野良猫は雨に寝覚める

綿引つぐみ

野良猫は雨に寝覚める


一昨日あたり気づいたけれど「私」って存在しない雨に寝覚める


(ひかりさえあれば水面も飛ぶ鳥を)びしょぬれの指(つかもうとした)


通学の小学生の幾人か影法師のなかの夜に沈んだ


ヘッドライトが生きてるものを影にする影増えろ(わら)もっともっと(わらわら)


還暦の男がいうに十八のこころが続くんだって死ぬまで


死を目指す時のあわいの蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ


推しの子を観るたび泣いた六月のあざとくて紫陽花がきれいだ


傾く。の語意のかなしい午後だった@onefiveワンファイブが売れるのを待ってた


どこまでも廃屋の庭完熟のまくわうりってとってもあまい


ふるいふるい床の板張りくろいくろいはだしで歩いている余所の家


それってさ体のことでこころには性別なんて「つぐみが好きだ」


ともだちがあたまわるくてまぶしいぞどうなんだ生きてゆくのか夏を


おたがいを抱きしめ合って揺さぶってだんだんダンスを知る夏の腕


十四までにたがいのはだかをみたひととしか家族にはなれないんだよ


かぜを見にゆくは海まで鳥になり浪になり乱暴にされたい


ふりしきる どのこころにも満ちゆきて器をつなぐおそろしいもの


還暦の男がいうに正しさはどこにもないって猫を飼えって


おとこおんな人のかたちを指す言葉かたつむりの右巻き左巻き


せいべつもねんれいもないこころして野良猫が池の鯉を殺すよ


ひとのへる場所に住んでる安心に熱帯夜のたべたい、をなだめる


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