第6話 一夜の出来事 ◆優々視点◆

 ◆優々視点◆


 昼過ぎ、理央くんがなんで一緒に住もうと思ったのか聞いてきて。

 つい勢いで「好きじゃなかったら同居する必要ないよね?」って、言っちゃったことを少し後悔してる。

 

 今日はあれから、理央くんとちょっと距離ができちゃってた。

 1ミリ単位の、気にしないとわからない心の距離だけど、一緒にいるって言った矢先離れるのは嫌だ。なにより嫌われたくない。


 そんな思いで私は今。

 夜中の1時を過ぎているが。

 眠気を振り払い、理央くんの部屋の扉をノックした。


 コンコン。


「まだ起きてる?」


「………………」


 反応は返ってこない。

 流石にそろそろ高校の入学式があるから、こんな時間起きてないのかな……。


「……どうしたの」


 諦めかけていたが、扉の先から声が聞こえてきた。


「あの。えっと、ちょっと話したいことがあって。部屋、入ってもいいかな?」


「おー。いいよ」


 夜中に話したいことがあるって言ったのに、随分軽い声が返ってきた。


 むぅ。ちょっとは私のこと、幼馴染じゃなくて異性として見てくれたっていいのに。

 

 私は少し不貞腐れながら扉を開けたが。

 体中を舐め回すような視線を感じ恥ずかしくなった。


 部屋は真っ暗。

 カーテンの隙間から差し込む月明かりのおかげで、理央くんがベットに座りながら私のことを見てるってわかるけど……。


 理央くん、その視線バレてないと思ってるの!?

 

 い、異性として見てほしくはあるんだけど、ちょっと急すぎてビックリしちゃった。


「んんっ。ちょっと失礼して」


 私は何食わぬ顔で理央くんが座ってるベットに腰を下ろした。


「それで。こんな真夜中に話したいことってなに?」


「あーと。気にしてるのかわからないんだけど、今日の昼過ぎに私が言ったことについて補足を……」


「あれか」


 理央くんはポツリと呟き、私が座ってる位置から少し距離を取ってきた。


 すかさずその倍、距離を詰める。


「優々さん。ちょっと近くないですかね」


「私がこの家に来たとき言ったこと覚えてる?」


「?」


 なんで忘れちゃってるのぉ……。


「高校でも理央くんの元から離れないからって。あと、同じ家に住むからずっと一緒だよって」


「あぁ。そんなこと言ってたな」


「そ、ん、な、こ、と?」


「い、いやいや。忘れかけてて、思い出したんだよ今。決して悪い意味で言った言葉じゃないから!」


「へぇ〜」


 ちょっと圧をかけて迫るだけでこんな動揺するんだ。

 中学生時代の理央くんはちょっと素っ気なかったから、新鮮で面白い。


 私はその反応をニマニマ楽しんでいたが。

 なぜか視線が私の目じゃないところにいっていた。

 その視線の先にあるのは顔より少し下で……。


「きゃっ」


 わ、わ、わ、私寝る前だったから薄いキャミソールしか着てないじゃん!


「優々が言いたいことはなんとなくわかったから安心して」


「もう! 理央くんのスケベ!」


「いや俺からしたら優々が痴女なんだけど!?」


 私は慌てて理央くんの部屋から飛び出し、自分のベットに倒れ込んだ。

 

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!

 お風呂を使うときとか、お互い気を使ってすれ違わないようにしてたのに。

 よりにもよって、一番薄くて恥ずかしい姿を見られた! 舐め回すような視線で。

 

 最初はただ嫌われたくないだけだったのにぃ……。

 

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