第21話 決戦!(2)

 敵側も、巨大ロボットドラグヌフを見て、対話を望んでいたのだろう。

 追跡の手を止め、こちらの様子を窺っていた。




「ドラグヌフ、敵の『巨竜機人アスタロイド』との回線繋げ」

「通信接続コネクト



「――ザザ………ザっ……。こちら、ウァーン共和国宇宙軍所属、検問船『スタースワン4029』配属、ヴェルス中尉とヴェルト少尉だ。なんだ、その弱そうな機体は。『オリジナル』か?」

「ごきげんよう。こちら『巨竜機人アスタロイドの新型』ですわ。アィーヒ帝国民、無所属のアリエス・グリムス・エルアルスペイドです」


 巨大ロボットドラグヌフは『巨竜機人アスタロイド』ではないが、誤情報を渡すアリエス。



「これはこれは、エルアルスペイド伯爵令嬢、先ほど振りだ」

「見たこと無い機種だな。趣味が悪いデザインだ」

「金が掛かってなさそう」

「弱そうだ」

「どこに隠していた?」



 あたかもひとりの人物かの様に、交互に話す双子の男エルフ。

 これで操者パイロットが誰なのか、お互いに認識できた事になる。



「見た目は悪いですが、そちらの『旧型』より間違いなく強いです。『1人乗り丶丶丶丶の最新型』ですわよ」


 露骨にこちら側が優位だとアピールするアリエス。



「双方に『巨竜機人アスタロイド』が揃った今、戦えばお互いにタダでは済まない可能性が高いです。戦わずに退いていただけますか?」


「悪いが、貴女を捕らえるのが主目的なんだ。引くわけにはいかない」

「操縦はアリエス嬢が行うのか? まだ、『候補生』だろう? 戦えば、そちらこそ無傷では済まぬぞ。美しい顔に傷をつけてはもったいない」


 検問船の目的は、やはりアリエスにあったようだ。



「余計なご心配ですわ。こちらこそ、勝ち戦と分かっているのに、ここで引くわけにはいきません。無傷で勝利してみせます」


 あえて、挑発的なセリフで煽る。



「ふん、どうなっても知らんぞ」

新人ルーキー未満が」

「泣いて、許しをうがいい」

「口の利き方をその身に教えてやる」



「という事は、戦って決着をつけるのですね。いいでしょう」




「私が目的であれば、この戦いに私が負ければ、私とお付きの2名とこの機体だけで見逃してくださいますか? 私が勝てばそちらの母船は見逃します」

「……いいだろう」


 アリエスは、守られない可能性が高いと知りつつも、お互いの母船を見逃す約束を取り付ける。



「では1対1の決闘でいいですわね。お互いの母船は手を出さない。決着はどちらかが戦闘不能になるか降参するまで。……というところですか? 開戦の合図は?」

「条件は其れで良い。開戦の合図は、こちらが光球魔法を打つ。光球がはじけたら開戦としよう。開始距離は200」

「それで良いですわ」


 決闘方法は決まった。

 後は、決闘を行なうだけだ。

 敵との通信を切るアリエス。



「……という訳ですが、クロマグロ号はいつでも逃げられるように、出来るだけ気付かれずに距離を取っておいていただけますか? ヒルダ船長」


「了解だ、お姫さん。……少々煽りすぎな気がしたが、健闘を祈っているぜ」

「祈ってるっす」

「にゃにゃ……」

「お嬢様、ご武運を。我らは下船の身支度みじたくだけはしておきます」

「お嬢、戦いは気迫が肝心ですぞ!」


「皆さん、ありがとう。私の主武器は剣なので、万が一私が負けた場合、剣から手を離すか収めるかします。私の丶丶持ってる丶丶丶丶に注目していてくださいね」

「分かった」



 決闘の場から離れていくクロマグロ号と検問船を見送る。



 ――数秒後、敵巨竜機人アスタロイドから、開戦合図の光球が上がる。

 その様が、誰も想像もしていなかった効果をもたらす。

 この光球が、アリエスの注意力を完全に奪ってしまったのだ。






「ドウシタ我ガ主マイマスター? アレハ開戦ノ合図デハナイノカ?」


「――はっ!?」


 こんな時にアリエスは、『まるで、前世に見た打ち上げ花火だなぁ』と、魅入ってしまっていた。


 アリエスの弁護をすると、この光球魔法の術式には日本出身丶丶丶丶又は前世丶丶日本人丶丶丶限定丶丶魅了丶丶効果丶丶が、過去の勇者により密かに込められていた。





 我に返ったアリエスの目前に敵が放った先制の魔矢マジックミサイルが迫る――――――






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