第2話 謎のダンボール

「ありやとーございやしたぁー」


 配達員が俺の身長くらいある大きなダンボールを置き、いなくなった。


「なんだよこれ」

  

 思わず空いた口が塞がらなくなってる。


 完全に見に覚えのない荷物。

 配達員に「ここが本当に配達先なの?」と何度も聞いたので、俺宛てなのは間違いないとわかってるけど。

 ここまでの大きさで、配達で送られるものってなんなんだよ。想像もつかない。


 あっそういえばどこから来たものなんだ?


「……ない」


 表記がないのではなく、ダンボールにくっついてるはずのシールがどこにもない。

  

 こんなことってあるものなのか?

 一切情報がなくて謎のダンボールすぎる。


 開けたら中に何があるのか分かるだろうけど、配達員さんが結構気張って運んでたから怖い。

 

「いや。開けないと」


 俺は謎のダンボールと距離を取ってカーテンの後ろに隠れていたが、覚悟を決めカッターを手にした。


 そのまま流れるようにカッターの刃を出し、たが。

 

 カチカチカチ。


 カッターの刃を出した音が鳴った瞬間。


 ダンボールがまるで逃げるかのように少し後ずさったように見えた。


「…………」

 

 試しにもう一度音を鳴らす。

 

 カチカチカチ。


 見間違えと疑うほど少しだけ動いてる。

 

 ……いろんな可能性を鑑みて、絶対開けずに親を呼んでこの配達物を確認してもらったほうがいい。


 けど、すでに覚悟を決めた俺にはそんな選択肢なかった。


 一応中にあるものを気にして、カッターの刃の先だけでダンボールのテープを切り。


 すべてを切り終え、ゆっくりとダンボールの扉が開いた先にあったのは……。

 

「サプラァ〜イズ」


 同じくらいの身長。

 モデルのようなきれいな体で、金髪碧眼。


「なんでいるの」


 別れの言葉を言わず別れたはずの優々が、俺の言葉を聞き不思議そうな顔をしながらそこにいた。


 密閉されてたせいで暑かったのか、額に汗をにじませている。


「なんでって、そんなこと言わないでよね。……何も言わずいなくなったくせに」


 それ言われたら俺が悪いし何も言えねぇ……。


「ということは、もうなしにして」


 静かに歯を食いしばっていると、優々はぱぁあああっと明るい笑顔を向けてきた。


 誰からも好かれるのは、この笑顔の虜になってるからだ。

 

「一応、私の荷物は明日以降に届くことになってるから今日は一緒に寝てもいい?」


「…………ん?」


 笑顔のせいで脳が停止寸前だったけど、何言ってるんだ?


「荷物が明日以降に届くって?」


「そんなのもちろん、私の部屋に必要な荷物に決まってるじゃん。あれ? もしかして今日だと思って待っててくれたの?」


 私の部、屋。


「ちなみにその手筈をしたのは?」


理央りおくんの親御さん」


 優々の言葉に嘘を感じない。


 俺の親ならこういうことしてきそう。

 多分、一人暮らしが不安だったから優々に住んでもらおうかと思ったんだろうけど。


 一応は幼馴染でも、俺たちは思春期の男女。

 果たしてこれで……いいのか?


「今日からよろしくね。理央くんっ」


 どうすりゃいたんだぁあああああ!!

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