第3話 可憐な宣言

「私この部屋にする」


 優々がいる部屋は俺の部屋予定の隣。

 大きな窓があり、開放的なのが特徴だ。

 ちなみにここより広い部屋は何個かある。


 まだ何も荷物を運んでないのにこんな偶然あるか?


「その反応……。親御さんの情報は正しかったんだ」


「情報?」


「うんっ。ここに来る前、ダンボールの中に入ってるときに教えてもらったんだぁ〜」


 えっへん、と豊満な胸を突き出して自慢気に言ってきた。


 そういえば俺の部屋にちょうどいいって、内見に来たとき親と話してたっけ。


「ここにベット置いてぇ〜。ここにテーブルでしょ〜」

  

 いま本気で優々のことを拒否すれば、二人で住むことはなくなるかもしれない。

 

 一人暮らしのはずが親の暴走で幼馴染が送られてきて。

 ダンボールから出てきたときは意味不明だったけど、別に嫌ってわけじゃないんだよな……。


 キラキラ目を輝かせ、部屋を見渡してるのを止めるのは……やめておこう。


「そういえば、優々って高校どこに行くの? 実家近くの偏差値高い高校受かってなかったっけ?」


「実は理央くんと同じ高校も受かってまぁ〜す」


 ……てことは、一人暮らしの件は前々から知ってたっけわけか。


「どっちみち別れの言葉はいらなかったのね」


「でも理央くんからしたら長い別れになるんだし、言ってくれると思ったんだけどなぁ〜。家で待ってたんだけどなぁ〜」


「すんません」


 素直に謝る俺をよそに、優々は窓から景色を眺め始めた。

 一言も喋らず、表情筋を上げることなくじっと見ている。普段見ることのない上からの景色から目を離せなくなるのは、まぁ仕方ない。


 今の優々、幼馴染ながら絵になってる。


 カシャッ。


 スマホでその姿を撮ると、ビクッと体を震わせた。


「理央くんってよく私のこと、盗撮してくるよね」


「い、いやこれはなんというか……。衝動?」

 

「もしかしてこれまで衝動に任せて盗撮してきた過去が……」


「ないから! 撮っちゃうのは優々だけだし」


「褒め言葉として受け取ろうかな」


 口元がほころんだ優々は今度はじっと俺のことを見つめ。


「……私、高校でも理央くんの元から離れないから」


「っ!」


 とろけた声に心臓が飛び上がった。


 何なんだこの可憐な美少女は。

 俺が知ってる優々とは大違いだ。


「へへっ。同じ家に住むからずっと一緒だよ」


 なんで優々はそんなにも楽しそうなんだよ……。


 俺のことをからかってるんなら、それでいいんだけどさ。


 言い方が。空気が。顔が。

 すべてを加味すると、幼馴染である俺にはこれが本音だとわかる。


 最初は面白半分で同居するつもりだと思ってたけど。

 優々が考えてることよくわからないなぁ……。

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