一人暮らしを始めたはずなのに幼馴染が送られてきた。独占欲が強くて困ってます

でずな

第1話 一人暮らしの始まり

 俺の親は会社を5つ経営していて、結構お金持ちだ。

 だが、それ相応に忙しくなってしまう。

 俺が小学生と中学生の時、学校行事で一度も顔を見たことがない。


 そのため近所に住む異性の幼馴染、柏原かいばら優々ゆゆのご家族によくお世話になっていた。一緒に夜ご飯を食べさせてもらったり、泊まっていったり。お世話になった数は数えきれない。


 が、そんなご家族と幼馴染とは高校生になったらもう会うことがない。


 理由は俺が仕事で疲れてる親を気遣うという建前で、念願の一人暮らしを始めるからだ。


「ふぅ」


 実はもう一人暮らしをする家にいる。


 窓から見る景色は絶景。車が豆粒のように見える。 

 住んでいる場所は、この街で一番高いマンションの最上階。

 俺は一人暮らしにちょうどいいアパートを提示したけど、なぜかここになってしまった。

 ちなみにこの家は部屋がたくさんあり、とてもじゃないが一人暮らし用ではない。


「そろそろやらないとな……」


 振り返ると、そこにあるのは山積みになってるダンボール。

 

 中にあるのは、一人暮らし用にネットで買ってもらった家具たち。

 もう全部運び込まれてから20分くらい放置してる。

 

 1から組み立てるのがまじで面倒くせぇんだ……。


 こういうとき優々がいてくれれば面倒くさく感じないのになぁ〜。


 まさかここにきてご家族じゃなくて優々の大切さを感じるとは。


 そういえば最後の別れってどんなこと言ったっけ?


「………………」


 おかしい。どれだけ記憶を遡っても、優々と一緒にいたのは中学の卒業式しかない。

 

「あれ?」


 俺って優々に別れの言葉、言ってなくね?


「まずいまずいまずいまずい」


 優々は誰にでも好かれて人ウケがいい女性。

 名前通り優しくて、人前じゃ怒らない。……が、それは俺以外の人限定だ。

 

 今度会ったら絶対こっぴどく怒られる。

 けど、今度会う予定はない。多分会うのは、怒るのを忘れた頃にたまたま実家の近くで出会うくらいだろう。


 毎日のように会ってた幼馴染に別れの言葉なしで、もう会う予定がないって、なんか寂しいな……。


「今から言うか」


 会う予定がなくとも、連絡先は交換してるので口で説明することくらいできる。

 

 プルルル……プルルル……。


 しばらく電話をしてるけど。中々出てくれない。   

 優々が電話に出ないなんて、今まで一度もなかった。


「めちゃくちゃ怒ってるんだ……」


 怖い。怖すぎる。

 電話で別れの言葉を言われるのは嫌だってことだよな。

 そろそろ高校の入学式があるし、それが終わったら一旦帰ろ……。

 

 そんなことを思いながら、ダンボールの中の物を取り出そうとしたとき。


 ピーンポーン。

 

『シロクロヤマトでぇーす』 


 おかしい。

 もう引っ越し用の荷物は全部届いたはずなのに。


 インターホンには大きな段ボールと配達員が映っていた。





【あとがき】

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