第5話 好きじゃなかったら同居する必要ないよね?

 幼馴染の優々がダンボールの中に入り送られてきて、3日が経った。

 最初どうなるものかと思っていたが、案外良い生活を送っている。

 まだダンボールを壁側においている俺とは違い、優々の届いたダンボールはもうこの家にない。

 

 良い生活を送っている、と言ったがもちろん優々が当番の日の食事を除いてだ。優々が作った料理を食べると、大体記憶が飛んでて気づいたときには食べ終わってる。

 

 まぁそんなこんなで同居しているのだが。

 俺は今。リビングで時計とにらめっこしている。

 画面に映ってるのは俺の親の連絡先。

 親に優々のことを聞きたかったが、忙しくて中々時間が作れなかったらしく。

 粘着し続けた結果。

 1分後の10時から少し電話できるらしいのだ。

 

「よし」

 

 プルル……プルル……。


 10時ピッタリに電話をかけると、すぐ繋がった。


『もう越えたか?』


「……え?」


 意味の分からない父親の第一声に固まってしまった。


『はははっ。ジョークに決まってるじゃないか。久しぶりの親子の会話だというのに、そんな固くなるなよ』


「越えたってそういう……」


 久しぶりなのに息子に向かっていきなり下ネタかよ!


『まぁまぁ。この電話はそんなこと言うためのものじゃないだろう? お父さん、スタンプ連打とか『電話』『電話』『電話』って連投されたりして、ちょっと悲しい』


「優々のことについて聞きたいんだけど」


『おっ』


 さっそく本題に入ると、電話越しだったがお父さんの顔がニヤついたとわかった。


「どういうことなの?」


『いいか? お父さんは何も悪くないんだ。たしかに一人暮らしをするつもりの理央がいる家にサプライズと称して柏原さんを送ったが、決して悪くない。これは柏原さんが強く望んだことなんだよ』


 強く望んだこと、か。

 たしかにここ数日一緒に過ごしてきて、優々は心の底からこの生活を楽しんでるなとは思った。 


『ん? というか、こういうことお父さんに聞くんじゃなくて直接本人に聞けばいいんじゃないか?』


「……気まずいじゃん」


『なーにを今更。よく二人でお風呂に入ってただろ』


「いやそれは小学生低学年のときだから!」


『くぅ〜。青春だわぁ〜』


 昔のことなのになにが青春なんだか。

 俺はそう思いながら、からかわれ続けると思っていたが。

 電話の先からお父さんのことを呼ぶ人の声が聞こえ、強制的に終わった。


「はぁ」


 たしかにお父さんの言う通り、こういうことは本人に聞くのが一番手っ取り早いんだろうなぁ……。


「どうしたの?」


 ぼぉーっと考えている中、突然目の前に優々が現れ。心臓が止まりそうになった。


「もしかして聞いてた?」


「ん? なんのこと? 私、さっきまで料理がうまくなる秘訣っていう動画見てたんだけど」


 うじうじ考えていても仕方ないし。

 ええい。もうどうにでもなれ!


「優々ってさ。ぶっちゃけなんで俺が一人暮らしするって言って、一緒に住もうと思ったの? あっ、これ純粋な疑問だから。深い意味とかないよ」


「なんでって、そんなの理央くんが遠くに行くからに決まってるじゃん」


「…………」


 優自信満々に言ってくるから、なんか照れるな。


「と、遠くに行くって言っても時間を作ればいつでも会える距離にいる気がするんだけど……」


「はぁ」


 優々は呆れるようにため息を吐き。

 ぷいっと顔を背け。


「好きじゃなかったら同居する必要ないよね?」

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