俺達の馬車が見えなくなるまで、いつまでも見送った送ったのであった。

そして俺達は宿場町を出て次の街へ進むのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る