第18話 発進!

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 Tutorial チュートリアル modeモード

 ドラグヌフの炎のブートキャンプ 9 Days

 Missionミッション『宇宙超帝国の神王子を救え!』

 YOUお前 HAVE COMPLETEDやり遂げ IT!!

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 目の前に表示された作戦ミッション達成クリアのメッセージ。

 鳴り響くファンファーレ。

 達成感に包まれながら、アリエスの『初回講習チュートリアルモード』は終了した。

 その表情はどこか自信に満ち溢れた、何かを成し遂げた雰囲気を漂わせている。



 巨大ロボットドラグヌフが用意した初回講習チュートリアルモードの内容は、別の仮想現実V R世界に没入ダイブし、9日間のチュートリアル――仮想ゲーム空間で特訓を受け、仮の実戦を経験するというものだった。

 現実世界の10分が9日間に引き伸ばされた仮想現実V Rの世界で、前半の5日間は操縦方法などを教官から教えてもらい、後半の4日間は敵に拐われた神王子を救出するという内容で、アリエスとしてはとても充実した訓練となった。


 因みに、この時点で、現実の世界ではまだ9分しか経っていないという。



 初回講習チュートリアルモードから現実世界モードに移行していくのを感じながら、心地良い気だるさと達成感を感じているアリエス。



(――ダイズ神王子、お約束通り、お救いできましたわ……)



 コックピットで頬を上気させ、白色のシルクの下着でいるアリエスはとても神々しいお姿であった。

 胸に、お腹に、おへそにと、全身に汗の粒が張り付いているのは果たして巨大ロボットドラグヌフが趣味で演算したものだったろうか――。






 "かつて神が王と為り、竜を使役していた時代があった。

 そして、その時代に、全宇宙をべた帝國が存在した。

 その帝國の名を『宇宙神帝國アスタ』という――――"




 アリエスは『ドラグヌフのブートキャンプ』を通じて、かつてこの宇宙に超古代文明が存在した事、そして巨大ロボットドラグヌフは超古代文明が神の言葉と竜の血を用い産み出した、宇宙最強兵器『竜血人形』の一体であった歴史を学んだ。


『竜血人形ドラグヌフ』――が、巨大ロボットドラグヌフの真の名称になる。



 そして、巨大ロボットドラグヌフの話によると永らく繁栄を誇った『宇宙神帝國アスタ』であったが、ある時、ドラグヌフ一体を置いてこの宇宙を去ってしまったという……。



 初回講習チュートリアルを通して、巨大ロボットドラグヌフが『人工知能A I』ではなく、本物の意思・魂を持つ『半機械生命体』という事まで理解したアリエス。



(――常識では考えられない、神代の遺物アーティファクトという事かしら……?)



 今回は『初回講習チュートリアル』という事で、1人プレイだったが、巨大ロボットドラグヌフによると複数人数でプレイ出来る『マルチプレイモード』もあるとの事。

 何でも、別の宇宙や別の時間軸に旅立ってしまった同胞たちとも時空を越えて協力プレイや対戦プレイが出来るらしい。



(えっ、それって、憧れの『VRMMO(仮想現実多人数同時参加型オンラインゲーム)』じゃないですの? 前世では開発される前に死んじゃいましたから、是非やってみたいですわ……)





「モウスグ現実ニ戻ルガ、直グニ仲間ノ救出ニ向カウカ。現実世界ノ時間デ残リ5分」

「もちのロンですわ。『戦闘ブーストモード×3』で、ちゃっちゃと片付けますわよ」

「『戦闘ブーストモード×3』ハ、2分シカモタナイガ良イノカ?」


(カップラーメンも作れないし、ウルト〇マンより短いのですのね……)


 一瞬だけ考え込むアリエス。



「2分、で、無問題モウマンタイですわ。『トラリス戦役の王神子救出ミッション』は1分でしたもの。それに比べれば2倍も余裕がありますわ」


『トラリス戦役の王神子救出ミッション』とは、ブートキャンプの『8'th day』中に起こった、要人救出イベントのひとつである。



「武器ハ、ドウスル」

「ドラグヌフ、貴方の殆どの武器は、三国ウイア協定の大量破壊兵器及び殺戮兵器禁止条約で使用が禁止されていますわ。今回は『次元抜刀術』×『恒星剣ジュリオール』で行きます」



 アリエスは現実世界に戻った時に使える武器を主武器メインウェポンとして初回講習チュートリアルモードに挑んだ為、かなり難易度がハードになってしまったが、それら全てがアリエスの自信となっているようだ。


 また、アリエス独自オリジナルの剣技『アリエス流、次元抜刀術』も生み出していた。



「デハ、『現実リアルモード』ニ戻リ次第、『戦闘ブーストモード×3』ニ移行スル。発進ノ許可ハ管制AIニ我ガ申請シテオクノデ、発進ノ合図ダケ我ガ主マイマスターニオ願イスル」

「承知です」



 没入ダイブした深い意識の海の底から浮き上がってくる感覚と共に、周りに映し出される映像が、ゆっくりと、真っ暗闇から懐かしの小惑星のドックへと移り変わっていく……。


 そこは、すでに発射台カタパルトであった。

 目の前に広がるのは、漆黒の宇宙と、数えきれないほどの星々。そして、無数の小惑星。




操者パイロット『アリエス』、発進できますか?」


 コックピットに柔らかな女性の音声――ドックの管制AIの音声が響いた。





操者パイロット『アリエス』と『竜血人形ドラグヌフ』、発進します!」






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